いつまで経っても、過去が私の足を引っ張るから。
「いらっしゃいませ!いつもありがとうございます!なにかお探しですか?」
竹酢液と他の猫よけグッズを見に、いつものホームセンターに来たところばっちり顔を覚えられてしまっていた。…たぶんいつも会計してくれてる店員さんだと思うけど、私は人の顔と名前を覚えられない。レシートや名札で、店員さんの名前が分かるはずだが…そんなものはほとんど見ない。
まぁでも、言われてみれば、確かに挨拶してくれた店員さんには見覚えがある。普段は話しかけて来たりとかしないが、こうやって常連だと認識されれば、挨拶だけじゃなくて声もかけてくるか。正直やめてほしいが。必要があればこっちから声をかけるから、基本的にはほっといて欲しいんだよなぁ。
「あ、いえ、竹酢液を見に来ただけなので。」
「竹酢液ですね?それでしたら、外の園芸館になります!」
前言撤回、非常に助かる。室内の方にあるかとおもったら、そうか、園芸館にあるのか。危うく無駄に室内を探すところだった。…っていうか、今ノータイムで商品の場所が出てきたな。すごいな。これだけ広い店なのに、きちんと商品の場所を覚えているのか。
「ありがとうございます。」
「売り場までご案内いたしましょうか?」
「いえ、大丈夫です。ついでに他にもみたいものがあるので、ぶらぶらしながら、向かいますから。」
「それでは何か御用がありましたら、是非スタッフまでお声がけください。裏野さん!」
「はい、わかりま…し…た…?」
ちょっと待てい。私は今声をかけてくれたスタッフの顔を見る。…駄目だ。全然覚えてない。ホームセンターでは名前を出して買い物なんかしたことがないので、絶対どこかでなんかの知り合いだ。私の名前を知ってるということはそういうことだ。っていうか、またこのパターンかよ!
こっちは覚えてないのに、なんで皆そう、簡単に人の名前と顔を覚えられるんだ。冗談じゃないぞ。ホームセンターのスタッフとして見覚えがあるだけじゃなくて、それ以前か、あるいは他の場所で顔を見ているということになる。…駄目だ!わからん!
「…あれ?どうかなされました?」
「…あ、いえ、名乗ったことってありましたっけ?」
一応すっとぼけてみる。
「…あれ?私の事分からないんです?」
「…ホームセンター以外でお会いしましたっけ?」
「…同級生を覚えてない?」
そこに無いなら(覚えて)無いですね。っていうか、同級生!?同級生なんで!?
「…念のためですが、同名の人違いではなく?」
「北斗七星中学、3年2組の裏野君ですよね?担任は越田先生。ほぼ3年間、席は教室の隅左後ろ。」
合ってるわ。っていうか、なんでそんな事まで覚えてるんだ。どうして席の位置まで正確に覚えているんだ。…駄目だ。顔を見ても思い出せない。っていうか、また女かよ。ふざけんな。正直中学の同級生とか、ほとんど覚えていないぞ。…いや、それは言いすぎた。訂正。一人も覚えていない。
というか、中学のときはいじめにあっていたから、正直思い返したくもない。まぁちょっと一悶着起こしてから、いじめはなくなったんだけど。それでも中学には良い思い出はない。正直記憶から消したい。…今からでも否定するか?いや、でもそうすると、今度はこのホームセンターに来づらくなるぞ。…詰んだ。
毎度毎度のことながら、なんで同じパターンで詰むんだよ。警戒とかそういうベルの話じゃねーぞ!砂塚と神崎は仕事部下だったから良かったけど、中学の同級生とかもはや無理ゲーだろ!卒業アルバムとか、燃やして捨てたし…。
「…どちら様でしょうか?」
「旧姓中森です。中森麗奈。今は西田。」
「…。」
…それでも思い出せない。だが、そんな事よりも同級生が結婚済みだということに衝撃を受ける。いや、まぁこの年齢なら普通結婚しているものか。あらためて現実を突きつけられる。膝から崩れ落ちそうになるが、なんとか踏ん張る。…結婚ねぇ。私にはたぶん死んでも関係ない話だな。
「…あー。」
そしてそう言われれば、思い出してきた。そういえば同じクラス…だった…気がする。でも、正直よく覚えてない。
「ま、別にいいけど。私も裏野さんだって気がついたの、つい先日だし。」
「…そうですか。」
正直気まずい。
「ま、というわけで、今後とも当ホームセンターをよろしくね!それでは売り場までご案内しますねー。よろしいですよね?」
「はひ。」
——そして私は有無を言わさぬ圧に屈服した。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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