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今世の廻天 - 巡り巡って本気出す -  作者: 飽き性の少年
第三章 少年期 フィリア救出編
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第17話「現実」

 ようやくナダユキが復活した。

 あまり彼との思い出はないが、引きこもり寸前のところを助けてくれたので感謝はしている。


 とりあえずアイセラに謝ることにした。

 なに、両想いなんだからすぐに許してくれるさ。


 「僕達の居場所はどうやって分かったんですか?」

 「勘だよ」


 やはりこの人はドラゴン裁縫セット並にゾワっとする。

 そういえば、ゴブリンの耳を取ってくるのを忘れていた。

 今までの努力が無駄になってしまう。


 「何をそんなに考えているんだい?」



 そうだった、今考えるべき事は謝罪の言葉だ。

 深呼吸だ。

 スーハー......


 「行きましょう」


 ナダユキがドアを開けた。

 アイセラは謝ったら許してくれる、そういう人だ。


 「ごめん、アイセラ」


 続けて謝罪をしようとする。

 その時、僕は彼女の顔を見て言葉が詰まった、

 アイセラの目は、彼女の目は更に鋭さを増していたのだ。


 「あ、え、ごめ」


 彼女が放ったのは優しい言葉ではなく、暴力だった。

 頬が熱い、そして彼女が怖い。

 彼女の耳に入ったのはナダユキの言葉だけ、


 「一回止めてくれ......」


 彼の言葉は哀れみと呆れが混ざっていた、

 僕が悪いのは分かっている。

 でも、いつもと違う、それが気持ち悪い。

 

 「だって、この人が悪いじゃないですか」


 この人、そう呼ばれた事実に目を逸らせたくなった。 


 「先にやったのはどっちなんだい?」


 彼女はその言葉で喋るのをやめた。


 そうして、ナダユキが止めてくれたおかげで今日は帰ることになった。

 あの時、プライドで言い返すんじゃなかった。

 そう後悔を募らせて、その日は終わった。

 

 

――

 そしてまた一日が始まった。

 彼女と喋れる自信がない。


 「やあ、おはよう」


 突然ベッドの脇から彼が飛び出した。

 驚きはしたが、テンションが上がる事はない。

  

 「なかったよ」


 彼がいきなり口を開いた、

 "ない"その言葉の意味を考えても理解できなかった。

 

 「ああ、ゴブリンの耳だよ」


 全部顔に出ていたのか、言葉の意味を話してくれた。

 ゴブリンの耳がなかった。

 つまりゴブリンの住処へ行ったということだろう。


 つまり、あの首も......


 「埋葬して来たんですか?」


 彼は困惑した表情をしながら口を開いた。



 「埋葬とはよく分からないが、肉球のような足跡があったね」


 

 獣族の家族があの後戻って行ったのか、正直罪悪感はあまりない。

 僕が精神的に病んでるのはアイセラとの関係だ。


 少し最低かもな。

  

 「とりあえず、今日は次の街に行きましょう」

 「お金がなかったんじゃないのかい?」

 「ナダユキさん、ごちそうさまです」


 どうせあれくらいはあるだろう。

 絞れるところは絞る、それが僕の流儀だ。



――

 ようやく次の街に着いた。

 座標が載っている地図がなかったので徒歩で歩いて来ることになってしまったのだ。

 

 というのも、転移魔術は座標をしっかり頭の中で復唱する。

 もしくは目視できる場所にしか行けない。

 便利なんだか、不便なんだか......


 「子供の頃ここを訪れたことがあるよ」


 ナダユキが口を開いた、病院街って名前だし。

 昔病気にかかったりしたのか?


 「ペットに魔物を飼っていてね、2匹の猪の魔物だったんだが突然死んだんだよ」


 猪の魔物か、この世界に来てすぐ会った魔物もそうだったな。


 「その次の日に、子供猪が飛び出して行って、帰って来たら火傷していたんだ」


 火傷?

 猪の魔物、親子......


 いや、違うよな。


 「確かノルディア君の家の近くだったかな」


 ああダメだ、絶対あれだ。

 冷や汗が出ている。


 バレたら殺される。


 「ノルディア君?」

 「何もしてません!」

 「いや、とりあえずギルドに向かおうって言おうとしただけだよ」


 よかった、殺されるのかと思ったよ。


 「何か知っているのかい?」


 この人こんな怖かったっけ?

 まあいい、とりあえずこの街。

 水辺の病院街(リヴァリス)を探索しよう、ギルドの場所も載っていないからな。

 


 お金の心配はナダユキに任せるとして、この街では情報収集を中心に活動して行こうと思う。

 

 「それじゃあギルドに着いたら別行動しましょうか」


 アイセラとずっと一緒にいるのも、彼女自身が苦痛になるかもしれない。

 僕の為がほとんどだがね。


 そうしてギルドのお姉さんに地図を貰い、別行動を始めた。


 「まずは適当に歩いて人にインタビューでもするか」


 若い女の子に聞いてみよう、きっと世間について詳しいからな、決して下心はない。

 

 「すみません、ちょっといいですか?」


 話しかけたのはきっと86くらいのお尻を持っているギャル。

 何度も言うが、決して下心はない。


 「なにー、アタシ年下興味ないの」

 

 ナンパだと思われている。

 誤解を解かないと


 「いえ、僕は9歳です」


 おっと、間違えて年齢詐称をしてしまった。


 「えー9歳なのにその身長なんだ、低身長にも興味ないんだよね、じゃ」


 ......なんか男としての尊厳を傷つけられた気がする。

 もういい、女の子はやめよう。



 辺りを見回したとき、ある現場を目撃してしまった。

 青年が人を刺している。


 この世界でも殺人は毎日のように起こっている。

 警察、いや警察なんかない。

 どこに掛ければいいんだ?


 とりあえず助けないと!


 「ちょっと何してるんですか!」


 青年が向けた目には熱なんかこもっていなかった。

 しまった、腰を抜かした。


 彼がナイフを抜いた時、僕は理解した。

 逃げなきゃ殺られる――


 僕はすぐに走り出した、夢の中みたいに転びそうになりながらも必死で走った。

 考えている暇なんかないのに前世でやられた時を思い出す。



 そんな時、病院を見つけた。


 中の人が傷つくかもしれないが仕方ない、窓を突き破って隠れる事にしよう。


 「痛!」


 ガラスの破片が身体中に突き刺さり、血が溢れ出しながらも声を抑えた。

 15秒くらいした時だろうか、背後から声が聞こえた。


 「お兄ちゃん?」


 その声の正体は、管に繋がっている少年だった。

 顔は青ざめていて、目に精気がない。


 「ごめんね、今出ていくから」


 痛みに悶えながらも僕は立ち上がり、窓から出て行こうとした。


 「でも、痛そう」


 違う、僕より彼の方が辛いだろう。

 痛いだろう。

 そんな少年の前で苦しんでいる姿を見せたくなかった。

 

 「僕のこと気にしてる?

 いいんだよ、僕もう生きる気ないから」


 その言葉は気を遣った冗談ではなく、本心だった。

 目にハッキリと出ている。

 この子を1人にしてはいけない、そんな気がした。


 「少し、話をしない?」


 少年は嬉しがった、きっと今まで誰も話しかけてくれなかったんだろう。

 可哀想だ。


 みんなそう思っているだけで、少年が嬉しがる行動をしようとしない。

 人間の悪いところだ。


 「魔人って聞いたことあるかな」

 「あるよ」


 もしかしたら何か知っているかもしれない。

 メモ帳を取り出してもう一つ質問した。


 「どこで知ったの?」

 「お母さんとお父さんが魔人になっちゃったからだよ」


 聞いた事に後悔した、なんでこの子に思い出させちゃったんだよ。


 「ごめんね」

 「もう気にしてないからいいよ、お兄ちゃんがいるし」


 僕は掛ける言葉が本当に思いつかなかった、言い訳なんかじゃない。

 一度ナダユキ達を連れてこよう。

 それなら少年も楽しくなるかもしれない。


 「ちょっと僕のお友達呼んだくるね?」

 「うん、分かった」


 外に出て、ナダユキ達のところに向かおうとした。

 さっきの少年を想う気持ちで胸が苦しかった、そしてガラスの破片の痛み、青年の恐怖。

 色々思い出して吐いた。

 


 視線を感じた気がする。

 違和感を持ちながらも僕はみんなを探しに行った。

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