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触手 in クーラーボックス(仮)  作者: 一級フラグ建築士
第2章 社会不適合者

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人の名前を思い出せないことは、それほどの罪なのだろうか?

 短い時間の中で、必死に頭をフル回転させる。正直こんな事に頭のリソースを割くのは、無駄だと思う自分もいるが、人の名前を間違えるのは大変失礼だ。しかもそれが、一応の知り合いなら尚更だ。こういうのをどうでもいいって思うから、人付き合いが下手なのは理解している。


 少し前の私なら、「まぁそれでもどうでもいいか。」で終わらせていたが、今回はそうはいかない。受付自体はもう終わっているが、このダンジョンにはまた来るかもしれないのだ。その時に受付担当者からの心象が悪いのは、あまりよろしくない。…毎回この人が担当者とは限らなくてもだ。


 …次の瞬間、最近神埼とした会話が頭をよぎる。そう、VTuberの話だ。「やっていたんだよなVTuberをやっていたやつが…。」みたいな会話をしたはずだ。…すでに神埼との会話すらうろ覚えなのも私のアレなところだな…。


 で、そう、そうだ。この人だ。VTuberをやってたの。間違いない。…やっぱり後輩だ。前の職場の。そうか、君はダンジョンの受付に転職していたのか。覚えてる。神埼と同じで仕事ができた部類で、むしろ、私の担当してた仕事を覚えてもらおうとおもってた人だ。この人も上司と衝突して辞めたんだ。…当時から理解かっていたけど、あの上司禄でも無ぇな!!


 それはそれとして、この人の事は覚えてる。問題は名前だ。


 「もしかして、体調不良の時に送っていった事がある?」

 「ありますね。あの時は助かりました。貧血で一人で歩くのは辛かったので。」

 「だよね。一緒に仕事したもんね?」

 「そうですね、一緒に仕事をしましたね。」


 あ、なんか思い出せそう。


 「砂塚さん!?」

 「はい、そうです。砂塚です。」


 やった、セーフだ。無罪放免。大逆転。


 「…ギリギリ名前を思い出してくれましたね?まぁ良しとしましょう。」


 あっ駄目でした。忘れていた事が普通にバレてた。判決、ギルティ。


****************************


 「それではようこそ、辺鄙なところにある過疎ダンジョン、『葦附』へ。裏野さん。」

 「…はい。」


 こうやって受付で無駄話ができるのは、他に人がいない過疎ダンジョンだからだ。これをこの間、神埼と一緒に行ったダンジョンでやれば、順番待ちしてる探索者から殺されるだろう。


 「…で、今日は出勤日ではないのですか?いつから副業で探索者を?」

 「…あー。仕事は辞めたんだ。」

 「…いまなんと?」

 「あの仕事は辞めた。」

 「…冗談?」

 「シリアスだ。」

 「あの、仕事の事しか考えてない裏野さんが?」

 「…そうだ。」

 「へぇ。」


 神埼もそうだが、皆、私が仕事のことしか考えてないと思ってるな。そうじゃないんだ。実際私が一番大事だったのは、家に帰って一人でお茶を飲んだり、SNSをしたり、ゲームをしたりする時間だった。その時間が、少ししかなかっただけで。単に皆と食事に行くよりも、一人でお茶を飲みたかっただけなんだ。


 「で、今は探索者ですか。」

 「…まぁ、そうなるな。砂塚はVTuberはまだやってるのか?」

 「…あー、その話はここではちょっと。他に誰もいませんが、万が一があるので。」

 「そうか。すまない。」

 「その話がしたいなら、連絡先教えていただけます?仕事後のチャットとかでなら答えられますので。」

 「…まぁいいぞ。電話番号とメルアド、あとチャットのアカウント。」

 「ありがとうございます。仕事終わりに連絡いれますね。」


 そうか。まぁ気が向いたらチェックしておくか。


 「で、本日は葦附に何用です?初めてですよね?」

 「あー、ちょっとここで取れるっていう、海苔と小魚が気になってな。」

 「あぁ、それは海苔ではなくて、()ですね。」

 「藻?」

 「そうです、藻です。実際に雄神川で取れる『アシツキ』という藻があるんですが、その藻のことをアシツキノリと呼ぶんです。で、そのアシツキノリそっくりの藻が、このダンジョンでは取れます。そちらの方は名前を、『アシツキノリモドキ』と呼びます。アシツキノリに似てるからってだけで、モドキって呼ばれるんです。」


 へぇ、藻なのか。よく知っているな。


 「で、です。その『アシツキノリモドキ』なんですが、味も生態もそっくりです。実際に雄神川に自生するアシツキノリと比べて、安定して採取することができますが…所詮、藻なんですよ。食用ではあるんですけど、特別美味しいっていう訳でもないので。」

 「…それで過疎ってるのか。」

 「そうです、小さくてもダンジョンなので、こうやって受付はいるんです。無人にしておくと、大変なことになることが以前判明したので、どんなに小さなダンジョンでも、受付を置いておくことになって…。で、私みたいな下っ端が担当している訳ですね。こういう出張所の受付を。」

 「なるほど。…だが、それでもその藻と、同じく生息してる小魚のモンスターに興味があって来たんだ。」

 「変人ですね。」

 「…否定はしない。」


 やっぱり名前を覚えていなかったのが悪かったのか、ストレートに変人扱いされてしまった。今後も来るかもしれないんだけど、こんな事だと先が思いやられるな。

別作あり〼

愛用のクッションがどうもなにか変

https://ncode.syosetu.com/n4475kl/


青空設置しました。

https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social

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