構わないさ、多少の不都合ぐらい、別にどうだって。それで自分が得をするならば。
「裏野さん、片栗粉と油準備できてます。」
「…手際が良いな?」
「この間、レシピ教えてもらってますので。アシツキノリモドキも砕いてありますよ。」
「なるほど助かる。」
どうやら砂塚が来る時に、一通り全部準備してきたようだ。すでに竜田揚げ調理セットが料理場に一通り、しっかりと準備済みである。…しっかりと、缶ビールのパックも山のように積み上げられている。お前、それ全部飲む気か?
「…お前それ、全部飲む気か?」
「そうですよ?」
当たり前じゃないですか?とでも言いたげな表情で、砂塚は私の方を見つめてくる。
「…帰れんのか?」
「駄目だったらこの場で寝ますし?」
「…お前…。」
神埼でも呼んだ方がいいか?いやでもなぁ。こんな事ごときで神埼を呼ぶのも悪いしなぁ…。そうそう、ちなみに、橘さんは本部に魔石を送るために、事務所でずっと作業をしている。前回みたいに、受付作業を(無いからといって)放り出すような受付はいないようだ。
とりあえずは、トミヨニの下処理からだな…と考えていると、砂塚がバケツに手をツッコミ粛々と下処理を始める。鱗をとり、頭を落として、内臓を洗う。あとはトゲを処理するだけになった、トミヨニが次々と量産されていく。やはり砂塚は手際が良いな。
「魚、捌けるようになったのか。」
「えぇ、自分でも練習したので。」
よくみると、砂塚の指には絆創膏が巻かれている。練習の際に切ったのだろう。だが、ちゃんと練習してきたらしく、私が下処理するのと同じ速度でトミヨニを処理できている。
「トゲだけ抜いてもらっていいですか?道具を持ち替えるのが面倒なので、その方向で役割分担したほうが多分早いです。」
「…まぁ、それもそうか。」
またちゃっかりしている事に、正論…この場合は処理速度と役割分担だ。魚の下処理で、トゲヌキだけが使う道具が違う。鱗から内臓の処理まで包丁だけでできるが、トゲは一本一本丁寧に処理しなければならない。つまり先に、前工程の処理を担当することで、後工程であるトゲの処理を私に押し付けてきた。まぁ、逆に私であっても、その提案をしただろう。理にかなっている。
砂塚と私の二人がかりでトミヨニをちまちまと処理していく。あとは揚げるだけになったトミヨニが徐々に山のようになり始めた頃、スマホにメールが届いている事に気がつく。私は作業を中断して、メールを確認する…。神埼だ。
「また葦附ダンジョンに行く日程決めか…。まぁいつでもいいっちゃいんだがな。それに今いるし。」
えーっと、『いつでもいい。ちなみに今いる。何故か仕事が休みの砂塚もいる。トミヨニの処理中。』…これでいいか。送信。
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バケツいっぱいのトミヨニの処理が終わり、次のバケツに手をつけてしらばくした頃。ダンジョン前に車が止まる音が聞こえてくる。猛スピードで止まったのが、ブレーキ音がここまで聞こえてきた。
「…外が騒がしいですね?こんなダンジョンになにか急用でしょうか?」
「さぁ…それはないだろ。来るとしたら私か神埼ぐらいのものだろ。」
扉を勢いよく開けて入ってきたのは…神埼だ。
「先輩ー!!!私だけ仲間外れですか!!!先輩と私はチームですよね!?」
「…いや、仲間外れも何も、元は一人で来たんだが?」
「神埼さん!?何故ここに!?」
「砂塚さんこそ!」
なんだこれ。どうすればいいのだ。
「…そんなことより、トミヨニの処理手伝ってくれ。そろそろトゲ抜きは飽きてきたんだ。」
そう言いながら、神埼にトゲ抜きを渡す。
「…先に手を洗ってきます。」
「…そうだな。」
やれやれだ。
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バケツ三杯分のトミヨニは、もれなくすべて竜田揚げに変わってしまった。三人がかり(主にトゲの処理は私がやる羽目になったが)で、処理をしたらやはり早く処理できるな。神埼は、おぼつかない手先で少し危なかしかったが、やはり砂塚と同じで魚を捌く練習はしてきたようだ。そんなにトミヨニが食べたかったのか…。
今回の甘辛は、神埼と砂塚がタレの材料も買ってきてくれていたので、にんにくもつかった。量があるので、生姜だけで漬けたものだけではなく、下味をつけた竜田揚げも作れたし、甘露煮風にしたものも作った。また唐辛子を利かせてほかよりも辛めにしたものも用意した。
机の上には、甘辛、甘露煮、辛味、醤油味(下味をつけたもの)の四種類のトミヨニの竜田揚げがならぶ。私と神崎はアン◯サを、砂塚はビールを。4人分の取り皿がきっちり用意され…4人分?
「おいしいですね。トミヨニがこんなに美味しくなるなんて。」
「…橘さん?」
「おいしいですね、本当に美味しいです。」
「…橘さん?」
「はい、橘ですが。」
「…橘さん?」
「ごちそうになっています。ありがとうございます。」
そうじゃねぇよ。
「お仕事は?」
「終わらせましたので。それに、こんな香ばしい匂いで我慢しろというのが無理では?」
「…調理の下準備も手伝ってない上に、人の食べ物に勝手に手を付ける方を、『泥棒』と言うと私は認識していますが?」
「珍しく葦附に通っていただける探索者の方の査定に、色を付けるよう、本部に上申してあります。」
「どうぞ、ご自由にお食べください。」
それでいいのか?とはちょっと思うけど、まぁ、うん。私が得をするなら良いだろ。別に。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
https://ncode.syosetu.com/n4475kl/
青空設置しました。
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