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【完結済み】田中太朗のスローライフ〜普通な男の転移生活〜  作者: 三笠 どら
第6章 本格物作り【急】

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第53話 絆

第6章の始まりです。

【序】【破】と続いた物作り編も遂にラストの【急】へ。

もちろんこの章が終わっても物作りは続きますがこの急では怒涛の展開を迎えます。

さあ!まずは続きから!

いったいリュウの身になにがあったのか、

どんな展開が待ち受けているのか楽しみです!

 キッチンが完成し、持てる食材をふんだんに使って趣味の料理に没頭した満足感も束の間、以前私にこの地で生きていく決断をさせた特大の雷雨がまた私を襲ってきた。

 そんな中以前とは大きく違いしっかりと住居として建てた家を持った私は、雨漏りも無く、風が打ち付けても屋根が落ちてくるなんてことも無く。あの転移してすぐの雷雨を思い出していた。

 すると、玄関の戸板が風で強く打ち付けられる。あの時の不安が蘇るが、激しく戸板を打ち付けているのは風ではなく加工士のリュウであった。私はリュウを家に招き入れた。

「落ち着いたかな?」

「・・・うん。」

 大雨でビショビショになりガクガク震えていたリュウにタオルや着替え、暖かいお茶などを用意しとりあえず座ることに。シルクも身体を寄せ、リュウを暖めるのに一役買ってくれている。

「あれ、そういえば一人で来たの?」

「・・・うん。行商に乗せてもらって途中まで来て、それから歩いて。」

「歩いてきたの!?どこから!?というかいつから!?」

「街を出たのは4日前・・・です。歩いたのは今日の朝から。」

 ほぼ丸1日歩いてきたとのこと。どうしてだろうと訪ねようとしたところでまた激しく戸板が叩かれる。

『ドンドンドンドン!!』

「タロウさん!ユウキッス!!」

 今度はユウキがやってきた。先程のデジャブとも思えるようにタオルやお茶を用意し、座る。リュウは気まずそうに、ユウキはリュウを睨んでいる。

「で、ユウキくんは恐らくだけどリュウくんの件だよね?」

「あ、はい。そうッス。」

「・・・・。」

「おいリュウ。おやっさん大慌だぞ。何も言わずに出ていきやがって。おやっさんがタロウさんのとこも見てこいって言うから来たら本当にいるし。」

「・・・手紙置いといた。」

「だからそれだけじゃ分かんねぇって話だよ。なんだよ街を出るって。」

 家出かな。リュウは書き置きだけ残して出てきたんだろう。 それをユウキが探しに来たと。

「ユウキくん。とりあえずリュウくんの話を聞こうね。リュウくん。桂屋さんにもお世話になったんだろうし、ユウキくんもこうやって探しに来てくれてるんだし、ゆっくりでいいから話してくれる?」

「・・・はい。」

 要約すると、街でいつも仕事をしてる業者と揉めたとのこと。相手のミスから始まったがあることない事言われ、3日と待たず悪評が広がり新規の受注が止まった。懇意にしている業者の現場でもその他の業者と顔を合わせるのは必然のようで生きづらいという。よくある話のように思えるが世話になっている身近な人のそういう話はどうしてもつらいものがある。

「なるほど。そんなことがあったんだね。」

「おやっさんにとっちめて貰えばいいじゃんか。」

「・・・いやだ。」

「なんでだよ!」

「・・・これ以上は迷惑がかかる。」

 私はハッとした。リュウはこの状況で逃げてきた訳ではなくシゲノブに害が及ばないようにその場を離れたのだ。

「センタープレスト以外出たことがないから、だから、あの・・・ごめんなさい。」

 そう言って私に頭を下げるリュウ。突然訪れたことを謝っているのだろう。

「とりあえず今日は2人とも泊まっていきなよ。もう夜だし雨がいつ止むかもわからないしさ。」

「・・・ありがとう、ございます。」

「あ、俺は雨上がったら帰るッス。報告とかもあるんで。すんませんッスけどリュウのことお願いします。」

 このあと2人には出来合いのものでごめんね。と作り置きしている豚しゃぶと一緒にコンソメスープを出したのだが、コンソメスープを食べた2人は目を見開きながらおかわりがないことに酷く残念がっていた。

 翌朝雨も上がりサラッとした陽気さが戻った中、シゲノブを連れユウキが戻ってきた。リュウはシルクの影に隠れている。どうやら怒られると思っているらしい。

「おう、タロウ。」

「こんにちは桂屋さん。」

「リュウのやつが押しかけちまったみたいですまねぇな。」

「いえ、とんでもないです。」

「おい!リュウ!ちょっとこっちこい!!」

 私に軽く挨拶と謝罪を済ませ大声でリュウを呼ぶシゲノブ。

「お前黙って出ていくってのはどういう了見だ?あ?」

「・・・。」

「別に出てったことを言ってんじゃねぇよ?心配かけんなっつってんだよ。」

「・・・ごめんなさい。」

「仕事のことは街の連中から聞いた。災難だったな。クロードやほかの連中もアイツらとは仕事しねぇとか言い出してるけどよ、そういうこっちゃねぇんだろ?」

「・・・うん。」

 そこからのシゲノブは本当の父親のように、厳しく優しくリュウの話を聞いていた。いい信頼関係が築けているようだな。羨ましい。私はその場を離れ昼食の準備に取り掛かった。


シゲノブとリュウのやり取りはなんとも心温まるものがありますね。

次回は話が急展開に!

乞うご期待です!

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