マンション編14
○オレが部屋で今後のことを考えていると、バスルームから二人が出てきた。
女の子は、きれいに洗われて、新しい服に着替えている。ちょっと、サイズが合っていないのは、優子さんの服だからだろう。
女の子を観察する。やはり、変異していないように見える。
う~ん、どうしよう。
「真人、この子は、美咲ちゃん。美咲ちゃん、さっきも言ったけど、こっちは真人お兄ちゃん」
この子、美咲っていうのか。優子さん、あの短時間でよく聞き出せたな。かなり、怯えていたのでしゃべってくれないかと思ってた。
「はじめまして。立花真人です。よろしくね」
オレは、美咲ちゃんが怯えないように、できるだけ優しい声であいさつした。ちょっと、怖がられたけど。これは、オレが怖いわけではないだろう。きっと…
オレ達は、優子さんの部屋のダイニングで、これからのことを少し話をする。お茶でも出してあげたいけど、この部屋の水や食料は、オレの部屋に移動させている。取りに行こうかとも考えたのだが二人を残すのはあまりに危険だと思い諦めた。
オレが、このマンションから移動したいと考えていることを伝える。このマンションは他に比べたら、安全かも知れないが、あまりにも嫌な事が多い。それに美咲ちゃんもこのマンションにこのまま居続ける事はツラいだろう。
移動するとなると、問題は多い。適切な移動先をオレが知らないってこと。そして、移動中の安全をどうするか?そもそも、安全な移動先があるのか?本人には言えないが、美咲ちゃんがゴブリン化しないのか?などなど、難問山積している。
しかし、このままマンションに居ても、未来が無いように感じる。周囲の物資を食い潰してしまえば、そこでオレ達の生活は終了してしまう。まだ、余裕のある内に未来を探しておきたい。
優子さんは真剣に。美咲ちゃんは優子さんの腕を抱き締めながら、それでも真剣にオレの話を聞いてくれた、と思う。さっき、ようやく助け出されたばかりの美咲ちゃんには、まだ考えるのは難しいだろう。
だがそれでも、オレは今この事を言っておきたかった。オレが、そしておそらく優子さんも、美咲ちゃんを助けたいと思っている事、そして未来がある事を伝えたい。
すぐに移動できるわけじゃないが、準備などの事を考えると早めにオレの考えを二人に伝えたかった。反対意見があるかもしれない。オレの考えが、かなり先走っているのも自覚している。このまま、マンションにいるのが正しいのかもしれない。ひょっとしたら、救助が来る可能性もゼロじゃないし。
「わたし、このマンション、イヤ。このマンション出たい。わたしも連れて行って」
美咲ちゃんが泣きながら言った。はじめて、美咲ちゃんの声を聞いた。泣き声だけど。顔をぐしゃぐしゃにした美咲ちゃんを優子さんが抱き締める。
美咲ちゃんを抱き締めながら、優子さんがオレを軽く睨む。うん、救出されたばかりの美咲ちゃんに決断させるなんて、オレは酷いことをさせている。
優子さんはオレのことを睨んでいたが、しばらくすると微笑んでくれた。
良かった~。
優子さんに睨まれるなんてはじめてだがかなり怖かった。優子さんを怒らせないように注意しよう。
そのまま、美咲ちゃんが落ち着くのを待つ。美咲ちゃんは優子さんの胸で泣いている。なんか、親子みたい。そんなことを考えると、優子さんにいきなり睨まれた。なんで?声に出してないのに?年齢的に優子さんに美咲ちゃんぐらいの子供がいるなんてありえないってもちろん分かってますよ。空気的にそう感じただけなんです。
●美咲ちゃんを抱き締め、背中を撫でて落ち着くのを待つ。その時、真人が不穏な事を考えたのを感じたので軽くにらんでおく。
いろいろな体験をした美咲ちゃんに考えさせるなんてひどいかもしれないが、真人の想いは美咲ちゃんに伝わったと思う。
「未来を探したい」
真人の気持ちは私にも理解できる。この生活は長続きしない。
私も真人も美咲ちゃんも生きていきたいのだ。
真人は美咲ちゃんに怖がられたのが、ショックなのか、こちらを心配そうに見ているが近づけないでいる。
私たちの周りをうろうろ。真人も落ち着きなさい。
今、美咲ちゃんが怖いのは男性で、真人が特別怖いわけじゃないから。
でも、あの時の真人は私でも怖かった。私を助ける為だったのは、もちろん判っているが怖かった。
怒りで暴走した真人には、私の声は届かなかった。私は血塗れの真人の手を握りしめた。
その時、ようやく真人の力が弱まったのを感じた。
とっさに真人の視線に自分の顔を入れると真人の瞳に理性が戻ってきた。
真人は、私がキスをしたと主張するが私からはしていない。あくまで、真人からキスしてきたのだ!まぁ、その後の事は二人の共同責任だけど・・・
なんというか色々とすごかった。最近、お風呂入ってないから、すごく、すごく恥ずかしかった。この事は忘れてあげない。服もぼろぼろになっちゃったし。
もちろん、後悔はまったく無いけど。
美咲ちゃんが、落ち着いたら、今後の事を三人で話し合おう。
三人で、未来の事を話し合おう!




