正当防衛に当てはまる範囲までしか許されないが、どこまでが正当なのかは誰も教えてくれない。
職員モドキの方は、砂塚にまかせて私はふっとんだ男の方を処理する。…あー、口から血をこぼしてるな。たぶん口内を切ったな。まぁ、自業自得だが。当然まだ意識があるが、腹部の痛みに耐えかねて動けてないって所か。…ちなみにこういう描写で、倒れたヤツが意識を失っている場合が多いが、脳震盪じゃなければ基本的に命に関わるレベルで脳にダメージを受けた場合なので、基本的にはこのようにふっとんだぐらいでは気絶しない。この場合動けないのは、ダメージで動けなくなっているのが大半であって、痛みになれてきたら動き出す。だから、動けない今のうちに無力化するのが良い。
というわけで、口をあけましてお茶を流し込む。神埼は一口でダウンしたから、即効性&強力なのは明白。私が相手なら事前に、解毒薬を飲んでおくけどたぶんそこまではしてないだろ。4口分ぐらい飲ませとけば、しばらく動けないはずだ。それ以上はたぶん死ぬ。ようするに麻酔飲ませてる訳だからな。…こういうときのこれって薬事法とかひっかかるんかね?そもそも薬事法が適応されるとか、該当法がこういうケースの問題を扱っている法律なのか知らんけど。
よかったな。神埼が口つけたやつだぞ。殺人罪に問われたくはないから、そこまでは飲ませはしないけど、とりあえず当分は、このまま死んどけ。
「砂塚、そっちは?…聞くまでもなかったか。」
「はい、適切に"処理"しました。」
私が襲撃犯に、お茶を飲ませている間に、砂塚は暫定偽職員を無力化していた。…んー。股間をおさえてもんどりうってるあたり、どんな方法で無力化したのかは分かるけど、まぁ、うん。相手がアホだったってことでいいか。…問題は過剰防衛に判定されないかだけど、魔法つかってるしな相手。こっちは使ってないから、たぶんギリギリセーフ。
「…で、これどうする?」
「んー、まぁ警察の事情聴取には呼ばれるでしょうね。」
「まぁ…だろうな。」
犯罪行為だしな。しかも白昼堂々と。神埼も麻痺?してるし、正直嫌なんだが。ちなみに、襲撃犯二人は両方とも、自分たちが出したお茶を飲まされて無力化済みだ。当然、協会職員がわらわら集まって大変な事になっている。これ以上目立つのは、まじで勘弁して欲しい。しかも目撃者多数だし。なんでこんなところで襲撃するんだよ。お前ら。
それから、まぁ、見事に酷いことになったものだ。後片付けも大変だろう。これらの弁償は、このアホどもがやってくれるんだろうな…?…うーん。正当防衛の範囲で制圧したつもりなんだけど、こういう時ってどこまでやっていいのか分からないな。これでやり過ぎとか言われてもどうしろと言うんだ。向こうから突っかかってきたのに、こっちにも問題があるとか言われたら理不尽だろ。…はぁ。
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「午前11時29分…今頃、表彰の最中だな?」
「そうだ。部屋主がいない今のうちに、侵入する。」
「こんな探索者のひよこの家に、我々が侵入する理由があるのか?」
「ある。」
「理由は?」
「教えられない。」
「はぁ…。もっと金目のものがある家ならまだしも、ほぼ一般人だろ。」
「うるさい、指示を全うしろ。」
「へいへい。」
ワゴン車から出てきた覆面をかぶった怪しい4人組は、ブロック塀を乗り越えて民家へと不法侵入していく。白昼であるが田舎の住宅街、この時間、外を出歩いている住民はほとんどいない。ましてや、その家は今無人である。普段はずっと家の隅の部屋に部屋主が1名いるが、今日は都合よく不在である。部屋主が当分、帰宅することはない。そして…田舎の家である。大抵の家は、扉に鍵をかけてないし、なんなら部屋の窓は大抵の場合開けっ放しである。
「楽な仕事だな。まぁ、裏庭の玉砂利を踏むと音がするのは問題だが。今は誰もいないからな。」
「…ま、普段はこんな民家を襲うことなんて絶対無いからな。」
「煩い、上からの指示だ。文句があるなら終わってからにしろ。」
「それはそうだ。」
普段はもっと荒事や、侵入が難しい高度なセキュリティがある金庫や会社に侵入するを仕事をしているプロだ。鍵が開けっ放しの、民家に侵入する。これほど、イージーなミッションは無い。むしろ、それほど簡単な仕事にこれほどのプロに対して、こんな事を指示する雇い主が過剰である。だが、上からの指示である。やるしかない。
「ま、確かに、我々に頼るほどなのかは、分からんけどな。」
裏庭から侵入し、ターゲットの部屋の窓を開ける。サンシェードがあるから、外からみられる事もない。鍵がかかってないから鍵をあける必要もない。
「それでも4人は過剰だろ。」
「煩い、部屋にはいるぞ。」
そうして男たちは部屋へと侵入していく。誰にも見られる心配も無ければ、邪魔をされる心配も無い。
「…狭いな。本棚とPCと…クーラーボックス?いかにも男の一人部屋だが、なんでこんなものが?」
「で、探し物は?4人ならすぐ見つかるだろ。」
「いいから窓を閉じろ。カーテンもだ。」
「わかった。わかった。」
そう言って、最後に入ってきた4人目の男が窓を閉じて、カーテンを閉めた。最早、外からは彼らが何をしているかは見ることができない。
——だが、結局、その男たちが再びこの家から出てくる事はなかった。
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この誰も居ない静かな部屋には、何故か、蓋の開いた空のクーラーボックスがある。部屋から裏庭につながる窓には、左側にのみ何故か後付されたチェーンがあり、そのロックが外れている。そうして、わずかに開いた窓の隙間からは、何故か外の景色とはすこし違う景色が見える。
部屋には誰もいない、なぜならこの部屋の部屋主は現在、外出中である。誰もいるハズがないのだ。
わずかに開いている窓の隙間から、冷たい風だけがびゅうびゅうと部屋に入ってくるだけだったが、やがて、その隙間からにょろりと触手が部屋に入ってきたと思ったら、器用に窓を閉めた。そして、これもまた器用にチェーンを掛け直したかと思えば、そのままクーラーボックスの中へ入り、そして蓋を閉めた。
まるで何事かも無かったかのように、蓋の閉じたクーラーボックスだけが、この狭い部屋にある。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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