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サバイバル  作者: 伊右衛門


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閑話2

☆今日で真人くんたちが探索に出て2週間になる。


今回の探索の結果は今後の僕たちの未来に大きな影響をもたらすだろう。


僕は生存者が僕たち以外にいることは確実だと考えている。

しかし、その生存者が安全かどうかは分からない。


真人くんはもちろん、北村さんも冷静に行動するだろうから、無事に帰ってきてくれると思うのだが不安は消えない。

今回の行き先は僕が選んだ島だ。

熟慮を重ね条件に合う島を選んだつもりだ。

だが、それは生存者と接触する可能性が高いということになる。

生存者との接触は危険性を高める行為でもある。

島は安全な環境である。

だからこそ、二人を異物として排除するかもしれない。


寝付けないので、食堂に行くことにした。

この肉体に変異して驚いたが、良かったことも多い。

まず、肉体的に強化されている。

単純に筋力が上がっているだけでなく、反応速度も向上したようだ。

全身を覆う鱗は光を柔らかに反射して美しい。

それに鱗はかなり強固な素材で出来ている。

自分で試しにナイフで傷つけてみたが、かなりの力が必要だった。

この危険な時代に適した肉体といっていいと思っている。

唯一の不満はせっかく生えた尾をコントロール上手く出来ないことだ。

バランサーとして機能しているようで自分では動かせない。

かなりフレキシブルに動くので邪魔にはならないが・・・


食堂に灯りがついている。

中にはマスターことエリザベス、剛田 健がいた。

彼も眠れないのだろうか?


「あら、いらっしゃい」

食堂に入った僕を彼が歓迎してくれる。

一人で退屈だったのだろう。

「君も眠れないのかい?」

そういえば、彼が眠っているのを見たことが無いな。

まぁ、元々夜型の人間なので生活のリズムが違うのだが。

「真人ちゃんたちが居なくなって、忙しくなるかと思ったら、案外村の子たちが頑張ってくれてね」

真人くんと彼が助けた14人の女性たちは、ここから、近くの改造された民家に住んでいる。

真人くんたちは、いつからかそこのことを村と呼び始めた。

村と呼ぶには、いささか小規模だが、


彼女たちを最初に助けようとしたのは真人くんだった。

僕がその場にいたらどうなっただろう?

もしかしたら、今後のことを不安に考え見捨てたかもしれない。

「どうしたの?難しい顔して?」

彼が僕に水割りを作ってくれる。

「真人くんはどうして彼女たちを助けようとしたのかと思ってね」

「かわいそうだったからでしょ」

そんなに単純な理由なのだろうか?

真人くんは僕から見ても頭の回転の早い人間だ。

その彼がそれだけで動くのだろうか?

なにか僕には分からない意図があったのではないだろうか?

例えば今後の発展を考えたとか、

「さとるちゃん、本当に真人ちゃんはかわいそうだから助けただけよ」

僕の思考の渦を彼が笑いながら止めた。


かわいそうだから助けた。

なるほど。

それだけなのか。

時折、真人くんは非常にシンプルな思考をする。

がんばった人は幸せになるべき。

好きな人を大事にする。

などの極当たり前の思考だ。

このような時代にそれを実行するのは難しい。

しかし、真人くんはそれをしている。

本人としては普通の行動なのだろうが、世界が変わった現在では稀有な存在だろう。


真人くんと出会ったことは、僕の人生に変異以上の変化をもたらすのかもしれない。


変異した僕と祖父はかなりのショックを受けた。

自分の肉体がこのような変異をすれば、当然だろう。

今後は人から怖れられ追われるかもしれない。

人は自分と異質なものを排除する本能がある。

それは自分を守るためなのだろう。

それなら、ここまで変異した僕たちは排除されるのが当然だろう。

そう思っていた。


だから、たまたま変異に立ち会った彼以外とは接触せずにこの屋敷にこもっていた。

そこに真人くんたちが現れた。

北村さんは以前からの知人だったが、真人くんと美咲ちゃんとは初対面だ。

正直、恐れられると覚悟して対面した。

しかし、彼らの反応は予想外だった。

真人くんは驚いてはいたが、怖れてはいなかった。

美咲ちゃんにいたっては好意すら抱いてくれた。

まぁ、美咲ちゃんの反応が異質なのは理解しているが・・・


以前の僕を知らないからか、真人くんは僕を自然に受け入れてくれている。

同情するのではなく、自然に・・・

それに僕と祖父は救われた。


「まぁ、真人ちゃんは変わってるから」

彼が苦笑する。

そういえば、彼も変異以降、人の心が読めるようになった。

以前から、人の感情に対して敏感な男でそれに悩んでいた。

僕と彼は幼なじみだ。

小学校から高校まで同じ学校に通っていた。

その頃は彼がこのような変化をするとは予想もしてなかったが・・・


彼も人の心が読めるようになったことに悩んでいた。

当然だろう。

自分の心を読まれるなど、多くの人は彼を警戒するだろう。

だから、彼もここにこもっていたのだ。

しかし、真人くんは彼も受け入れた。


「自分の心を読まれるのが便利か・・・」

それが心を読まれた真人くんの感想だった。

「まさか、心を読まれるのを便利って思う人がいるなんて思わなかったわ。目から鱗ね」

確かに、心を読まれるのは自分の意思を伝えるのに都合はいいだろう。

心を読まれることに嫌悪感ではなく合理性を感じるとは思わなかった。


「でも、たまにバカな事もするのよね」

バカな事?なんだろう?

僕の表情を読んだ彼が説明してくれる。

「ほら、真人ちゃん弓がど下手くそでしょう」

確かに真人くんは弓が苦手だ。

「しかし、それは彼の力に耐えられる素材が見つからないからだよ」

真人くんの力があまりに強くて弓が耐えられないのだ。

別に下手な訳ではないと思うが、

「自分だけ飛び道具がないのが不満らしいの」

真人くんの力なら飛び道具にこだわる必要は無いのではないだろうか。

「あたしもそう言ったのだけど」

ため息まじりの説明によると、真人くんは最近、石を投げて獲物が捕れないか挑戦しているらしい。

そうなのか。

しかし、思い付きとしては悪くないんじゃないだろうか?

石なら補充も簡単だし、真人くんの力を考えれば充分に武器になりそうなのだが?

「あのね、真人ちゃんが投げた石が当たった動物を想像してみなさい」

ふむ・・・ひどい状態になってそうだな。

「当たった獲物はこなごなになって意味ないわよ、あれじゃ」

「まぁ、武器の練習としてはいいんじゃないかな」

あくまで、練習と考えればだが。

「真人ちゃんが飛んでる鳥を狙った時は殴りたくなったわ」

う~ん、鳥ぐらいのサイズだとなにも残らないのではないかな。

「飛んでる鳥に当たるわけないでしょ」

それもそうか。

「しかし、そうすると投げた石は?」

どうなったのだろう?

「山の向こうまで飛んでいったわね」

誰かに迷惑をかけてないといいが・・・


まぁ、今の人口密度を考えれば大丈夫だろう。

・・・きっと。


なかなか、有益な時間だったが夜も遅い。

今日はそろそろ休むべきだろう。

睡眠不足は作業効率を低下させる。

「それでは、おやすみ」

「えぇ、おやすみなさい」

僕は自室に戻ろうとして、ふと気づいた事があった。


「やはり僕の心は読めないのかい?」

彼は僕の心を読む事が出来ない。

「さとるちゃんの心はいくつも同時進行で考えているから、読むと酔っちゃうのよ」

だから、彼は僕のそばにはあまり近づかないのだ。

「真人くんなら、これを聞いてどんな反応をするかな?」

「そうね。お酒無しで酔えるなんて安上がりでいいじゃないかしら?」

うん、僕も同意見だ。






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