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サバイバル  作者: 伊右衛門


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お屋敷編4

○「あ~腰が痛い」

オレは持っていた鍬を置いて腰を伸ばす。

「使いすぎじゃない?」

隣で頭にタオルを巻いたマスターがにやにやしながら言ってくる。


オレ達がこの屋敷に転がり込んで、1週間が過ぎた。

今、オレとマスターで屋敷の庭を畑に改造中だ。

ここには、オレ達が持ってきたじゃがいもを植えるつもりだ。

元々、じゃがいもは飢饉対策として栽培が広まった作物なので、ちょうどいいと思う。世話も米などに比べると格段に少なく、農業初心者のオレ達向きの作物といえる。

もっとも、じゃがいもだけではいくらなんでも寂しい食事になるので他にも作物を植えてみるつもりだ。

立派な庭を畑に改造する事を、快く承諾してくれた家主には頭が上がらない。

「いろいろ持って来てくれて、大先生やさとるちゃんも喜んでたじゃない。お互い様よ」

マスターがオレにタオルを渡しながらそう言ってくれる。


あのあと対面した二人の家主は、オレ達の準備を誉めてくれた。

「お手柄は、図書室に行こうって提案してくれた美咲ちゃんだよ」

あの時、図書室に行ってなければここまでの準備は出来なかった。

「そういえば、美咲ちゃんは?」

「さとるちゃんとお勉強中」

マスターが屋敷を指差しながら言う。

美咲ちゃんはここの家主の一人のさとるさんと気があったのか、最近一緒にいる事が多い。

お兄ちゃん役を取られたみたいで、ちょっと寂しい。

「みんなが来てくれて、あたしも助かったわ。正直、あたしだけじゃ厳しかったの」

そうかな?マスターならなんとかしそうな感じがするけど。

「そんな事ないわよ。やっぱり寂しいし」

マスターがオレの肩に手をかけながら言う。

心の声を読んでの変則的な会話だが、これはこれで便利だ。

「相変わらず、真人ちゃんは図太いわね。普通の人なら嫌がるわよ」

「そう?優子さんも平気じゃん。美咲ちゃんはちょっと驚くけど」

まぁ、思春期の女の子だから仕方ないだろう。

しかし、あの二人に初めて会った時は、さすがにオレも驚いた。


あの後、オレは休息をとるマスターと交代して見張りについた。

見張りなんて初めてだが、マスター曰く道を見てればいいとの事だった。

森の中にはマスターが罠を仕掛けているので道以外は、ほぼ安全らしい。

その間に、優子さんと美咲ちゃんが持ってきた荷物を屋敷に運ぶ。もちろん重い物は、後でオレが運ぶ。


太陽が中天を過ぎた頃にマスターがやってきた。

「どう?真人ちゃん」

そういわれても、異常か正常かの判断が難しい。

「生存者が来なければ、大丈夫よ」

「なら、異常なし」

やっぱり、生存者が一番危険なのかな?

「ここまで来た生存者は真人ちゃん達が2番目だけど、最初のは世紀末と勘違いしてたわ」

オレ達が会った生存者と似たり寄ったりか。

「ところで、離れてくれませんか?」

「イヤ」

マスターはオレの背中に張り付いてる。

「寝起きの栄養補給よ」

オレはマスターの朝食か?

充分な栄養を補給したのか、ほどなくマスターが離れてくれる。


オレとマスターは門を見張りながら、今後の事を話し合う。

「じゃがいもとか大豆とか持ってきてるんで、庭を畑にしてもいいですか?」

「う~ん。たぶん、大丈夫だと思うけどあたしも間借りしてるだけだから、大家さんの許可がいるわね」

そりゃそうだ。マスターもここに避難してるが持ち主ってわけじゃない。

「家主のお二人って、まだ寝てるんですか?」

「暖かくなってきたし前に起きてからそろそろ1週間だから、たぶん今日か明日には起きてくるわ」

1週間!そんなに寝てるのか。でも、暖かくなると起きるって冬眠か?

人間も冬眠は可能って話を聞いたことはある。たしか、この近くの山でも、以前怪我をした登山者が冬眠のような形で発見されたはずだ。一時期、ネットで話題になったので覚えている。

「いろいろ疑問でしょうけど、もうちょっとガマンしてね」

寝ている家主の部屋に入るなんて、出来ないから起きてくるのを待つしかないか。

そんなオレをマスターがじっと見ている。

「この距離でも解るんですか?」

オレとマスターは軽く2メートルは、離れている。

あの顔はオレの心の声を聞こうとしていたんじゃないかな?

「この距離だと、ほとんど解らないわね。真人ちゃんが悪い事を考えてないのが解っただけよ」

有効距離は1メートル以内って感じかな?マスターが本当に聞こえてないならだけどね。


「マスター、最初会った時、持ってた銃はどうしたんですか?」

「あぁ、あたしの私物よ。あたし、猟友会に入ってるの」

マスターによると、ここの大先生やさとるさんも猟をするそうだ。なので、この屋敷にも散弾銃と大先生のライフルがあるそうだ。

「優子さんや美咲ちゃんの自衛用に貸してもらえるかな?」

オレの不安は、優子さんと美咲ちゃんの自衛手段だ。

二人とも、かよわい女性なので自衛手段を探している。

オレが事情を説明すると、マスターは

「優子ちゃんがかよわいかどうかは議論の余地があるけど、大丈夫だと思うわ」

良かった。

「でも、銃で自衛するのは一時的になると思うわよ」

マスターの説明だと銃弾の製作、特に現代の銃器に必須な無煙火薬の製作は素人にはかなり難しいそうだ。当然弾が無くなれば銃は使用できなくなる。

「銃口を向けるだけで人はビビるけどゴブリンには効かないから他の方法も考えましょ」

やっぱり、弓とかの方が有効かな?みんなで相談して考えよう。


夕方になったので、マスターと屋敷に戻る。

屋敷に戻ったマスターは二人の家主の様子を見に行った。


初めて見た二人の家主は失礼だが、正直化け物に見えた。

全身を覆う鱗。長く伸びた首。頭に生えた角状の突起。縦に光る瞳。そして、尻尾。

リザードマン?いや、むしろドラゴニュートってやつか?

オレ以外初めて全身が変異した人を見たが、これに比べるとオレのインパクトは百分の一だね。


「驚かせて、すいません」


二人の内、鱗が赤みがかっている方が外見からは想像できないような涼やかな声で言った。

「若先生ですか?」

優子さんには、その声に聞き覚えがあったみたいだ。

「お久しぶりですね、北村さん」

「やっぱり、じゃあ、こちらが?」

鱗が黒っぽく、やや首の短い個体が

「うむ、儂じゃよ」

「やっぱり、大先生」

「お互い、無事でなによりじゃ。無事かどうかは意見が別れるじゃろうがな」


二人と優子さんのあいさつが終わったので、オレも自己紹介をする。

「立花 真人です。初めまして。こちらのお屋敷に避難させてもらっています」

オレは頭を下げてきちんと挨拶をする。

最初はかなり驚いたけど、二人からは理性と知性が感じられる。あまり、恐怖心は湧かなかった。

「ふむ。儂らの姿を見ても驚かんとはたいした若者じゃな。健でも最初は腰を抜かしたのにな」

大先生がそう言って少し笑う。

「ちょっと先生、健じゃなくエリザベスよ」

「マスターで耐性が付きました」

「ちょっと真人ちゃん。どういう意味よ」

オレとマスターの会話で大先生は笑いだした。

「いや、いい若者じゃ。お前さんは北村くんの恋人かね?まさか、健じゃあるまいな」

「もちろん、優子さんの彼氏です」

「それはなによりじゃ。北村くんの身持ちの固さは儂も心配しておったが、いい男を捕まえたらしいな」

大先生がオレの肩を叩きながら、笑う。

「ところで、こちらのお嬢さんはどうしたんでしょう?」

若先生、さとるさんが困惑している。

美咲ちゃんがさとるさんの回りをぐるぐる回っている。

目がキラキラしている。

「…こんな大きい鱗、初めて見た」

美咲ちゃん、鱗フェチだったの?


オレ達は、食堂で今後の事を話し合った。

家主である二人の許可で庭を畑にする事。

マスター一人では出来なかった周辺の探索。

優子さんと美咲ちゃんは自衛の為に銃の扱いを二人から習う。オレ?トリガーに指が入らなかったんだよ。

それと平行して弓を製作してみる。

マスターは音が出ない弓はかなり有効な武器になると言っている。

さとるさんによると庭にイチイの木が植えてあるので、それが弓に適した木らしい。なんで、そんな木が植えられているのか疑問だったが、日本では一般的な庭木として植えられているそうだ。知らんかった。

この辺には、猪が多いのでそれも食料として採ってみる。

やることが増えてきたが、全て自分達が生きる為だ。

無理せず、楽しくやっていこうと思う。


「この体になった時は驚きましたがせっかくなので調べてみますよ」

さとるさんは自分の体に興味津々だ。

ちなみに美咲ちゃんも興味津々だ。さっきから、二人の間に座っている。

「なんかこの姿の方がもてるのう」

大先生は美咲ちゃんを撫でながら言う。

いや、大先生それは誤解。美咲ちゃんが特殊ですから。

「僕とおじいさんが同じ変異をしている事から、変異には遺伝的な特性が関係してるのかも知れません。いえ、似た環境で変異しているのなら環境の影響もあるのかも?かつては、このウイルスで変異した人がいたのかも知れません。それが各地の伝説や伝承として残ったのでしょうか?今回の爆発的な流行は交通機関の発達とウイルスが変異したからでしょうか?この変異がどうしてこれほど多様な変異をもたらしているのか?面白い研究テーマです。もっとサンプルが欲しいですね。真人くん、僕のサンプルになってくれませんか?」

さとるさんの目がランランと光ってきた。大先生はやれやれと隣で頭を降っている。さとるさん、マッド系?


怖いので、丁重にお断りする。


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