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サバイバル  作者: 伊右衛門


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移住編5

○村から離れた基地にやって来て、1週間が経った。

オレの傷の回復は順調でそろそろ移動に耐えられそうだ。

しかし、そうなるとここに住むのか村に戻るのかを決めないといけない。


「んで、結局どっちになりそうなの?」

オレは子供と遊びながら、優子さんに聞いてみる。

「今後の事を考えると、こっちに移住した方がいいんじゃないかって意見が多いみたいよ」

まぁ、こっちの方が人口が多いしね。そう考えるのは無理もないだろう。

「真人はどっちがいいと思うの?」


ん~、オレはこれまで療養の為、部屋に軟禁状態だったから、ここら辺の事に詳しくないんだよね。

こっそり部屋を抜け出そうと思ったりもしたんだけど、オレが撃たれた後の優子さんの様子を聞くとそれも出来なかった。

なんでも、オレが撃たれた時の優子さんはかなり危うい状態になってしまったらしい。

オレの傷の処置後もずっとオレに付き添って食事もせず眠りもしなかったらしい。

看病してくれるのはありがたいけど、優子さんまで倒れられたら困るなぁ。

マスターたちもそう言って説得したけど、優子さんはオレの看病を自分以外にさせるつもりは無かったようだ。

オレの意識の回復が遅かったら、優子さんまで倒れていたかもしれない。

これまで以上に気をつけよう。


「ここいらの集落って何人ぐらいいるの?」

「一番大きな集落で200人ぐらいであとは50人から100人ぐらいの集落が4つあるんだって」

おおよそ、500人ぐらいかな?

今までの事を考えたらすごい人数だ。

まぁ、基地周辺にはそこそこ大きな街が点在してたからそこの生存者が集まったと考えれば少ないぐらいか。


「食料や水はどうしてるの?」

それがある意味、一番大事だ。

いくら人数が増えても飢えるんじゃ意味が無い。

「持ち寄った食べ物もあるけど、私たちと同じように畑を作って作物を育ててるよ。水も近くにいくつか川があるから大丈夫みたい」

う~ん、とりあえず飢える心配は無いみたいだな。

そうなると村のお姉さんたちの事とかを考えると移住した方がいいのかな?


「マスターたちはなんて言ってるの?」

「いきなり人数が増えてトラブルが起こらないか心配してる」

人は群れる動物だが同時に同族で最も争う生き物でもあるからなぁ。

人が増えれば争いもあるだろう。


それにオレが心配してるのはオレたちの立ち位置というか立場的なものだ。

別に周辺を支配して権力を手にしようなんて面倒くさい事は考えてないけど、周辺の人たちがオレたちを便利な勇者や英雄として考えているなら問題だ。

オレたちが山賊を倒したのは、あくまでマスターとさとるさんを救出する為で集落の為では無い。

ほとんど一直線に来たオレたちは集落の事なんて知らなかったしね。


周辺の集落がオレたちに救われたと考えているなら、それは大きな間違いだ。

オレたちは正義の味方ではない。

どちらかと言えば目的や仲間の為には手段を選ぶつもりはない。

弱者を救いなにも要求せずに立ち去るなんて事は他の人にお願いする。

オレは仲間以外の為に体を張ろうとは思わないし、優子さん以外の為に命を使うのもごめん被る。

それが周辺の集落の人たちに伝わっているのだろうか?


それが伝わってないと悪い結果しか想像出来ないんだよね。

なにかトラブルが起きる。オレたちに解決を頼む。それを断る。

そうするとオレたちが敵として追われるなんて事になったりしないだろうか?

頼みを聞いてくれれば喜ぶなら、それを断れば恨むのが人だろう。

その辺、大丈夫かな?


オレの考えを聞いた優子さんは難しい顔になってしまった。

ごめんね。

でも、周辺の人口が500人と知ると疑問があるんだ。

ここにいた山賊は30名ちょっと、多く見積もっても50人を越える事は無いだろう。

山賊たちが武装していたのは分かる。

でも、周辺の人口の10分の1以下の人数だ。

拐われた女性たちをどうして助けなかったんだろう?


もし優子さんが拐われたら、オレは何があっても助け出す。

そこに無理とか無茶って言葉は無い。

ただ助けるだけだ。

そうしないとオレが堪えられない。

まぁ、拐われたのがただの隣人だったなら仕方ないのかもしれないけどね。


オレの考えを聞いた優子さんはマスターたちを呼びに行った。


やって来たマスターたちにオレの不安を伝える。

みんな難しい顔になってしまった。

ここに移住するのがイヤって訳じゃないんだけどね。


「実はそれに近い事を言う人もいるんです」

さとるさんが説明してくれる。

ある集落の代表は定期的に食料を納めるので自分たちを守ってほしいと言ってきたそうだ。

ありゃ~、ちょっとヤバイ考えだな。


「もちろんお断りしました。手伝える事なら手伝いますが我々も自分の生活がありますので」

そうだよね。オレたちにも生活がある。

畑を耕したり獣を狩ったりして、優子さんとイチャイチャしないといけない。

オレなんて、優子さんとイチャイチャする為にがんばってるのに・・・

オレの頭をはたきながらマスターが話し始めた。

心の声が聞こえたか。


「あたしたち、全員が武装してたからちょっと勘違いしちゃった人がいるのよ」

確かにオレたちは全員が弓やナイフ、斧やナタを持っている。

美咲ちゃんはもちろん、子供までナイフを持ってるもんなぁ。

「だからあたしたちを戦える人って考えちゃったみたいなの」

いや、戦えるけど、それは山暮らしでゴブリンとかを退治する為に必要だからだよ。

「それがあのリーダーの狙いだったんです」

ん?あの金髪か。


さとるさんの説明によると、あの金髪は集落をゴブリンなどから守る代わりに食料や女性を要求していた。

そして要求を拒む者は見せしめに殺したりしていたそうだ。

結果、集落の人たちは生きる為に金髪に従っていた。

生きる為に仕方ない事だと考えさせたのだ。

う~ん、気にいらないが巧い手段のような感じがする。

抵抗する者を殺して、それを見せつけられれば抵抗するのはかなり難しいだろう。

なるほど、それで逆らえなくなってたのか。

集落の人たちも苦渋の決断だったのだろう。


でも、難しい立場になってしまいそうな予感はするなぁ。

移住して大丈夫かな?

これからの事や村のお姉さんたちの事を考えると移住した方がいいのは分かってるんだけど、不安だ。


難しい顔で腕組みしていた大先生が口を開く。でかい牙だなぁ。

「ここは考え方を変える必要がありそうじゃな」

ん?考え方?

どっちの?オレたち?集落の人たち?

「どういう事ですか?大先生」

代表して田中さんが質問する。

こういう時、田中さんが一番公平な立場の感じがするんだよね。

本人もそれを分かって質問してくれたのだろう。


「双方とも考え方を変えるんじゃ」

頷いて大先生が説明してくれる。


たとえば、ゴブリンなどが出た場合、オレたちが退治するんじゃなく集落の人たちに退治の仕方を教える。

もちろん、トロールなどの強敵はみんなで協力して倒すし、最初はオレたちが見本として退治してもいいだろう。

しかし、あくまで自分の集落は自分たちで守ってもらう。

オレたちが協力するのは自分たちだけで手に負えない時だけだ。

オレたちが協力する時はちゃんと報酬を要求する。

もちろん、女性じゃなく食料などだよ。正直、女性は余ってるぐらいだもんね。

報酬は、ちょっと高額にぼったくる。

みんなの食料、1ヶ月分とか。

そうすれば簡単にこちらに頼らないだろうし、自分たちを自分たちで守る意識も取り戻してくれるだろう。

そして、基本的に報酬を支払わない集落は見捨てる。

見捨てるってのは、ちょっと語弊がありそうだけど、こちらから積極的に助ける事はしない。

そうしないときちんと報酬を払ってくれる集落がバカを見る事になってしまうからね。


「まぁ儂らは武力を商品として売る訳じゃ」

ふむ、なるほど。

「つまり傭兵みたいなもんですかな」

これって傭兵っていうよりは・・・

「冒険者みたいです」

美咲ちゃんの言葉に若い世代はうなずく。

そうだよね。

これってファンタジーに付き物の冒険者のシステムに似てるよね。

美咲ちゃんが年長組に冒険者の事を熱心に説明している。


「なるほど。正しく儂らは冒険者って事じゃ」

大先生は笑顔で美咲ちゃんの頭を撫でている。

大先生、ちゃんと分かったのかな?

隣の田中さんは傭兵と冒険者の違いが分からなくて、混乱してるけど。

まぁ、基本的には同じような仕事だから、ニュアンスというか気分的な問題なんだけどね。


「じゃあ、ここは冒険者ギルドって事になるのかしら?」

そうだなぁ。

冒険者ギルドにお約束の宿屋は宿舎があるし、酒場もマスターが要れば出来そうだ。

お酒なんて持ってないけどね。

でも、えらく女戦士が多いギルドになるな。

メンバー、ほとんど女戦士ばっかだぞ。

魔法使いが一人もいないいびつなギルドになりそうだ。


オレたちの基本方針は決まった。

問題は周辺の集落がこれを受け入れてくれるかどうかだ。

受け入れてくれれば移住するし、無理なら村に戻ればいいや。

あとは気楽に待つとしましょう。





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