もしかすると触手の方が賢いかもしれない。
同居人は、『水流』という名前を気に入ってくれたようだ。これからよろしくね。愛称は『るーちゃん』にしようかと思ったけど、「その愛称で普段から呼ぶのか?」と考えた時に、自分で呼ぶのはちょっとな…となった。まぁ私は普段は、みると呼ぶか。その当人…当触手?はクーラーボックス水浴びをしている。私もあとで、水でも浴びようかな…。
ところでだ。
「そういえば、アレどこやったっけ。」
水流がクーラーボックスから飛び出てまで、見つけた石。拾った後、確か机の上に置いておいたハズだ。…あったあった。自然の石にしては形がととのった、水晶のような石だ。正体がわからないので、ネットで調べてみる。
うーん。石で調べているけど、それらしい石がでてこないな。水晶ほど透明ではないんだよな。そもそも形が綺麗すぎる。宝石の類でもなさそうだし、一体なんの石かな。まぁでも石の正体が判明したところで、どうするってのもあるんだけど。石が沢山紹介されているウェブページなんかをみても、それらしい石は見当たらない。…そもそも自然石じゃない?人工物?
「そういえば、そもそもなんで水流はこの石に反応したんだ?触手がただの石に反応する?いや、そんなことはないな。…触手が反応する?もしかしてこの石に、魔力がある?」
可能性はある。となると石で探してもでてこない。『魔石』で探索者協会のページを、調べなければならない。残念ながら私には探索者の素養がないので、魔力なんかを感じる事ができないのだが。…探索者協会のページを開いて『魔石』で検索する。
「…あぁ、やっぱり魔石なのか。」
どうやらこの石の正体は魔石の一種らしい。どの種類までかは分からなかったが、見た目がそっくりだ。ほぼほぼ魔石であるのは間違いなさそうに思える。
「…で、だから何なんだ?」
魔石をひろったところで、使い方もわからなければ、探索者ではないのでそもそも売却もできない。つまり処分方法がない。ただの一般人が持っていても、あまり意味がない。時間をかけて調べても、結局「たぶんそうだろう。」ということが分かっただけで。特になにもない。多少の知的好奇心が満たされるだけだ。
「…あれ?なんで魔石が、裏庭に落ちてるんだ?」
まぁ、どうでもいいか。…そんなことを考えると、触手がまたクーラーボックスから顔を出してきた。今度は飛び出さないでくれよ。まだ新聞紙敷いて無いんだからさ。…そう思って触手を見ていると、こちらを向いたまま動かない。…何かを伝えようとしている?
「ん?なにか用でもあるかい水流?」
そう尋ねると水流は左右にその体を揺らす。やはりなにか用があるようだが。何を伝えようとしているのか、まったくわからん。
「…すまん。ジェスチャーじゃわからん。」
そう言うと、私の言葉が伝わったのか、力なくクーラーボックスに戻っていく。やっぱ水流も、ただの触手じゃなさそうなんだよなー。どう考えても知性があるんだよな。
下手すると私より賢いかもしれない。
別の作品もあります。よしなに。
愛用のクッションがどうもなにか変
https://ncode.syosetu.com/n4475kl/
 




