第9話 太朗の決意
不安を煽る天候という緊急事態に備え準備をした普通の人間・田中太朗。
待ち受ける悪天候にどう対処し、どんな結末が待っているのか。
第1章最終話となります。
ご期待ください!
「どうしてこうなった・・・。」
服はびしょ濡れ、保存食も全部びしょ濡れ。各器にはしっかりと水が溜まっている。湿った木苺らしきなにかをひとつつまみながら、裸で濡れたベンチに座っている。空は快晴。眼前には簡易物干しで風に揺られている服がなびいている。
「ふぅ。ひとまず嵐は去ったけど。」
裸で呆然としている私がなぜこうなったのか。テントを用意し、全てテントの中へ避難させ迫り来る雷雨に備え万全を期していたはず。時間は体感30分ほど遡る。
まず襲ってきたのは雷鳴。
『ゴロゴロガッシャーーーーン』
森にでも落ちたんではないかと思う大きな音と稲光。続いて襲い来る大粒の巨大な雨粒が大きな葉っぱの屋根を叩く。テントの外は既に霧のように雨粒で真っ白だ。そんなことを考えていると頭に水滴が落ちてきた。雨漏りか、まあ葉っぱだしな。とか思っていたのも束の間どんどん雨漏りが増えてくる。
「葉っぱじゃ守りきれなかったかな?でもこの豪雨なら防いでるほうか。」
これがフラグとなったのか、突然大きな音と共になにかに上から押しつぶされる。
「えっ!?なに!?怪獣!?」
ついに異世界の化け物がやってきたのかと思わせる衝撃が背中に走るが、謎の衝撃は1度のみ。どうやら屋根が崩壊し、落ちてきた模様。
「水が溜まって落ちたのか・・・。」
テントはもう見る影もなく私はただただ大雨に肌を打たれせめてもの抵抗と大きな葉っぱで身を包みながら座り込むしかなかった。自分の周りに雷が落ちなかったのが救いか。とほほである。
テントを破壊し、私の2日間を無にした大雨も過ぎ去り晴れ模様がかえってきた。通り雨であったことに安心しつつ、朝洗って乾かしさっぱりした服をもう一度脱ぐ。今日はほとんど裸で過ごしているな。と愚痴をこぼしながら乾かす方法を考える。
屋根を作るために持ってきた大木から長めに3本細めに切り出す。そのうち2本をぬかるんだ地面に刺し、先端を二股に加工する。二股に加工した先端と先端に、もう1本の長い木を掛け物干し竿とする。ここで生活の知恵先生が軽快な効果音とともにお知らせを伝えてくる。
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生活の知恵
木の物干し竿:
木でできた物干し竿。
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テントはテントとしての役割を果たしてなかったから生活の知恵が鳴らなかったのだろう。すぐ壊れたし。なお、テントの支柱としていた5本の木も全て倒壊していた。私はテントの残骸を眺めながらベンチに腰掛けた。冷たい。
こうして今に至るわけだ。そして考える。なぜテントとして機能しなかったのか、何が悪かったのか。
「まず土台はしっかりしてなかったよな。」
物干し竿を立てる時に思ったのはしっかり地面に差し込むことが出来ていたかどうかだった。そもそも支柱と名付けたくせに軽くグリグリして立たせただけだった。物干し竿のときは地面がぬかるんでいて安定するまで指すことが出来たのだ。 次はやはりつたの支えだろう。水が貯まれば重くなるなんて当たり前の事だった。今になって考えれば重さで落ちるのも理解できる。支えのつたと結んでいなかったのもよくなかったよな。傘で考えれば関節部分に留め具がしてある。
「この通り雨はよく降るのかな。」
今後のことも考えるとよく降るなら早急に対応しなければいけない。
毎度毎度石の器以外ダメになるのはなかなかにショックが大きい。
さっきの雨で川が氾濫してたりとか魚が居なくなったりしてなかったらいいけどな。木が濡れてしまったのは大丈夫だろうか。雨の後の木って火は着くのかな。
「当面は生活の確保だな。」
今回の雨で冷静になり考えも引き締まった。ここを無人島だと考えよう。街は一旦忘れよう。まずは住居だな。正しくやれば生活の知恵先生が教えてくれる。土台は出来たんだから正しくすれば屋根もできるはずだ。忘れていた。
「勇者じゃない。田中太朗の名前そのものの至って普通の人間じゃないか。持てる力を最大限に使って地に足をつけて生きていこう。」
果たして今後太朗に普通に幸福は訪れるのか、普通ではない試練がまっているのか。転移者田中太朗、たったひとりの転移生活再スタートの幕開けだ。
第1章 完
第9話をもって、第1章が完結しました。
これまでどこかのんきにふわふわと過ごしていた太朗ですが、ついに現実を見据え、地に足をつけて生きていく決意を固めました。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
第2章からは生活基盤を整え、より一層「スローライフ」に磨きをかけていきます。
太朗とともに、作者も一緒に成長しながら物語を紡いでいきたいと思います。
今後とも暖かく見守っていただければ嬉しいです!
引き続きよろしくお願いします!




