こいつはミミズじゃない。たぶん。
サクラサーモンモドキと引き換えに、手に入れたローズマリー・セージ・レモンバームで、玉砂利で埋めてあった裏庭に、少しだけ緑が戻った。あまり増えすぎても虫で困るが、ローズマリーとセージは鉢植えだし、レモンバームはプランターなので、そこから溢れて繁殖することは無いだろう。たぶん。
だが、万が一を考えて、裏庭に転がっていたブロックとレンガで台座を作り、その上に設置しておいた。後日、ちゃんとした台座を購入すべきだろうが、すくなくとも鉢植えから根っこが脱走しても、気づきやすいようにしておいた。これで、庭がレモンバームに侵略されるということもないだろう。
ハーブの繁殖力を舐めてはいけない。特にミントなんかを庭に直接植えると、殲滅は不可能だと考えて良い。少しでも間違えたら、またたくまにあちこちにはびこり始めて、始末に負えなくなる。それぞれのハーブの水やりには、前から言っているように、クーラーボックスの水を与えれば楽ちんだ。ローズマリーとセージは多少与えれば良いので、あとはレモンバームにじゃぶじゃぶと与える。
コンポスターの方は、まだ分解は全然進んでないが、温度計はしっかりと微生物が活動していることを示しているので、うまく機能していそうだ。
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レモンバームを裏庭に設置してから、2日後、いつものように、クーラーボックスの水を与えてやろうとおもったら、窓の外に影がみえる。…といっても猫や人なんかではなくて、空を飛んでいる影だ。しきりに庭を飛び回っているし、窓にガンガンとぶつかる音も聞こえる。
窓を開ける前に、カーテンを開けてみてやると、一匹の蜂が窓にコンコンとぶつかっていた。
「まいったな。これじゃ開けられないな…。」
網戸はダンジョン側の窓の方に固定してあるので、庭に繋がる方の窓をあければ、そのまま蜂がはいってくるだろう。大人しく蜂が去るのをまってもいいし、クーラーボックスの水を風呂場で処理してもいい…。だが、結局は、レモンバームに水やりをしなければならないので、ここは一度外にでてから裏庭にまわって様子をみるべきだろう。
同時に、クーラーボックスの蓋が開く。蜂が窓にコツコツと当たる音を聞いたからか、水流も気になって出てきたようだ。いつもとは違いダンジョン側ではなく、外の庭に続く窓の方を向いている。大丈夫だ。窓があるから入ってこれないからな。
おそらく、レモンバームにつられてやってきた蜂だろうから、蜜蜂だと思いたい。お隣さんのとこにもよく蜂が飛んでいるのをみているし、概ね間違いないだろう。だが、飛び回っている上に窓越しだし、そもそも蜂に詳しくないのでパッと見で判別はできない。スズメバチだったらもっとオレンジっぽいと勝手に思っているが、その他の蜂の場合もあるのでやっぱり私には分からない。
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玄関から外に出て、裏庭の様子を伺う。やはり蜂がぶんぶんと飛び回っている。そのまま駆除してもよいが、蜜蜂なら、穏便に立ち去ってもらいたい。…おや?蜂がぶんぶんと飛び回る下に何かが落ちているな。…しかも動いてないか?
それに気づくと同時に、蜂がこちらの方にむかってくる。が、襲ってくる気配はない。蜂は、私の周りでブンブンと飛び回ると、その落ちている物体の方向に、私を案内するかの様に、上下にホバリングする。
ふと窓をみると、水流が窓に引っ付いている。あまりそれをやられると、外からばれるからやめて欲しいところでは有るが…。そこで気がつく、そういえば水流来てから最初の方、魔石やサクラサーモンモドキが落ちていた時に似ている。水流は蜂が気になったのではない、落ちている方に引かれたのだ。
蜂と水流が反応しているもの、つまり、これまでと同じくダンジョンから出てきたナニカに違いない。…さては、お前もだな?普通の蜂が、こんな反応をするハズが無い。慌てて、落ちているナニカを確認すると――
「…お前、どっからやってきたんだ。死にそうじゃねぇか。…前にも言った気がする。」
――ソイツを拾い上げると蜂は、どこかへ去っていった。まぁ、たぶん、また来る事もあるだろう。それよりも、問題はこっちだ。鍵は外してあったので、外から部屋の窓を開けて、水流に尋ねる。
「水流~、どうすりゃいい?お前の知り合いか?とりあえず、そこの水とってくれ。」
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愛用のクッションがどうもなにか変
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