秘密が明るみになる時は、大概は色々と手遅れになった後だ。
水流のお陰で、部屋と窓の目隠しとなる、カーテンと暖簾は無事完成した。触手が魔法を使うというハプニングはあったが、この際、なにも問題はない。…そもそも魔法が使えるモンスターが、地上まで出てきているというのがバレるのがまずい。だが、一方で、水流をこのまま探索者協会に引き渡すには、愛着が湧きすぎた。今のところ私の言うこともよく聞いてくれている。
しかも、その事を話すと『じゃぁどこで拾ったんですか?』となり、今度は裏庭のダンジョン…正確には自室のダンジョンがバレる。詰みだ。…そんな事を知っているのか、知らないのか、水流はクーラーボックスから時たま顔を出しては、裏庭の方を見つめる?ようになった。
そんな今日も室温は34.7℃を超えている。さっそく目隠しとなるカーテンをつけて、ダンジョン側の窓を開ける。買ってきたばかりのサーキューレーターを回せば、涼しい風が吹いてくる。ダンジョンを利用した、天然?のエアコンである。卓上に置いて有る時計の温度計も、みるみるうちに温度が下がっていく。
「涼しい…。」
水流の方をみると、そちらの方もクーラーボックスに入る必要がないぐらいに冷え始めた室温にご満悦である。…いつのまにか、私、触手の機嫌が分かるようになってんな。
気まぐれに庭に出て、網を振るえば『サクラサーモンモドキ』を簡単に捕まえることができる。とりあえず食費はそれなりに浮きそうだ。…まぁいまは冷凍庫にまだ切り身がはいっているので、これ以上捕まえる必要がないので、そのまま逃がしてやる。
その後は、買ってきた『探索者向けの教本』を読む。一応制度上の話も色々とでてきているが、今の私には関係ない。今知りたいのは、ダンジョンの危険度や、出てくるモンスターや、それに対応するにはどうすればよいか…などだ。将来的には一応探索者免許の取得も考慮にいれておくが、いまのところは、バカ正直に探索者になるつもりはない。
今のところ裏庭のダンジョンで確認しているのは、水没した裏庭と『サクラサーモンモドキ』だけだ。ダンジョンで言うところの『極小タイプ』に当たる。なお、このようなダンジョンは非常に珍しい。そもそもが、民家に出来るダンジョンが稀だ。さらにその上、本来は深層にでてくるような『サクラサーモンモドキ』が出るようなダンジョンであると、もはやどれだけの確率か分からない。ふむ、今後このダンジョンの事を『プライベートダンジョン』とでも呼ぼうか。
小規模だとは言え、定期的にプライベートダンジョンの探索は必要だろう。もしも拡張し始めて、私の手に負えないようだったら、罰則覚悟で探索者協会に報告する必要もある。…おや?
探索者向け教本を読んでいると、探索者の職業に『テイマー』という項目を見つける。ダンジョンで捕まえたモンスターをテイムして、使役する役職らしい。ただ、テイムできたモンスターの例が少なく、明確な取得条件も判明していない役職か、なるほど。
ふむ、そうなると水流の事を誤魔化すためには、探索者のテイマーを目指すという選択肢がでてくるな。一応頭の隅に留めておこう。
別の作品もあります。よしなに。
愛用のクッションがどうもなにか変
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