第13話「アイセラ・グレイフォード」
こんにちは、作者の飽き性の少年です。
この物語は、前世の記憶を持つ少年ノルディアが、少し奇妙な日常と冒険をする物語の第二章です。
理不尽な孫の手様の作品、無職転生に影響を受けつつ、
自分なりの物語を書いてみました。
多少妄想全開な描写がありますが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
目が覚めたら、どこかへ転移していた。
ここはどこだろう。
困惑しながらも辺りを見回すと、ノルディアさんが立っていた。
私の目に映った彼の背中は少し頼りなかった。
そうして彼は同じく転移してきた病院から離れた場所に位置する小屋に入って行った。
私も腹の筋肉が所々千切れていたので病院の一室を借り、3日ほど休息を取った。
倦怠感もほとんど無くなり、久しぶりにドアを開けた瞬間だった。
冷たい空気が全身を震わせる。
「知ってるか?俺達を転移させたガキが引きこもったらしいぜ」
出て3秒で思考が停止した。
ノルディアさんが……引きこもった?
今まで死にそうになっても私を守ってくれたあの人が、いきなり?
引きこもり。
その単語には想い出が詰まっていて、その裏腹にトラウマを抱いていた。
私には兄がいた。
腹違いの兄だ。
髪や顔立ちは似なくとも趣味や性格が合う、良き友達みたいな関係。
二人でよく遊んでいた。
けれど、私が学校に入学する3ヶ月前に
兄は引きこもった。
その時は理由なんて分からなかった、後に見た兄の日記にはいじめられていたと書いていた。
あんなに面倒見の良かった兄が本当にいじめられるのか。
そんなことは本人に聞かなくても、見慣れた兄の文字を見て、すぐに理解した。
震えてなどいない、真っ直ぐな文字だった。
締め付けられる想いと同時に学校が怖くなった。
あんなに仲の良かった友人達も、こんな一面生を持っているのかも知れない。
恐怖は思い出なんかぶち壊した。
友情よりも恐怖の方が圧倒的に強かったのだ。
そうして兄は何ヶ月も引きこもった。
家に腐敗臭が蔓延している事に気づいた親が全ての部屋を探して、原因を見つけようとしていた。
勢いよくドアを開けた時には彼の首は吊られていた。
幼いながらも他殺ではなく自殺とすぐに分かった。
私はそれほど馬鹿ではなかった。
でも分かるくらいなら馬鹿の方が良かった。
誰も恨めない、誰に殺されたわけでもないからだ。
無理やり奪われた訳でもなく、本人が心に決めた人生の終わり。
その時机に日記を見つけた。
自殺理由と私達へ一言ずつメッセージが書いてあった。
自殺理由はさっきと同じいじめられた事と、いつまでも出てこられない自分の弱さを痛感しての事らしい。
そうして端のメッセージにはこう書いてあった。
父さんへ、いつまでも僕に話しかけにきてくれてありがとう。
母さんへ、毎日ご飯を持ってきてくれてありがとう。
そしてアイセラへ、僕の夢を叶えてほしい。
そう手記されていた。
家族は兄の夢にピンときていない。
でも自分だけは分かった、小さい頃からずっと話していたのだ。
兄は戦うことに憧れていた、かっこいい魔術を使って戦いたいと。
冒険者になりたいと。
後日、学校には行きたくないと家族へ言ったら、兄のこともあってかすぐに了承してくれた。
学校に行かない間、私は魔術と世界地図を覚えるのに全ての時間を使い。
12歳になった夜、初めて冒険者ギルドに向かった。
でも、どこのパーティも未成年である私を入れてはくれなかった。
子供に無理させれない
実力者だけで組みたい
ガキは寝てろ
そんな罵詈雑言を浴びさせられたり、バレバレな嘘を吐かれて何ヶ月も彷徨った。
ギルドは楽しそうで、とても騒がしいのに。
いつも私の周りだけが静かだった。
何日も依頼をできていないので、残高は残り20月、これ以上は無理だ。
そう思った時に、声が聞こえた。
「それじゃあ登録しますか」
何度も聞いたのに一度も私に対して言われたことはなかった。
パーティ結成の確認だった。
「パーティーメンバーは集まりましたか?」
周りの人はみんなパーティを作っているのに、私だけが誰からも必要とされない。
そんなこと前から分かっていたのに
......なんだろう、もう嫌だ。
「はい、パーティ名はフェイテッドクロ......」
私よりも幼く、だけど私よりも知的な声が聞こえた。
見たところ成人一人と未成年二人、ここなら入れるかもしれない。
今ここで話しかけないとどちらにしろ死んでしまう。
断られてもいい。
そう思って声をかけた。
久しぶりに小走りをした、人と話す方法も忘れかけていた。
どうやって話すんだっけ。
何故か言葉が喉に詰まった。
「あ......あの、私も入れてくれませんか......」
泣きそうになるのを耐えながら返事を待った。
何も返ってこなかった。
怖い、なんで返してくれないの......
最後の確認をした。
「いいですか?」
少し考えて、彼は笑顔で返事をしてくれた。
「いいですよ」
少し心がざわめいたのは何故だろう。
ざわめきの原因を探っていた時、奥から物凄く強い視線を感じた。
睨みを効かした女の子だった。
綺麗な黒髪で、長髪の女の子。
それに対して私は......
お風呂も入れてない、みっともないな
私。
自己嫌悪に浸っていた時、彼が口を開いた。
「パーティーメンバーは4人です。ノルディアとフィリアとナダユキと、名前は何ですか?」
そうだった、名乗るのを忘れていた。
「......アイセラです」
そうして彼は自信満々に言った。
「この4人のパーティー名は、フェイテッドクロニクルズです――」
その言葉には少し不安が混ざっていた。
「かしこまりました、それではZランクスタートとなります」
そうして、私は初めてパーティに入れてもらった。
兄の夢を果たせた。
折角なら、最後までやり遂げてみよう。
Aランク冒険者に――
――
私達は宿に泊まることなった。
黒髪の少女と相部屋、少し怖い。
彼女は一言も喋らなかった、たまに希望と哀愁に満ち溢れた目をこちらへ向けるだけ。
けれどその目は敵視ではなく、私を見定めているようだった。
それでその日は終わった。
朝起きた時には彼女が部屋を片付けてくれていた。
申し訳ない気持ちはありながらも、一緒にギルドへ向かった。
その後別部屋の彼らと合流して、朝ごはんを食べた後に依頼を受ける事になった。
討伐依頼はVランクからだったので、それまで掃除などの依頼を受けることにした。
その中でも一番高い依頼が50000月。
明らかにおかしい、ただの掃除依頼でこんなに高単価なんて......
止める間もなく、彼は依頼を受けてしまった。
そうして私達はある街の外れに到着した。
全体的に暗い雰囲気の屋敷、そしてどこからか魔力が漏れ出ているような感覚に陥る。
けれど、そんな異様な空気について指摘できる人間関係を私はまだ築けなかった。
屋敷の中に入ると、彼は高価そうな杖を取り出し。
詠唱をした。
「ファイヤーシルフ」
彼はその一言だけ言った。
その瞬間、彼の杖からはエネルギーが濃縮された蒼炎を放っていた。
彼の目は、自信ではなく困惑が主人公のように陣取っていた。
詠唱前の確認をするつもりだったんだろう。
......てことは、"無詠唱"?
「今、略称しませんでしたか?」
数秒考えた彼は、口を開こうとした。
その瞬間、足裏が響く。
運動神経のない私はバランスを取ることに集中しないと転ぶ。
それくらい強い振動だった。
そして恐らく最年長の彼が口を開いた。
「何かが破壊される音......?」
「3人ともこちらへ来てください、転移します!」
彼が呟く......
何が来るか分からないこの状況のせいか、胸がドキドキした。
彼は転移を発動しない、そもそも転移魔術は百人に一人程しか使えない珍しい魔術。
生まれた時に与えられる才能。
それに加えて転移魔術を使えることに気づく、そして転移魔術に必要な魔力を要する。
何者か分からない、この破壊音の正体に聞こえるようわざと言ったのか。
それは分からない。
それからあまり記憶がない。
部屋中に何かがこびり付いているのと、体が少し痺れていたのを覚えている。
黒髪の少女が、出会った頃から所持していた剣を、折れた剣を抱いて泣いていた。
その時、後ろに下がろうとして足が何かにぶつかった。
頭......!?
いや、作り物だ。
「皆さん、これなんですかね?」
作り物の頭を手に取った瞬間、手のひらが痺れた気がする。
「その頭、見せてもらえませんか?」
彼が私の手から頭を取った、取る時に当たった手が暖かかったのを覚えている。
何かを見つけたような顔をした後、彼が突然口を開いた。
「アイセラさん、ドリルって魔術で作れますか?」
「はい、作れます」
魔術を使うのも久しぶりだった、誰にも必要とされなかったから。
自分の愚かさに絶望しながらも、詠唱を始めた。
「ゴーレムよ、我が地上の民に
大地の導きを与え。
全てを鋼削せよ!!
ドリルキャノン―――」
頭は覚えていなくても、体はしっかりと魔力の形を覚えていた。
一人きりで勉強していたあの時は、体が冷たかった。
けれど今は少し暖かい気がする。
そうしてドリルを放った壁の奥に、空間があった。
その先には階段が下までずっと続いている。
「ありがとうございます、それじゃあここを探索しましょう。」
黒髪の少女、フィリアさんを置いて隠し部屋を進んでいく。
そうして何かを思い出した、依頼内容って......
「あの、私達掃除の依頼してるのに入っても大丈夫なんですかね?」
その時、ようやく扉を見つけた。
硬い扉を武術家さんが無理やり開けて、光魔術を発動して辺りを見渡した。
本棚がずらりと並んでいて、異様な雰囲気が漂っている。
武術家さんが本を取った瞬間、扉が現れた。
私はすぐに理解した、というよりも。
危険、その二文字が頭に流れ込んできた――
段々と息が荒くなっていく。
早くここから逃げ出したい、怖い。
けれど、彼は私の思いを無視して歩いた。
まるで扉の奥の"何か"が彼を誘っているようだった。
扉が開いた時の感想は、禁忌。
その言葉を体現したような存在が、私を嘲笑っていた。
恐怖に駆られていた時、視界がごちゃついた。
全身が震える思い。
先ほどの頭がついた作り物が動いていた、私は構えよりも困惑が先に来てしまった。
それにより私は捕まってしまった。
咄嗟に声を上げた。
怖い。
目を瞑ってもがく。
私を掴む手が弱くなり、少し目を開いた。
剣で、作り物を斬る彼の姿がぼんやりと見えた。
その姿は、まるで白馬の王子様みたいだった。
私の元へ滑り込んできて、私が怪我しないよう守ってくれる。
「大丈夫でしたか?」
その言葉に私は少し恥ずかしくなった、けれど安心もあった。
私を抱きながらこの場を離れようとする彼の行動と言葉に惚れていた。
その後は彼の守りもあって、私は無傷で済んで。
二人で宿に戻った時、想いを伝えるのを我慢することが限界になっていった。
ずっと心の中にしまっていたんだ、良いよね。
私は彼に頭を乗せた。
彼は戸惑いながらもこちらを見てくれた。
私は彼に口付けを求めてみる。
その時、突然ドアが開いて、男の人がこう話した。
私たちのパーティーメンバーが暴れていると
私はパーティーメンバーの心配よりも、彼との口付けが保留になる事に落ち込んだ。
でも彼は、落ち込んでいる私を見てか。
振り向いてキスをしてくれた。
恥じらいはあったけれど、とても嬉しかった。
その後も化け物に殺されかけた、それでも彼は私を守ってくれた。
そんな彼が引きこもった事に、私は落胆よりも助ける事を心に決めた。
――
手始めに、母が兄にしていたようにご飯を運んだ。
扉を開いて父のように話しかけようと思ったけれど、その勇気はなかった。
怪我をしてしまったナダユキさんの看病もしないといけなかったので、段々とご飯を運べる回数が少なくなって行った。
彼が一生出てこない、そう思い一人で泣いた。
泣いた次の朝洗濯をしに外を歩いていたら、彼を見つけた。
私の知っている彼の表情では無い。
蹲りながら、暗い表情をしている。
彼は絶望していても、私は嬉しかった。
またこうして会える事さえが私にとっては救いだったから。
「ノルディアさん?」
彼が口を開く前に、私は彼に駆け寄った、私の周りは暖かかった、でも彼の体は冷えていた。
心も、体も。
だから、温めないとって思っちゃった。
「ありがとう、アイセラ」
彼は初めて呼び捨てで呼んでくれた。
その姿は兄に似ている。
でも、一つだけが違かった。
兄は私に会ってはくれなかった。
怒ってる訳じゃなかった、でも私は会いたかった。
その願いを兄は叶えてくれない。
兄とは違う、彼は私の想いに応えてくれた。
やっぱり私
好きなんだ。
第二章最終回でした!




