第四話「本当のありがとう」
こんにちは、作者の飽き性の少年です。
この物語は、前世の記憶を持つ少年ノルディアの、少し奇妙な日常と冒険を描いています。
理不尽な孫の手様の作品、無職転生に影響を受けつつ、
自分なりの物語を書いてみました。
多少妄想全開な描写がありますが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
昨日物質を変化させ、
剣に変える魔術を習得した。
魔術教本には岩から剣を作ると書かれていたが、色々な物質から色々な形を作ることもできるらしい。
――そうだ。
脳裏にフィリアの腕が浮かんだ。
もしかしたら"義手"も作れるのかもしれない。
腕に装着するのではなく、腕にそのまま生成させるのであれば。
義手の構造を知らない自分やフィリアにもできるかもしれない。
そうなったらまずはフィリアのところに行こう
.....ラクロは、まだ行かせない方がいいだろう
ーーーー数十分後
ようやく森の出口が見えてきた。
.....!!
まだあの範囲に草や花は生えていなかった。
この間の出来事が夢じゃないということを再確認した。
もしもあの時ラクロが来なかったら...
フィリアにはあれ以来会っていない。
一度出会い。一度共に生死を経験した。
ただそれだけの仲だ。
そんなことを言っていたらついたな。
かなりデカい家だ、装飾も豪華。
....フィリアはまだ生きる理由があるのだろうか
覚悟を決めよう。
「すいませーん!誰かいますかー!!」
返事がないな...
まさか、またあの化け物が?
「フィリア!」
何も考えずに扉を蹴り飛ばしてしまった。
「.....え?」
目の前に現れたのはあまりにも無防備すぎる
綺麗な美女だった。
こんな女性、いや、女の子は初めて見る。
僕は前屈みになるしか無かった。
「ちょっと!!何であなたがいるのよ!」
声に聞き覚えがある、生死を彷徨ったあの場所で聞いたことがあるような...
「話聞いてるの!?出てって!」
一瞬身構えた、だが何もなかった。
殴られるかと思ったのだが、殴れない体になってしまっている。
よくよく見たらフィリアに似ている気もしなくない。
普段は顔も髪で隠れてあまり見えていなかった。
こんなにまじまじと顔を見るのは初めてだな。
「だから....何見てんのよ!このスケベ!!」
痛え、フィリアめ...!
ドロップキックをかましてきやがった。
立ち上がろうとした瞬間、正面が真っ暗になる
そこからの記憶はない。
目を開けたら見たことのない天井。
どこだ...?ここは。
また転生でもしたのか!?
「起きたの?」
フィリアがいる、良かった。
生きてる。
「ごめんなさいね、私の娘が...」
威圧感がありながらもなかなか大きい物を抱えている美しい女性だ。
「あ、あの初めまして。」
「こんにちは。私はサラーヌ・マスタリアと申します。随分可愛らしいお客さんですね。」
見てるだけでも鼻血が出そうだ...優しい。
「初めまして、娘さんの師匠の息子です」
眉が一瞬動いた、なんとなく何故かは理解した。
「そうなのね、顔立ちもいいし。将来フィリアの伴侶君になってもらおうかしら」
伴侶?何で僕が...?
「ちょっと、ママやめてよ...」
顔が赤いぞフィリア君。
可愛い
「本当に貰っちゃいましょうか?笑」
「え......あ、いや.....」
おっと、何かやっちゃったのだろうか
気まずそうな目をしている。
「あぁ、いや冗談ですよ!」
「あらそう?そりゃそうよね」
前世でこういう女を見た気がする。
初めて会った時のフィリアの目つきに変わった
優しいのか悪いのか分からない、何だこの人。
「....」
フィリアが落ち込んでいる。
僕と結婚したくなかったんだろうな。
可哀想に、誰がこんな酷いことを
「それより、何か用があったんでしょ?」
話を切り出したのはフィリアだった。
そういえばフィリアに義手の話をしに来たんだ
「そうでしたね。フィリアさんは魔術を使ったことがありますか?」
「一度だけ、一歳の頃に魔級魔術を使ったことがあるわ」
魔級...か、この世界での一歳は前世の2歳らしいがそれが相まっても凄い。
この人の戦闘技術はとうにラクロを越しているんじゃないか?
「それなら話が早いです。腕を使えなくて、困っていませんか?」
先に口を開いたのはフィリアの母だった。
「あなたのせいでフィリアの腕は無くなったんでしょう!!」
こいつもか、
胸が苦しくなる。
「だから違うって言ってるじゃない!何でママは言ったことを信じてくれないの?」
なぜフィリアは僕を守っているんだろう。
あんなに酷いことをしたのに、僕のことをあんなに嫌っていたのに...
「でも...あなたは毎晩泣いているじゃない.......」
....!
「何で知ってるの、何で言うの、もう、ママなんて大っき」
僕はフィリアの口を塞いだ。
これ以上言ってしまったら僕とラクロのような関係になりかねない。
しばし沈黙が流れた、突然フィリアは僕の手を
はぎ、不満そうな顔で部屋に戻って行った。
「私は一歳の子に怒鳴るなどしません、ですがあなたにはします。何故だか分かりますか?」
少しだけ考えたが答えは出ない、考えるつもりもなかったが。
「あなたの精神状態が6歳の子と同等だからです。あなたは何者ですか?」
あんたこそ何者だよ、なんで分かってんだ
「何を仰っているかよく分かりません」
「答える義務はありませんとでも?」
このままじゃ埒が開かない。
正直に話すべきか?
だがもし本当のことを話したら、何かが崩れる予感がする。
「僕はフィリアさんを連れ戻します、この話はまた今度しましょう」
「待って!」
僕は見向きもせずにフィリアの部屋に向かった
フィリアの部屋はどこだろう。
廊下を歩いてすぐ分かった。
「フィリア、開けてもいいですか?」
泣き声が止まった
「...いいわよ」
嗚咽混じりの声だった。
「失礼します」
扉を開けると部屋の隅で小さくうずくまる
フィリアがいた。
床や机、本や道具が入り乱れていて、汚部屋というには汚部屋すぎる。
「さっき話したことについてですが、"剣士の道"
にまた進めると言ったらどうしますか?」
フィリアの肩が動いた。
「もちろんまた進みたいわ、でもそんな魔術はないでしょう」
「ええ、そんな魔術はありません。ですが
"科学"ならあります」
フィリアは突然立ち上がり、僕の頬を叩いた。
「本当!?」
目はいつもより輝いていた
僕はこの姿を見るためにここに来たんだった。
「ええ、本当です。暴力を振るう人には教えたくないですがね」
フィリアは少しぷいっと顔を背けた
いや、叩いたのは喜びの表現だったんだろう。
「.....ごめんなさい」
僕は丁寧に説明した、話が飛んでいる所も。
抜けている所もなかった。
「で、科学って何?」
こりゃ大変だ。
――2時間後
「なるほど!つまり、その義手っていうのを魔術で作ればいいのね?」
「えぇ、そうです...」
もう夕暮れ時だ、理解するのに時間かかりすぎだろう。
「少し、私の話をしていいかしら」
目は真剣なのにもじもじしている、なんだろう
「分かりました、聞けばいいんでしょう」
結構めんどくさい、喋りすぎて喉も痛いし
「私の目は紫なの」
急に何を言い出すのだ、そんなことくらい顔を見れば分かる。
話を聞きすぎて頭がパンクでもしたか?
「見れば分かりますよ」
「そういうことじゃなくて、紫の目は魔王の血でなければならないの」
またファンタジー要素満載な言葉だ
魔王とか....
「その魔王は今も尚たくさんの王国を支配しているそうよ」
それは怖いな、この街もいずれ支配される時が来るかも知れない。
その時はこの....
「私の魔力は魔王のおかげ、剣術の道へ進んだのも
将来的に魔王を倒さないといけないから」
「そうなんですね。意外です」
「周りから勝手に期待されるからこうしなくちゃいけなかった、剣術は心から楽しいと思ってるけどね」
道場では適当な身だしなみだったのに家でオシャレしてる理由は親のせいだったか
本当はオシャレとかしたいんだろうな。
「だから、その、今度冒険してみたいなって思ってて
......一緒に来ない?ノルディア」
「え?まあいいですが、せめて2歳半になるまで待ってくれませんか?この体じゃすぐ死にます」
「えぇいいわ」
なぜか冒険の約束をしてしまった
とにかく今はフィリアの義手作りに専念しよう。
―――半年後
「やった....できた!できたわよノル!!」
半年の努力も実を結び、フィリアはついに義手を生成できるようになった。
最初に見せる人は決まっている
「あら、おかえりなさいノル」
「ただいまです母様」
「初めまして、フィリア・マスタリアって言います。いつもノルと遊んでます!」
「母様、父様はどこにいますか?」
「あの人は...」
「裏庭にいます」
「ありがとうございます、リリア」
緊張してきた、最後に話したのは半年前。
本を借りた時が最後だろう
あれ以来父様は自分の部屋でご飯を済ませており、二週間に一度便所に向かう姿を見るくらいだ。
きっと怒られることはない。
手に人の文字を書き飲み込んで扉を開けた。
「父様....?」
「なんだ」
体は体毛だらけで、クマもすごい。匂いも臭う
「話があります。
父様の知り合いを連れてきているので、一度お風呂に入ってきて下さい」
「あぁ、そうか」
覇気のない返事、聞いてるだけで自分も鬱になりそうだ。
「風呂に入ってきた、知り合いとは誰だ」
「この人です。入ってきて下さい」
「ひ、久しぶりです師匠」
おいおいどうしたフィリア、前みたいなぶりっ子で来るかと思っていたのに。
「フィリア...?フィリアなのか?」
ラクロの目に涙が浮かんだ、喜びの涙かと思った。
表情はさらに曇り、今すぐにでも死にそうなくらい虚な目。
声のトーンはさっき以上に低かった
「なに泣いてるんですか!今日は嬉しいご報告ですよ?」
「なんだ、そうか。2人揃って結婚のご挨拶でもしに来たのか?」
苦笑いをしながらつまんないギャグを披露した
でも、その顔は前と同じ明るさを取り戻した気がする。
いつも馬鹿で調子に乗りやすくて、頼りになる父親に
「違いますよ!まだ、今日は覚えた魔術を披露しに来たんです」
「そうか....」
ラクロは俯いた、また地雷を踏んだのかと思ったがラクロからは暖かい感情が流れ込んできた
「この世界には、剣術だけじゃない。いろんな戦闘技術がある。お前は新しい道へ進めたんだな」
僕は今ラクロと同じ表情だ。
多分あの日僕の怒った理由も今ならわかる気がする
「何2人とも泣いてるの?しかも私は剣術の道を進みますよ」
「あぁ、そうだったのか。てっきり魔術の道に進むのだと」
この子の努力している所を見ていたら、僕だってそうなる。
「神よ、大地からのエネルギーを私に与え。
全ての物質を手に入れさせよ――
マテリアルマニフェスト!!」
何度見てもすごい、感じるのではなく。
肉眼で見れるほどの魔力量...
流石魔王の血筋だ。
「なんだ?その腕に付けているのは」
「義手です。この魔術を使えば、いつどこでも出現させ、動かすことができます。だから、私はまた....剣術の...道に進めるんです..」
フィリアは努力してた。
よく頑張ったよフィリアは
「そうか、良かったなぁ、2人とも」
2人...?
「はい...私..もう戦えないと思ってたけど。
ノルのおかげでまた、戦えるんです」
「そうだな。ノル、今まですまなかった。
フィリアのために頑張ってくれて、フィリアに夢を見せてくれて
――ありがとう――
」
そうか、僕はもう自分を責めなくていいんだ。
こちらこそありがとう..."父様"
みなさま、読んでいただきありがとうございました。
ラクロとの仲直り、フィリアの立ち直りをテーマに書きました。
僕も作ってる途中にうるうるしてました笑
次回もちゃんとあるので出たら読んでくださいね!




