表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今世の廻天 - 巡り巡って本気出す -  作者: 飽き性の少年
第三章 少年期 フィリア救出編
16/18

第16話「判断ミス」

あと助ける家族は1人だけらしい。

終わったらここを出る事になるし、今日のうちにする事はないか......



いや無いな、ご飯を食べる時か眠る時以外にこの街でした事はない。

強いていうならオナ......


「開けてもいいですか?」



ヤバい、いややばくない。

別に口に出してないのに何焦ってんだよ。


「はい、いいですよ」



ドアを開いたアイセラは片手に何かを持っていた。

薄型のスマホのような板に線が繋がっている。


「最近発売された、テレビというものらしいです!」



僕はその言葉に興奮が抑えきれなかった。

今まで何もしないでダラダラ過ごした日もあった、でもこれからは娯楽があるんだ!


「同時刻に別の場所でカメラというものを使うと、その場所が映し出されるらしいです!」



テレビだ!

完全にテレビ!



「コードを繋いでみてください!」

「コードとは何ですか?」




そうか、この世界の人は現代の技術を知らない。

いや、だったら何で同じ商品名で売られている?


ここ、"異世界"だよな?


「この線に魔力を注ぐとですね」



彼女がコードを両手で持ち、力を込めた瞬間だった。

線が徐々に光っていき、やがて本体にたどり着いた。


そうして本体に映し出された、この世界で初めてのテレビ映像はなんだ!



「あぁん!」


その言葉で僕の息子が熱くなると同時に、部屋が凍りついた。




彼女は刺激的な映像に戸惑ってコードを投げ捨てた。

だが残っていた魔力はさらに熱い映像を流し始めた。


ついに彼女は怒り狂っては泣き喚いてを繰り返して狂気的な行動をし始めた。




あの後、僕がテレビを叩き割った事で彼女は落ち着いた。

疲れたのか眠っている。


今日やる事が一つ増えたな、買いに行こう。



――

結局テレビはどこにも売っていなかった。

そんな事なら壊さなければ良かった......


今もあの映像が全国生放送されていると思うと、なんだか頭痛がする。

次の街を期待しよう、それよりも今日は星が綺麗だ。



いつもより星が明るい気がする。

気づけば僕も3歳半まで半年を切った、前世換算すると6歳。

なんだかこの世界の人は実年齢より高く見える。



魔物がいる分死亡数は多いが、前世より早く歳を取れるという事だろうか。


見た目的には僕も11歳ほどではある。

アイセラも13歳くらいの見た目だ。

前世から歳を引き継いでいたら僕は犯罪者になっているだろう。




若くて不便な事は沢山あるが、そこら辺は感謝している。


そろそろ戻るか、アイセラも気になるし。

後で少しからかってみよう。



部屋にたどり着き、ドアを開けたら彼女はもう帰っていた。

歩いて少し疲れたのでもう寝るか。

明日は余裕だと思うし、久々にゆっくり眠ろう。




――

朝起きて僕はのんびりしながら準備を済ませ、ギルドへ向かった。


「おはようございます」



昨日のことはすっかり忘れたようで、彼女は笑顔で返事をした。

早々に食事を済ませて、少し買い物をする事にした。


残り1人ということもあってか、獣族の家族もすぐに賛成。



獣族の家族は僕達に気を遣ったのか、それとも何も考えていないのか分からないが、どこかへ走り去っていった。


「それでは何をしますか?」



特にしたいことも無い、この時間に助けに行った方がいい気がする。

誘ったのは僕だが。


「やっぱりあの人達を連れてきませんか、私はしたいこともありませんし」



アイセラも同意見らしい。

ということで、獣族vs人族のかくれんぼが始まった。


「恐らくギルドにいると思います、ご飯を食べているんじゃ無いでしょうか」



さっきご飯を食べたばっかのはずだが......


「私の感は当たりますよ」



どことなくスナイパー13の方みたいな顔をしている。

彼......いや彼女のクールな顔を見ていたら自然と頷いていていた。




そうしてギルドのドアを開けたら60枚ほどの皿が目に飛び込んできた。

しかも食事をまだしている。


獣族は大食いらしい、あの体のどこに入っているんだろう。



そうして彼女達を説得して、ゴブリン退治へと向かった。

残り1人、余裕だ。




――

「ここから匂いがするニャン」


この語尾には毎回ドキッと来るが、ようやく最後の住処を見つけた。


この前と同じく、僕だけが行く作戦だ。



「それでは行ってきます、帰ったら宴をしましょう」


そうして最終作戦が開始した。

もっとも、作戦に参加するのは僕だけだ。

なんだか目から水が流れてくる。


「――・」



なんだ、外にゴブリンが大量にいる。

これだったらそのまま範囲攻撃をするだけ、最後にしては呆気ないな。


そうして攻撃しようとした瞬間だった。



「やめろ、助けろよ!」


人間の声がした、大量のゴブリンの中からだ。

ゴブリンで見えていなかったが、人居たのか。

もう少しで人を殺していた。



人を殺したらアイセラと目を合わせることすらできない、良かった。


そう安堵して、隠れていた時だった。



「やめろ、あのゴミ嫁のせいで、離」


人が目の前で死ぬ時を沢山見てきた、聞き覚えのある途切れた声と。

跳ねた首を見て死んだと理解できないほど、馬鹿ではなかった。



吐き気、冷や汗、体の震え。

そして荒くなった呼吸はゴブリン達の視線を奪った。


僕は咄嗟に杖を構えた。

狙いは沢山、戸惑いながらも詠唱を始めた。

無詠唱のことは頭から消えている。



「赫く轟......く炎よ。

生物を永遠......火焔地獄へ閉じ込めろ――

炎獄閃(インフェルノスパーク)


声を裏返しながらも必死に放とうとした時、ゴブリンが杖を真上に蹴り上げた。

僕が放った魔術は素直に杖の方向へと撃たれた。



必死に背中から抜いた剣を振り回して続けて、死をも覚悟した。

死のうとしていた人物の本能は生きたいと反発し、もがいていた。




その時、後ろから声が聞こえた。


「赫く轟く炎よ

生物を永遠に火焔地獄へ閉じ込めろ――

炎獄閃(インフェルノスパーク)!!」



ゴブリン達は呻きながら焦げ臭い肉の塊となった。

アイセラだ、やっと助かった。

そう思い振り返る。


その時の彼女の表情は思い出したくもなかった。

吐き気を催しながらも、僕を睨んでいた。



そんな目をする人じゃ無いはずだろ......


「助けられたんですよ、あと一歩だったんですよね」



その言葉に僕は全身が痒くなった、全身を掻きながら、僕は吐いた。

その後の出来事は全て鮮明に覚えている。



獣族の家族は、僕を仇のように見下した。

最初に動いたのは少女。


僕を突き飛ばして、のしかかった少女は僕の髪を引っ張りながら泣き叫んだ。

誰も助けようとはしなかった。


父親の死を悲しんでいる少女を止めることは出来なかったのかもしれない。

そう信じたかった。



二度と後悔しないと決めたはずの僕の足は、宿の一室に走り。

その後も出ようとはしなかった。


僕は悪く無い、そう思っても。

つい先程まで引きこもっていた僕の精神は既にズタボロ。



どう頑張っても罪悪感を取り除くことはできない。

僕が一番怖いのは人の視線だ。


少しでも間違えると責めてくる。

良い行いをしても返ってくるのは少ない、悪い行いをした時、その分返ってくるものが多い。


けれど、中途半端な善意の方が人々から沢山せめられる。

何故か?



人は生まれついてのゴミだからだ。


人が人を愛そうとしても嫌悪感を示す事がある。

でも動物を愛すときに嫌悪感を示すことは少ない。



人間は本能的に、脳を傷つける方を敵視してしまうのでは無いか?

精神的に追い詰めてくる人間は、同族の1番の敵。


そんな事を考えていたとき、寄りかかっていたドアから声がした。



「ノルディア、さっきはすみませんでした、ついかっとなって」



アイセラだ。

ここでいいよと言えるほど僕の心は綺麗じゃなかった。


「そうですか、僕のこと嫌いなんですか?」


少し間が空いた後、喋り出した。


「あの時はかっとなったって言ったじゃ無いですか......」



僕はその言い訳にとても腹が立った。


「へえ、さっきまで僕のことをゴミを見るような目で見てたのに言い訳ですか」

「もういいよ、チッ」



舌打ちをしながら彼女は去っていった。

小さな声でゴミ、そう言ったような気がした。


僕は激しく後悔しながら、ドアの前で蹲った。







もう何時間経っただろうか、窓から見える景色を見ることはできなかった。

朝だとしても暗く感じるだろう。


好きな人でも、所詮人だ。

ゴミなんだよ......



嗚咽しながら、涙を堪えていた時。

またもや足音が聞こえてきた。


またやってきたのか......



「何泣いてるんだい、好きな人と喧嘩?」


男の人の声。

誰?


「久しぶりだな、ノルディア君」



聞き覚えがある。

そうだ。




「ナダユキさん?」



その声を聞いても安堵はしなかった。

むしろ、空気がさらに澱んで見えた。


人が怖い。


「自分が悪いって思ってんじゃないか?」


荒い口調で話しかけてくる彼に鼓動が早くなる。



「思わないようにしても、思っちゃうんですよ」


もう良いだろ、帰ってくれよ。



「君は悪くない」



その言葉は脳内で何度も聞いた。

何度も再生した。


でも、魂のある言葉を聞いて、僕は涙が流れた。



「でも、よくも無い」


その言葉に少し微笑んだ。

見えないのは分かっているけど、笑っちゃった。

人が死んだのに。



「元々、君がやらなければ死んでたんだ、中途半端な善意を持ちかけたのは少し悪いかもしれないがな」



体が軽くなった。

彼の言葉に、僕はようやく安心した。

やっぱり、人間はゴミだ。

人が死んでいることに言い訳をして、前に進もうとする。





ドアを開けた彼は、泣きながら泣いていた。


でも、その向上心だけは尊敬する。



「良かった」



部屋を出れた。


この前引きこもっていた期間は4ヶ月以上だ。

停滞しているだけで人間よりも下になるが、早く外に出れた事実は。



僕を嬉しくさせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ