皆、魔法に夢を見すぎ。
「そんなことより、商品を先に案内してもらいたいのですが。」
「えっ…あぁ、申し訳ないね。何をお探しですか?」
たった今、『屋外に使う熱源が欲しいって。』ちゃんと説明したんだがな。うん、間違いなく言ったハズだ。これは、人の話聞いてないパターンだな。やっぱりちょっと不安だなこの店。
「えーと、屋外で使える熱源となる魔道具。ちょっと条件が特殊になるんだが。」
「熱源かぁ。特殊な用途とは?」
「一定温度を保ちたい。そして、熱源として火を利用したくないんだ。」
「不動にした、ランタンのようなものでも駄目なのかい?」
「駄目だな。」
「なんか面倒な感じかい?」
「いや、コンポストの温度を保ちたいんだ。」
「コンポスト如きに魔道具を使うのかい?変わってるねぇ?」
うーん。話せば話すほど、不安になってくるな。ちょっとこの店員さん、厄介な感じがする。言葉の節々と、こちらの説明への返しがちょっとな。
「まぁ、変わっているとは言われるだろうが。事実だ。」
実際嘘は言ってないからな。本来の目的はミミズの越冬のためだが、そのためにコンポストを温めてやりたい訳だから、嘘ではない。ほんの少し目的を具体的にしているだけだ。
「まぁ確かに、生ゴミ処理如きで火事になったら困るね。」
「そうです。電熱も考えたんですが、魔道具のほうが便利じゃないかと。」
「お兄さんには悪いが、魔法や魔道具って、そんな便利なものじゃないよ。」
「夢も希望も無い話ですね。」
「そうだよ。魔法にも魔道具にも出来ないことはたくさんある。熱源の魔道具一つとっても、熱源の種類から、温度調整の細かさ、温める空間の広さによって全然違ってくるし、魔道具ってのは意外と融通が効かないんだ。」
「でしょうね。」
分かっている。実際、リストをみて検討していたときは「全然希望に合いそうな道具が無さそうだな。」と、一旦棚上げしたぐらいだ。自分の体につけるような装備品ならまだしも、自立稼働してくれる魔道具になると、定期的にメンテナンスしたり頻繁に魔力供給をしなければいけなくなったりと、「所詮は道具」ということを理解させられた。魔道具は便利アイテムではあるが、魔力を使った道具なのだ。設定されている以上のことは出来ない。
「具体的な条件は?」
「20℃~25℃に指定した範囲の温度を維持。冬季だけ使うので加熱と保温だけ。最低稼働時間は連続48時間。屋外で使うので堅牢でいて欲しい。」
「加熱だけなら楽だけどね。指定範囲を一定温度に保つってのが面倒くさいね。ものすごく無理やりやろうと思えば、出来なくはないけどさ。機能に分解すると、『範囲指定』『温度計測』『加熱管理』の機能を持たせないといけない。範囲指定をするのではなく、保温したい範囲を事前に断熱するほうが手間が無くていいわな。それでも、数時間持つか持たないかだろう。そもそも、屋外で保温したいという考えが間違いだ。」
「そうですか。」
「結局なんだけど、エネルギーを無駄に使ってるって事さね。海をお風呂の湯沸かし器で温めようとしても、まったく意味がないよ。使う魔力以上の事は、魔法にも魔道具にも出来ない。」
「あー…。」
「だから言っただろう。『お兄さんには悪いが、魔法や魔道具って、そんな便利なものじゃないよ。』って。奇跡のように見えるだろうけど、出来ないことは出来ない。みんな、魔法に夢を見過ぎだ。もっと現実を見るべきじゃないかね。」
魔力も魔法もあるのに、そんな便利じゃないってか。『魔法に夢を見すぎ』か。そうか。そうかぁ。
「そうかぁ。夢を見すぎかぁ。」
「そうだよ。諦めな。」
まぁ、だろうとはおもったけど、本当に無いものだな。まぁ、仕方がないだろう。…ただ、手ぶらで帰るのもアレだしなぁ。それに、一度、実際に魔道具を使ってみてどんな感じなのかは確認しておきたい。発熱する魔道具だけでも手に入らないか聞いてみるか。
「…それはそれとして、加熱できる魔道具はありますか?」
「そうだね。魔力を供給する事で発熱するだけの魔道具なら、いくらでもあるよ。そもそも魔道具じゃなくてもある。そして、そっちのほうが安い。」
「魔道具じゃなくても?」
「あぁ、そうだよ。加熱だけでいいなら、そもそも魔道具の必要がない。一番安いのなら、コレだね。ゴーレム系のドロップ品。加工したやつじゃなくてドロップ品だから、いくらでも在庫があるし、本当に加熱機能しか無いよ。タイル状なんだけど、これ1枚で100円だね。」
「安すぎないか?」
「なんでそんなに安いんです?」
安すぎるだろ。流石に。一応はダンジョンのドロップ品じゃないのかよ。
「需要が無いからだね。魔力を通せば発熱するけど、制御が効かないし個体差がある。ゴーレムを構成するタイルの一つだから、ゴーレム系の魔物を倒せばいくらでも取れる。はっきりいって粗大ゴミだけど一応は珍しい素材だし、なんか役立つんじゃないかと協会で買取だけはしてるから。ほら、見てみな、山のように在庫のタイルだらけだよ。」
「使えないんですか?」
「使えないね。下手に魔力を通しすぎると発熱しすぎるんだよね。逆に、魔力が足りなければなんとなくぬるいぐらいしか発熱しない。これで料理を作ってみた事があるが、全然制御できなくてね。肉を煮込めば生煮えだわ、魚を焼けば丸焦げだわ。ただ、タイルだからか無駄に頑丈だよ。」
「頑丈なら、そのままタイルとして使えばどうなんです?」
「それ単体で魔道具だから、無効化出来ないんだよね。床のタイルに使ってうっかり魔力でも通したら、火事にならなくても足の裏を火傷するだろうね。」
なるほど、発熱しかしなくて制御できないと。そして、頑丈。普通のタイルとして使えなくはないけど、うっかり魔力を通したらそのまま発熱しちゃうから、使えない。制御出来ないのが厄介だな。
「単体で魔道具ってことは、魔術回路が組み込まれてる訳ではなくて、そういう素材って認識でいいですか?」
「そうだね。ただ、小さくしすぎると効果がなくなるね。」
「小さくしても使えるんですか?」
「タイルそのものが発熱してるっぽいからね。」
「なにかの素材に使ったりとかって。」
「料理器具や暖房器具に組み込んでみようかと試みたもの好きはいたけど、それぐらいなら他の魔道具や魔法を使えば解決するんだ。」
「あー…。」
「結局『魔法で良くない?』なんだよ。魔法未満の魔道具やドロップ品は、ただの役立たず。粗大ごみだね。そもそも、ダンジョンから持ち帰ってくるならば、そんなゴミよりも、魔石を沢山持ち帰って来て欲しいさね。まぁ、もっと珍しくて高値がする素材なんてゴロゴロあるし。ゴーレム系がでるダンジョンって、基本鉱山なんだけど、そこでゴロゴロ取れる魔鉄のほうが、普通に利用価値があるしね。」
そうか、別にそれに魔力を流して発熱させたところで、自分の魔法で発熱させれば良い訳か。火魔法が使えるなら、そのまま魔法を使えばいい。
「うーん。世知辛いなぁ。それはそれとして、10枚ください。」
「本気かい?まぁ、商売だから売るけどさ。返品は受け付けてないけど大丈夫かい?」
「構いません。」
まぁ、それだけ念押しするってことは、そうなんだろうな。ただ、まぁ一応ね。DIYでなんか出来るかもしれないし。あとは、庭で雪を溶かすのに使えるかもしれないから、ちょっと試してみたいんだよね。ま、ものは試しだ。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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