労力に見合わない味のハズ…だったハズ。
「ところで、このダンジョンで取れる小魚と藻って美味しいんです?」
神埼が話題を変えてきた。まぁ当然の疑問だよな。
「いや、それほど美味しい!って程うまくはないぞ。特に藻は。」
「そうなんですね。」
「ただ、まぁ小魚はそれなりに。竜田揚げにするとうまい。」
「竜田揚げですか?」
「おつまみですか?」
思ってた通り、酒クズが食いついてくる。というか、お前が受付を担当しているダンジョンで取れるんだぞ。
「というわけで、竜田揚げを甘辛にしてきたものを、用意してきた。ダンジョンに潜る前に、あっちの飲食スペースで食べよう。」
「わ、すごい。先輩って料理出来たんですね。」
「お前、私を何だと思ってるんだ?」
「生活力と社会性が低い、仕事中毒者。」
「…違わないけど、違う。」
神埼。そうじゃないんだよ。そうじゃないんだ。
「待ってください、私も食べます。」
「お前は受付の仕事しろよ。」
「いいんですよ。どうせ誰も来ませんし。」
「いいのかそれで。」
「というか、それが美味しいなら、葦附ダンジョンのアピールに使えるので、これも受付の仕事です。ダンジョン振興策のための必要な仕事です。異論は認めません。」
微妙に正しそうな事を言ってるけど、ヨダレが隠しきれてない。
「まぁ、慌てるな。そう言うと思って、ちゃんとタッパーを2つ用意してきたんだ。」
「ナイスです!ビール開けますか!?」
ダルダルで受付の仕事をしていた砂塚のテンションが、明らかに変わる。あ、この感じ、VTuberやってるときの声だ。疑ってはなかったけど、本当に同一人物なんだ。コイツ本当に酒好きだったのか。
「馬鹿野郎、仕事中に飲むんじゃねぇ。」
「大丈夫です。出勤前にも飲んでるので。」
「大丈夫じゃねぇよ!」
****************************
流石にビールは止めた。仕事中に飲むんじゃ無い。もしバレて、原因でも探られたら私が原因ということにされかねない。それだけは勘弁してくれ。
結果を言うと、トミヨニの甘辛は大好評であった。酒クズの砂塚は「ビール…ビール…ビール!!!!」と荒ぶっていたが、神埼も「あ、これ好きです。美味しいです。」と大好評。個人的には労力に見合わない味ではあると思うが、何故か三人で食べると、独りで食べる時よりも美味しく感じた。
「これって、どうやって作るんですか?教えて下さい!」
「砂塚、構わないが、結構手間だぞ。正直やってられん。」
「そうなんですか?」
「あぁ、トミヨニだが、丁寧な下処理が必要だ。お前、生のトミヨニをちゃんと見たことあるか?」
「無いです。」
お前の担当ダンジョンだろ。把握しとけ。
「…じゃぁ、一旦、トミヨニをダンジョンから取ってくるから、戻ってきたら教える。だが、流石にここで調理は出来ないだろ?」
「大丈夫です。元からアシツキノリモドキの調理用施設があるので。竜田揚げに使うための油と片栗粉もありますよ。」
「なんであるんだよ。」
「私がよく、使っているので。」
「…お昼から揚げ物を?」
「そうですがなにか?」
「…お前飲んだりはしてないだろうな?」
「…ソンナワケナイデスヨ!」
やってんなコイツ!?
****************************
砂塚がクビになった理由がちょと分かった気がしたが、仕事ができるのは確かだ。現に、下心があるとは言え、トミヨニの調理レシピで、葦附ダンジョンでとれるトミヨニの味を広めたいと、その場で施策の雛形を作り始めるぐらいには。
ま、何はともかく、砂塚は仕事で、私達はダンジョン探索だ。
「ほえー、これが生きてるトミヨニですが、トゲトゲしますね。」
「そうだ、かなり硬いぞ。普通に刺さるから気をつけろ。網で掬ってバケツに放り込む分には問題ない。素手で触るときは気をつけろ。」
「もう刺さってます。」
「行動力の化身~。」
神崎は神埼で、行動力の化身だ。初めて見る魚で、一応モンスターだと言うのに、トミヨニを素手で触り始める。というかそのトゲトゲの見た目で、初手触るが選択肢に入るのはおかしいだろ!?何やってんだお前ぇ!神崎の指を見てみると、思いっきりざっくりと刺さっている。念の為持ってきた、針抜き用のピンセットで慎重にトゲを引き抜いて処置してやる。
「先輩って用意いいですよねー。仕事してたときも、誰かが怪我したら一番に絆創膏と消毒液くれましたもんね。」
「そりゃぁ、仕事中、怪我する事ぐらいあるだろ。特に紙なんか扱うと指を切ることはあるしな。絆創膏ぐらい持ち歩いておけ。」
「普通の人って、常に絆創膏は持ち歩きませんよ?」
「…そうなのか?」
「そうだと思います。」
「…まぁともかく、それでもモンスターだから取り扱いは気をつけろ。確実に氷で締めておけ。魔石は頭の中にあるが、ゴマ粒ぐらいしかないから取り出すのは諦めろ。」
「そうなんですね。」
そういいながら、神崎は次々と網をふるってバケツにトミヨニを放り込んでいく。さてはお前、本当にあの甘辛を気に入ったな?まぁ、調理法は後で教えてやるから頑張れ。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
https://ncode.syosetu.com/n4475kl/
青空設置しました。
https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social




