野良猫の事とか別にどうでもいい、自分が生きるので手一杯だし。
「にゃーん。」
「にゃーんじゃねぇんだよ。にゃーんじゃ。」
大量のトミヨニの頭が手に入ったので、すべてコンポスト行きにした訳だが相変わらずあの野良猫がやってくる。もちろん、防護用のネットは十全に機能しているためコンポストが荒らされる事は無い訳だが…。あの最後の攻防以来、一日に一回、つまり裏の家の餌やりの時ぐらいにしかこなかった野良だったが、日に何度か訪ねてくるようになった。
ハーブを荒らさたり、庭に穴を掘られたり、糞害が起きたりする訳ではないのだが…。コンポストのために張った防護ネットを「登れるもの」だと学習したために、家の屋根に登るためにこの防護ネットを巡回ルートの一部に組み入れたようだ。なんてやつだ。だから、時たまこうして、裏庭で作業をしている時に、出くわすことになるのだが…。
「なーん。」
まぁ、こうやってトミヨニの頭とサクラサーモンモドキのアラをコンポストに入れたばかりだと、流石に隠しきれない。匂いを嗅ぎつけた野良は、しっかりと防護ネットに張り付いて、ネット越しにコンポストを睨んでいる。もう入れた後だから、直接狙われる事はないだろうが、ネットに張り付いて剥がれる様子が無い。この間は大人しく退散したのに、今日はしつこい。
このまま放置しておいてもいいが、正直うるさい。
「んななー!!」
「諦めろ。」
「んなー!!」
珍しいな。これほど諦めが悪いだなんて。力ずくで剥がすことも出来なくもないが…。できれば直接は触りたくない。とりあえず水でもぶっかけるか?この間やった時は効果なかったから、期待薄なんだよな。どうする。
いくらか逡巡していると、やがて、そろそろとネットを降りてきてこちらに近づいてくる。おっ、やんのか?と思っていたのだが、こちらをじっと見つめてくる。なんだよ、そんなに見つめられても、魚の頭はやれないぞ?個人的には、中途半端な野良猫への餌付けはNG行為だと思っているからな。
ずーっと、野良猫と私との睨み合いが続く。数分はそうしていただろうか?やがて野良猫は、そろそろと私に近づいてきて、額をこすりつけてくる。
「にゃう。」
「駄目だ。」
泣き落としも通じないぞ。諦めろ。
「にゃう。」
「駄目だ。」
「にゃう。」
「…。」
「にゃぁん。」
ぐぅ、卑怯だぞ。蹴り飛ばせないことをいいことに、まとわりついてくるのは。しっぽをぺしぺしと、私の足に叩きつけたり、柔らかな猫パンチをジーンズにお見舞いされたりするが、私の決心は揺るがない。駄目だ。
「…にゃぁ。」
だが、やがて、これはおねだりではなくて、何かを主張したいのではないかという風に思い始める。よくよく考えたら、他所で迷惑をかけまくってる野良猫にしては、主張が穏やかが過ぎる。本当はもっと図々しいはずだ。つまり、その図々しさを引っ込めてでも、なんらかの伝えたいメッセージがある?考えすぎか?
「(カプッ)」
野良猫がジーンズの端を噛んで、引っ張り始める。『穴を開けるな』という気持ちと、『もしかして本当に?』という気持ちが交差する。…関わりたくないなぁと思う気持ちもあるけれども、どうするべきかね。
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結局根負けして、野良猫がジーンズを引っ張った方向に歩き始める。このまま放置しておくと、ジーンズが穴だらけになりそうだったし、このまま部屋に戻るのも結局、後悔してしまいそうだ。決して私に動物愛護の精神がある訳ではない。
野良猫の先導に任せて、後をついていく。幸い、人間が通れる道を進んでくれているので助かる。やがて家からそう遠くない、廃屋に案内される。私は所有者を知らないが、長い事人の気配がない倉庫みたいな建物だ。敷地は草がぼーぼーだし、まじで掘っ立て小屋で、屋根も壁もポリカーボネートとトタンの波板というのだろうか?全部がそれで出来ているといっても過言ではない。
大分昔からあるはずだ。なんならたぶん私が物心ついた時から建っている。色付きのポリカなので中身が見えないし、溜まった苔から草はえてくるぐらいに、ずっと放ったらかしにされているはずだ。トタンはどれもこれもが錆びている。ようするにずーっと、荒れたまま放置されている。
そういえばたまに、地面に放置されているポリカーボネートとトタンを、ベコベコ言わせながら、野良猫が歩いている所をみるな。住処にしている可能性がある。
で、だ。
「みー。みー。」
入らなくても分かる。
「みー。みー。」
建屋の前まで近づかないとわからないぐらいの小さな声だが、確かに聞こえる。そういえば、この間、野良猫が一匹、カラスにやられたとか言ってなかったか?確かこの近くだったはずだ。…不法侵入になるだろうが、もとからこの小屋には扉がない。私はそのまま雑草やら、放置されたガラクタやらを蹴り飛ばして、小屋の中に侵入する。
悪臭が溢れて、ゴミとガラクタだらけの小屋の中に、これまたゴミなのか泥なのかよくわからん状態になったものがうごめいている。私はそれを確認した為、すみやかに、バケツと軍手を取りに家に戻ることにした。今走らなくていつ走る。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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