罪の味がする。罰の味もする。
顔面に触手がダイブするという稀有?な体験をした。その事件を引き起こした本人…本触手?は、窓の外を見ている。やはり、また何かあるらしい。というか、ココまで裏庭に立て続けに、なにか落ちてるってことは、そろそろ原因を調べたほうが良い気がするんだよな。
網戸を開けて、外の様子を伺っt…は?
「は???」
窓を開けた先にいたのは、一匹の魚だった。まるでさっきまで泳いでたかのように、玉砂利の上でぴちぴちと跳ねている。…いや、本気でお前どっからきたよ。
「は???」
肝心の魚はというと、見たことがない形と模様をしている。サーモンみたいに太ってやがるが、小ぶりで小さい。まるまると太っているのは見た目にも分かる。確かにうちは川沿いだ。川沿いだが、魚がこんなところでピチピチ跳ねているのは、明らかにおかしい。しかもたぶんこいつは、一般に生息している魚じゃぁない。
おそらくダンジョン産だ。触手と同じ様に一応はモンスターの枠に収まるようなやつだ。まぁダンジョンに生息する生き物を一括りに『モンスター』にしているだけなので、正直、ほぼ魚と言っていい。
で、問題は何故、その魚がここにいるかである。人為的にしてはたちの悪いいたずらだが、裏の家からこんなイタズラは受けたことがない。で、あればカラスか何かがもってきたかになるが、見た所、この魚には傷ひとつついていない。じゃぁカラスじゃないならば、隣の家は?というと、隣の家に人は住んでいない。
つまり、ここに魚を持ってきた犯人は不明である。っていうか、こいつなんて魚だっけ。…飼育されていたような形跡もねぇんだよな。
事態が事態なので、ブロック塀の向こうの、裏の家の敷地を確認してみる。…やはり、魚らしきものは見当たらなければ、雰囲気的に、裏の家は今は留守のようだ。ブロック塀の裏に人が隠れているような様子もない。
「…この魚どうすりゃええんかね?」
とりあえず素手で捕獲して、一時的にピッチャーの中にぶち込む。とりあえず飼育する気はない。おそらく持ち主もいないだろう。だが、そんなことよりも。
「…食ってみるか。」
一食分、食費が節約できるのであれば、モンスターだろうが食べるさ。そもそも、この環境下でこの魚が長く生きられるわけがない。見つけなければ自然に死んでいただろうし、食べても問題はなかろう。…一応念入りに洗っておくか。
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ネットで調べてみた所、種類はすぐに分かった。『サクラサーモンモドキ』で、やはりダンジョンに生息するモンスターだ。美味・食用。ダンジョンで採れる魚で、魚自体の捕獲難易度は高くない。高くないが、凄まじい速度で逃げる上に、他のモンスターにも食べられやすく。数が取れない。しかもそれなりにダンジョンの深い層で出現することが多いようで、そこから生かして持ち帰るのにはお荷物になると。
故に、ダンジョンで殺して捕まえた個体なんかが、一般に流通していると。へぇ。…生きてるよなコイツ?
ふぅん。ダンジョンに棲息してるから、川魚の種類なのに寄生虫もいない。そのため、既存の生物分類でいうところの『サケ科』のいわゆる『マス』種であるのに、生食可能と。食通が生きたまま欲しがる高級魚…ね。あ、ただし、生きたままダンジョンから持ち出しは禁止されてるのか。生態系への影響を鑑みて、特別な許可が必要…なるほどね。
つまり、ここに生きた『サクラサーモンモドキ』は存在してはいけない訳だ。なら…証拠隠滅が必要になるな?
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「ごちそうさまでした!」
久々に魚を捌いたが、やはり面倒くさい。主に後片片付けが。飛び散った鱗に、骨に、血に、ヒレに、エラと、食べるまでがくそめんどい。
ちなみに、念入りに洗ったあとに、三枚におろして、お刺身にした。なるほど、『生のマス』という禁断の味とはこういうものだったか。
「なるほど、こりゃぁ、食通が欲しがるわけだ。」
勝手に食べちゃぁまずかったかもしれんが、故意でもない限り、裏庭にこの魚が落ちてる訳が無い。万が一問題になっても、別にそれならそれで構わない。どうせもう、どうでもいいし。むしろそうなってもらってもいい。
勝手に裏庭に落ちている魚を食べてはいけません。(証拠隠滅)
別の作品もあります。よしなに。
愛用のクッションがどうもなにか変
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