第14話「あの娘の為に」
こんにちは、作者の飽き性の少年です。
この物語は、前世の記憶を持つ少年ノルディアが、少し奇妙な日常と冒険をする物語の第三章です。
理不尽な孫の手様の作品、無職転生に影響を受けつつ、
自分なりの物語を書いてみました。
多少妄想全開な描写がありますが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
僕達は冒険者ギルドへ到着した。
「まだZランクのままですしね、何の依頼を受けましょうか」
「そうですね......」
フィリアを助ける為にはまずお金が必要だ。
それに加えて情報収集も同時進行で行いたい、効率よくする為にはVランクにならなければいけない。
「かと言ってもXランク以上の依頼ばかり、どうしよう」
そうか、分からないことは受付に聞けば良い。
こんな簡単の事すら忘れていた。
「あの、Zランクでも受けれる依頼って今はないんですか?」
商品が裏にあるって言うのはゲームショップの基本だ。
大抵聞いたら出してくれるのがほとんど、コミュ障の為にも全部出してて欲しいんだが......
「そうですね、今表に出されているので全部です」
「そうですか......」
裏にもないらしい、まあコンビニにも裏とか無いしな。
ゲームショップと類推した僕が馬鹿だった。
「一応パーティー名を伺っても宜しいですか?」
「えっと」
あぁダメだ、久しぶりすぎて覚えていない。
どうしよう、人と話すにはあらかじめ話す内容決めとかないと喋られないんだよ。
「フェイテッドクロニクルズです」
固まった僕の為にアイセラが言ってくれた、さすが僕らのアイセラちゃん!
そこに痺れる、憧れる!
「フェイテッドクロニクルズって、もしかして屋敷の掃除依頼をしましたか?」
なんだ?
魔人の斧を見つけたから資格剥奪でもされるんだろうか。
そうなったら金を稼ぐ方法がない。
今すぐ誤魔化さないと
「はい、そうです」
さすが僕らのアイセラちゃん、嘘を吐かない正直者なんだね!
僕達の冒険者生活は早速幕を閉じるのかもしれない。
「あそこの依頼は生きて帰って来れただけでも奇跡です」
でしょうね、そんな事なら先に言って欲しかったよ。
あれのせいでフィリアが消えたんだ。
「なのであなた達の冒険者ランクはVランクに昇格されます」
よかった、冒険者生活はこれからも続くらしい。
それにしても
「Vランクまで昇格、魔物討伐とかを適当に受けましょうか」
魔物討伐の依頼料は最低でも4000月、Vランクはそこまで魔物も強くないのでお金稼ぎには丁度良い。
Vランクパーティーが多いのもその為だろう。
そして屋敷の依頼、その言葉が出てから視線がすごい。
ぼっちで他人の喋り方や目線を観察していた僕には隠せると思わない方がいい。
......悲しくなんかねえよ!
「どうしたんですか?」
いかんいかん、一人の世界に入りすぎてしまった。
「何でもありません、それよりこの依頼を受けましょうか」
僕が手にしたのは石の鍛冶場周辺にて最近活発になっているゴブリンの討伐依頼。
報酬は6000月、Vランクの中ではそこそこの依頼なのでかなり有難い。
ということで、僕達は早速依頼を受けて討伐をしに向かった。
昨日から歩き回っているのでご飯休憩を挟もうかと思ったが、善は急げとも言うし。
ダブルブッキングはなるべく避けたいからな。
「やっと......着きましたか......」
石の鍛冶場周辺とだけ記載されていたので転移魔術を使わないで歩いてきた、割と近くにあると思ったのだが。
案外遠いところに住処があった。
この世界での距離感がバグっているのか、あの依頼主の頭がバグってるのか。
まあ何はともあれ、ゴブリン退治開始だ!
――
「こっちです」
ゴブリンを倒すだけだが、なるべく気付かれないように進んでいくことにした。
今日だけで依頼を3つ受けるつもりだからな。
この世界でのゴブリンは住処を作れるほど頭がいいが、人間程の知能はあるのだろうか。
もし喋れるなら尋問でもしたい。
「作戦はどうしましょうか、僕が囮になってアイセラと僕が両サイドからフレイムバーストとか」
「それではノルディアさんが危険です、私が囮になります!」
僕は人差し指を口の前に置き、静かにしろとジェスチャーした。
彼女は口を抑えながら怒っているように目線を向けてくる。
「仕方ありません、ここはアイセラが中の様子を見て、僕が全てを焼き払います」
尋問もしたかったが、彼女の安全の為にもこれが一番だ。
そうして討伐作戦は開始した――
まぁ、僕の役目は炎獄閃を放つだけ。
それまではアイセラを待つしかないのだ。
ファイヤーシルフが上がったら合図だ。
それにしても、5分も経った。
様子を見るだけのはずだが、抜け出すのに時間が掛かってる?
......!!
まさか、アイセラがゴブリンに襲われて!!
今すぐ見に行かないと、ただ助けに行くだけ、別に襲われてる姿を目に焼き付けようとかそういう訳じゃない。
うんうん、仕方がない。
うへ......
そうして僕はアイセラの元へ向かった、彼女がいるのは住処の入り口、その真上だ。
頭蓋骨のような形なので、目の部分から中の状況を見て教えてくれるはずだった。
「・・・―――・・・」
喋ってるのか?
ゴブリン語なのか魔物語なのか。
そんなことはいい。
「ゴーレムよ、我が地上の民を
全てから守り、全てから遠ざけよ。
グラウンドリフト――」
よし、オカ、じゃなくて。
アイセラを見に行こう。
まあ登ってみると案の定アイセラはいない、重要なのはどこに行ったかだ。
中の様子を見て侵入しよう。
「・・――・!!」
危ない、見つかるところだった。
先程外にいたゴブリンが慌てて中に入って行った、見るなら今か?
そして僕は中を覗いた。
「アイススピア!」
分かっていたが、案の定彼女が暴れていた。
奥に誰かが縛られてる?
ゴブリン全員が彼女によって殺された。
「何してるんですか」
驚いた彼女は落ち込みながら口を開いた。
「だって、女の子が」
アイセラが指を刺したのは縛られている小さな女の子だった。
なんというか、かなりボロボロだ。
ゴブリン達にサンドバッグにされていたのか、僕が見ても作戦を中止してしまうだろう。
彼女は悪いことをした訳じゃない、良いことをした。
「助けてあげたんですね、ありがとうございます」
明らかに照れてそうだがそっぽを向いた。
褒められることに慣れていないのだろうか。
「君、大丈夫?」
待て。
耳の場所がおかしい、髪についている。
まさか、獣族!!
もふもふな体、長い尻尾、そして牙!
このままじゃ特殊性癖に目覚めそうだ……
ケモナーの道を切り開いてしまう。
「君、なんでゴブリンに?」
困惑した表情でこちらの顔を真っ直ぐ見てくる。
どうしたものか
「カイニヤ、シナリアハ?」
アイセラが聞いたことのない言語で喋り出した。
人間語で喋っていた、今日は思考が鈍るな。
「家族と遊んでいたらゴブリンが来て、全員バラバラに連れてかれたそうです」
全員バラバラ、てことはまだゴブリンが沢山。
「助けますか?」
「はい、もちろん助けます」
どちらにしろゴブリン駆除しないと行けない。
もしかしたらフィリアについて知ってることがあるかも知れないし、助ける価値はある。
「一度ご飯を食べませんか、この子もお腹が空いていそうです」
「そうですね、ゴブリンの耳を集めたら行きましょうか」
耳の数は26、依頼料と合わせたら8600月。
これを3回ほど繰り返したら次の街にいけるだろう。
――
「すみません、この獣肉定食3つ下さい」
定食、もしかしたら米もついてくるかも知れない。
何年ぶりだろう、パン派ではあるが日本人だ、米も恋しい。
「さて、これからについて作戦会議をしましょう」
「おー!」
「今回の議題は獣族の家族全員の救出についてです」
家族全員を助けるのだとしたら、最低でも2つの住処に行くことになる。
もしも全ての住処が同じゴブリンの数なら16000稼げるだろう。
「家族構成を聞いてみてください」
「ココフエラ、マラニヤ?」
「マヤ、パヤ、イヤニャ」
コミケにいるコスプレイヤーとは格が違う、異世界補正で顔面偏差値も上がっているから似ているんだろう。
いや、本物か。
「母、父、妹の四人家族らしいです」
と言うことは24000月も稼げる、当分持つし全員助けよう。
「一日に一人ずつ助けましょう」
「何故ですか?」
「ゴブリン討伐依頼と共に助けた方が効率よく金を稼げます」
彼女の目つきが変わった。
「分かりました、でも何かあったら作戦は無視します」
フィリアの為でもある、僕は自分に利益がなければ人を助けない。
そこまでお人好しじゃない。
「お待たせしました」
ようやく定食が届いた。
米は......!
「はぁ」
「このご飯、嫌ですか?」
米はやはりついてなかった。
空前絶後の期待外れだよ……
そんな僕とは裏腹に、少女は口に頬張りながら嬉しそうな表情をしている。
「ここついてますよ」
少女の口の汚れを拭く彼女は母親みたいだった。
「「ごちそうさまでした」」
食べ終わった僕達は宿に戻って明日まで休もうとした。
「マニヤタサナイ?」
アイセラの足が止まった。
「マニヤタサナイ、タシタタサル」
そう返事した彼女に、少女は泣き出してしまった。
少女に作戦を伝えるのを忘れていた。
「やっぱり今日行きませんか?」
「いや、明日に行きます」
アイセラは震えながらも少女を無視した。
冷たい風が僕達に吹いた。
世界から非難されているように感じた。
これも、あの娘の為なんだ。




