土産と鼻歌 【月夜譚No.383】
帰り道、右手に持ったケーキの箱に心が弾む。白が基調の小さな花柄が散ったデザインは、彼女が幼い頃から慣れ親しんだものだ。
誕生日や記念日は勿論、何か特別なことがあった日や気分を上げたい時には、この店のケーキを食べるのが通例だった。他の店のものも食べることはあるが、やはりどうしてもここに戻ってきてしまう。
ほど良い甘さのクリームと甘酸っぱいフルーツが載ったショートケーキ。少しビターな味わいのチョコレートケーキ。濃厚なカスタードクリームとさくさくと香ばしい生地、色とりどりの果物が彩るフルーツタルト。
どれが一番かと訊かれたら本気で困るくらい、どのケーキも大好きだ。
鼻歌を口遊みながら、家で待っている彼を想う。彼はどのケーキが好きだと言うだろうか。
温かな笑顔と驚く様子を想像して口元を弛め、彼女は家路を急いだ。




