マンション編3
次は4階だがこれまで以上に慎重にやろう。
階数が下がる度にゴブリンがマンション内に侵入している可能性が増すだろうし、オレの記憶が確かなら、4階は満室だったはずだ。
しかし、正直少し楽しみでもある。
4階には最低でも2人の女性が住んでいたはずだ。
もしくは3人かも?
あまり注意してなかったのでわからない。
マンションなんて他の階に行くことはないからね。
エレベーターで乗り合わせた時に4階で降りる女性がいたと思う。
オレは階段を音をたてないようにゆっくり降り、4階に侵入する。
廊下にゴブリンはいない。
廊下にはうっすらと埃が積もっている。
住人はいないのだろうか?
いや、オレなら一回の外出で出来るだけの物資を持ち込んで、部屋でおとなしくしている。
普段と違い、会社に出勤したり外出する必要がないのだから。
埃があるのは無人の証拠になりえない。
慎重に確認しよう。
まずは一番階段に近い部屋からだ。
背後にも注意しないと危険だろう。
オレは、壁に背を付けるようにしてチャイムを押す。
反応は無し。
周囲を警戒しながら、ドアに耳を付け内部で音がしないか確認する。
音は聞こえない。
念のためにメーター周りを確認したが鍵は無い。
再度、チャイムを鳴らし反応が無い事を確認してからドアノブをゆっくりと回していく。
抵抗がなくなったので、ゆっくりドアを開ける。
玄関を見て、女性の部屋であることがわかった。
ヒールが置いてある。しばらく、そのまま室内に変化がないか確認する。
変化なし。いや、変化あり!
室内が見えないように、かかっている室内カーテンが揺れている。
住人が生存しているのか?
ゴブリンが隠れているのか?
どうする?このままドアを閉めるか?
いや、確認しないと危険だ。
覚悟を決めよう。
ゆっくり、オレは室内に入る。
土足でそのまま玄関に上がる。
耳を澄ます。
自分の心臓の音で分かりにくいが、何かがいる。
息づかいが聞こえる。
襲ってこないので、生き延びている住人だろうか?
いや、ゴブリンの可能性の方も捨てきれない。
オレは拳を握りしめ、ゆっくりトイレのドアを開ける。
ここにはいない。
次に風呂場のドアを開ける。
いない。だが、湯船には水が貯められている。
・・・これって生存者がいるんじゃないだろうか?
いや、湯船に水を確保していても、その後、ゴブリン化した可能性もあるか。
ゴブリン化していた場合は自分の身を守る為に相手を殺さないといけない。
何か、武器を持ってくるべきだったかもしれないが武器になりそうな物はなかった。
包丁ぐらいあるだろうが、刃物は案外扱いが難しい。
オレはゆっくり、ダイニングのドアを開ける。
室内を確認するがいない。
やはり寝室にこもっているのだろう。
ん?寝室にこもっている?
やっぱり、相手は生存者ではないのだろうか?ゴブリンの知的レベルがどの程度なのかわからないが、不安だから自分が最も安心する寝室に隠れるなどするのだろうか?
少し、落ち着いてきたので周囲を確認すると、室内は清潔に保たれている。
先程は相手を確認するのに精一杯だったので、分からなかった。
オレは、寝室にいるのが生存者だろうと結論づけて、声をかけてみることにする。
「オレは、このマンションの604号室に住む 立花 真人です。このマンションの安全確認の為にここに来ました。1分待ちますので出て来て下さい。乱暴はしないと誓います。」
これでいいだろうか?相手が決心するのに1分は短かったかな?
「えっと少しなら、食料なども分けれると思います」
どうだろう?部屋の様子から女性だと思うし、警戒して出てこないかもしれない。
オレは状況から、相手が生存者だと思って行動しているが、ゴブリンである可能性もゼロではない。
そもそもゴブリンの生態はゴブリン発生以降、世界がパニック状態になってしまい、ほとんど分かっていないのだ。
オレが、マンションから観察したゴブリンは、ほとんど知性が残っていないように感じたが、なかには、きれい好きのゴブリンや知的なゴブリンもいるかもしれない。
そんなことを考えていると寝室から音が聞こえた。
相手がドアの前まで移動したのだろう。
「本当に、あなたは大丈夫なんですか?」
ドアの向こうから、きれいな声が聞こえた。
やはり、生存者だ!しかも、女性!
「大丈夫です。オレは、知性を失っていません。保証します。」
本当に大丈夫なのかな?自分でもちょっと不安だ。しかも、誰が保証するんだ?
生存者がいたことでちょっと興奮しているのかもしれない。
ドアは、なかなか開かない。
相手は、迷っているだろうなぁ。
命懸けだもんなぁ。
扉の向こうにいるのが、ゴブリンだったら襲われるし、ゴブリンじゃなくても、女性なら襲われるかもしれないもんなぁ。
それにオレも正確には、人間とは言えないかも。ゴブリン化はしなかったけど、変異はしてるもんなぁ。あっ、ちょっと泣きそうな気持ちになってきた。などと考えていると、覚悟したのか、寝室のドアノブがゆっくり回った。
恐る恐ると開かれるドアから、少し離れて相手の姿を確認する。
出てきたのはやはり、ゴブリンではなかった。
けど、人間とも言いにくい。
出てきたのは、なんとエルフだった!
耳が尖っている!
なんでや!
いつから、世界はファンタジー世界に!
それともオレが知らないだけで、この近所には、元々エルフとかがいたのか?




