当たらなければ、どうという事は無い。
「おはようございます。先輩、ちゃんと髭剃り出来たみたいですね。」
「そりゃぁ、普段面倒くさくて剃ってなかっただけで、髭剃りぐらいはできる。」
「裏野さん、残念ながら信用してないので。」
「解せぬ。」
髭を剃っただけで、この言われようである。確かに久々に剃ったけどさ。
「髭剃りの後のケアは?」
「やった。本当に必要なのか?」
「必要です。髭剃り後はケアしてください。」
「それに、なんで化粧水が二本も必要なんだ?」
「アフターシェーブローションと化粧水です。目的が違います。併用してください。」
「アフ…何?」
「アフターシェーブローションです。」
「…必要なのか?」
「必ずやれ。」
「イエッサー。」
正直美肌とか、まったく興味無いんだが。やらないと殺されそうだ。冗談抜きで、ちゃんとやらないとダメそうだ。ちゃんとやらなかったらおそらくは、神埼の正拳突きを味わうことになるだろう。絶対に喰らいたくはない。
「砂塚ちゃん、コンタクトはどうします?眼鏡から変えたほうが良くないですか?」
「いえ、駄目です。絶対コンタクトの管理ができません。細菌感染が怖いので駄目です。」
「あー。分かる。」
「人を何だと思ってる。」
「「駄目人間。」」
それはそうだけどさ。最初からだけど、社会不適合だって言っているだろうに。そんなやつをリーダーにしたのはお前らだぞ。文句言うなよ。いや、文句は言ってないか。ただ、強制連行はされたけど。…やっぱりリーダーにする仕打ちでは無くないか?逆に事やると絶対セクハラ・パワハラになるだろうに。女性二人組が、その腕力で男性を拉致するのは問題にならないのはなんでや。こんな世の中を許すな。
「ま、ちゃんとやってるのならいいです。そんな事より、装備の更新の話をしましょう。今日の目的それですし。」
「あぁ、真っ先に神埼の装備の見直しだろ。」
「そうですね。今のところ神埼さんが、一番ミスマッチしているので。」
「標準的な駆け出し用の探索者の装備セットだけど、これじゃ駄目なの?」
「駄目ではないんですが、通常考えられる戦闘って武器を使うんですよ。」
「殴ったほうが早くない?」
「どうして戦闘の事になると、神埼さんは急にIQが落ちるんですか?」
「ひっどーい!」
やっぱりこいつ、バーサーカーかなんかだろ。神埼。しかも、IQが落ちるだけじゃなくて、実際にちゃんと戦えてるのがおかしいんだよな。どうして、あの速度の触手を手刀で叩き落とせるんだよ。おかしいだろ。
「という訳で、神埼さんの主な戦い方が格闘戦になるので、護身用の武器と格闘戦向けの装備が必要です。これは、初心者向けの装備セットでは解決しません。現状、棍棒がただの重りと化してますし、でかすぎるシールドは行動阻害にしかなってません。」
「あ、それ感じてた。棍棒とシールドが邪魔だなって。」
「まぁそうだな。全身、防刃の強化スーツとか、急所に軽量のプロテクターとか付けて、可動領域が広いというか、行動しやすい装備のほうが神埼向けだろう。」
「その通りです、裏野さん。そしてそういう軽量かつコンパクトな装備って、初心者向けの『とにかく防御力』の発想の装備とは、相容れないんですよ。」
「つまり、戦闘スタイルで何を重視するかという問題だな。素早さと攻撃力特化の神埼では、防御力特化の装備はお荷物でしか無い。」
「満点です。やはり裏野さんは自分に興味があることだと、頭の回転が早いですね。」
「…皮肉か?」
「褒め言葉です。」
まぁ、普通に考えたら分かるだろ。軽戦士に、重戦士が持つような盾を持たせてもなんの意味も無い。ゲーム的に言うと、アタッカーにタンクの装備をさせても、持ち味を殺すだけだ。神埼はその身体能力を活かした、高速移動と格闘攻撃が持ち味。拳闘士とか忍者とか、そういった類の戦闘スタイルになる。つまり、こういうことだな。
「もう少し噛み砕いて説明するか。神埼に盾は不要。なぜなら神埼は、攻撃を避けるから。当たらなければそもそもシールドなんか要らない。それでも避けられない攻撃を受けた時は、全身スーツで防御。そしてスーツでは保護されない急所は、軽量のプロテクターで固める。」
「あー、なるほどです。」
「では武器は?」
「メリケンサックと重りを仕込んだ靴…だと古典的だな?現実解は、ガントレットとスパイクブーツ。」
「80点です。悪くないですが、スパイクブーツは地面の状況によってイマイチです。それなら古典的でも、重たくて硬い靴の方が、まだ応用が効きます。」
「…む、確かに。対応できるフィールドと状況の広さ、それに敵との相性等、色々と考慮すべきだ。条件が定まっておらず、様々な状況下に対応しなければならないならば、汎用性の高さを考えなければいけないか。」
うっかりしていたが、スパイクブーツでは地面環境次第では行動が阻害される。当然それは神埼の戦闘力の低下に繋がる。古典的だが重たいだけの靴のほうが、対応できる局面が広い。
「となると、なんだ。ガントレットは確定だろ。足の方は、なにかもっと良い装備が有るのか?」
「有ります。実はなんですけど、つま先に鉄板が仕込まれている安全靴でいいです。というのも、神埼さんの蹴りってつま先なんですよ。だから、つま先に重りがある方が、加速と威力がでます。」
「なるほど。理解した。」
なるほど、安全靴でいいのか。
「あとは何かあるか?」
「まぁ、格闘メインとは言え、近接武器は持っておいたほうが良いですね。邪魔にならないならナイフあたりですけど、刃物は扱いが面倒くさいんですよねー。」
「だが、棍棒は邪魔になるだけだぞ?…いや、それこそメリケンサックの方向で行くと、打撃武器で取り回しが良いものが一つ有る。トンファーか。」
「えぇ、トンファーなら邪魔になりません。神埼さんの装備は『ガントレット』『防刃・耐衝撃スーツ』『プロテクター』『トンファー』『安全靴』この五つを購入でいいと思います。予算内で、しっくり来るものを選んでください。後で私も確認します。」
「はーい!」
神埼の装備が一通り決まったとなると、次は私の装備か。ちょっと楽しみだな。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
https://ncode.syosetu.com/n4475kl/
青空設置しました。
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