何故人々は、あんな苦い水を好むのか。別にいいけどさ。飲むだけなら。
氷も含むものの、バケツ3杯はあったはずのトミヨニだが、最後には一匹も残らなかった。砂塚・神埼・橘の女性陣によって、見事に食い尽くされてしまった訳だが。今回はお土産用のお持ち帰りタッパーもなかったし、まぁ中途半端に残るよりは良いか。
「あ、すいません。橘さん。持ち帰り用の袋もらえますか?トミヨニの頭を持ち帰りたくて。」
「…頭を?」
「えぇ、頭を。」
「…使い道をお伺いしても?」
「コンポストで長い時間をかければ、魔石だけ取り出せるので。」
「…えっ。そんな方法が?」
「ま、集めたところでお金にはならないでしょうけど、捨てるよりかは。」
「まぁ、そういうことなら。」
そういう訳で、本来は氷で締めたトミヨニや、湯がいたアシツキノリモドキを持ち帰るための、ビニール袋を分けてもらった。その中に、トミヨニの頭をギュウギュウ詰めにして口を閉じていく。これだけみれば、明らかに正気度を疑う光景である。
「まぁ、知らない人が見たら変質者待ったなしですね。」
「…否定はしないが、もっと言い方があるだろう。」
見事、トミヨニだけで山のようにあったビールを全部飲み干した酒クズが、私のことを変質者呼ばわりする。あれだけ飲んだのにも関わらず、歩行にも意識にも支障がない。どうなってんだコイツとは思わなくないが…。
「お前こそ、それで本当に帰れるのか?」
「問題ありません。まだ倍は飲めます。」
「…本当に人間かおまえ?」
「失礼な。ちょっとお酒が好きなだけじゃないですか。」
「…ちょっとかぁ。」
「…ただ、心優しい私は、裏野さんに家まで送っていく権利を差し上げます。」
「お前の家の位置知らないんだが?それに、私には荷物がある。とてもじゃないが、増やせないんだが?」
「それは私を荷物だとおっしゃる?」
「その通りだ。」
「であれば、仕方がありません。このスペースで寝ることにしますか。」
「裏野さん、申し訳ありませんが、この酔っぱらい、持ち帰りいただいてよろしいでしょうか?」
「橘さん、これは私の所有物では無いので。」
「橘…死にたいのですか?…あ、いや——」
めんどくさいな、めちゃくちゃ強い酔っぱらいって。…いや、実際強いんだろう。Cランク探索者だし。お前ら同僚じゃないのかよ。仲良くしろって。ただ、砂塚はその後もなにか言葉を続けようとしたが、声が小さくなって聞き取れなかった。
「…先輩、私の車、乗っていきますか?荷物もあるなら運びますよ?」
「あー、…正直助かる。頼めるか神埼?」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
「あ、まって、私も乗せて…。お願いだから。」
「…砂塚。」
「砂塚さんは、ここで寝ればいいんじゃないですか?」
珍しく、神埼が砂塚に辛辣な言葉を掛ける。酔っ払いの押し付け合いが始まっているが、まぁ、全員の言い分はまぁ、うん。実際砂塚を放置していくのは、危険そうだし神埼の車で送ってもらうのが一番なんだろうが…。おそらく神埼が心配しているのは、リバースだろう。まぁ誰だって、自分の車を汚されたくはないからな。気持ちは分かる。かといって私も、荷物ありの状態で徒歩で砂塚に付き合わされるのは、ちょっと勘弁して欲しい。…あ、そうだ。
「神埼、荷物だけ送ってくれれば、私が徒歩で砂塚を送っていくが。」
「…はぁ、しょうがありませんね。砂塚さんも私の車で送っていきますよ。」
妥協案を出した所、神埼が折れた。結局は、私も砂塚も神埼の車で帰れることになった。ただ、毎回毎回、砂塚を乗せていたら味をしめそうだ。どこかで釘は刺しておいたほうがいいだろう。…まぁそれは私の役目ではないか。神埼が言うべきことだ。
****************************
神埼の車の後部座席で、へべれけ?の砂塚を見張りつつ車で送ってもらう。まぁ先に砂塚の家というのは、言わなくてもわかる。経路的に遠回りになっても、まずはこの酔っぱらいを一刻も早く、自宅に送還しなければならない。
「…砂塚さん…あ、駄目だ、今言ってもたぶん聞いてないですね。」
「神埼、今度シラフのときに注意すべきだ。」
「そうですね…厄介ですね。酔っ払いというのは。それだけで。」
「ちなみに神埼も酒は飲むのか?」
「あまり?まぁ宴会とかでは飲みますけど私生活では飲まないですね。先輩は?」
「たまーに飲むな。あまり強くない。ビールは苦手で甘い酒しか飲めないんだ。」
「…そうなんですね。あぁ、それで、忘年会とかもあまり出なかったんですか。」
「そうだ。たまに出席した時は決まってコーラや、梅酒なんかを頼んでたからな。一人だけ乾杯のグラスが違うので、ぐだぐだ嫌味を言われるし。『ビールぐらい飲め』って言われるのに飽き飽きしたんだ。」
「それは…でなくなりますね。」
「こういうの、アルハラっていうんだろな。私にとってはただの苦い水でしかないからな。ビール好きには悪いけど。」
「そうですよ。お酒は楽しく美味しく飲まないとですから。強要などもっての外です。好きなお酒を飲めばいいんです。私も好きですよ梅酒。」
「お前は寝てろ。砂塚。」
まぁ、そう言ってもらえると気楽ではあるけどな。砂塚と飲む分には悪くなさそうだな。ちなみに『ビールぐらい飲め』といったのは、やはりあのクソ野郎だ。…いや、別の人だったかもしれないが、それでも私から見て上司にあたる人物だったはずだ。苦手なんだよ。ああいう体育会系の悪い所を凝縮したような人種。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
https://ncode.syosetu.com/n4475kl/
青空設置しました。
https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social




