科学でなんとかならない場合でも、魔法は意外となんとかしてくれない。
「という訳で、この容器がコンポスターでミミズ達が魚のアラ等を分解して出来たのが堆肥だ。これらを分解して堆肥を作るこのシステムをコンポストと呼ぶ。…というのは、たぶん今までの私の話からなんとなく理解してくれてると思うんだけどどうだろうか?」
早速、土流にコンポストについてきちんと説明をした。今まで土流とミミズ達にやってもらっていた事の説明である。土流とミミズ達は食事を貰っているだけだが、それが実はこれこれこういう目的があると言うことをきちんと説明する。今までの生活から、土流がこの話を理解できるだけの知能があるのは明白である。
「で、今ある段ボールコンポスターは、もとは微生物の力を借りて発酵というか、分解というか、そもそも土流とミミズ達がそれをするための設計になっていないんだ。だから、完成した堆肥だけを取り出すのが難しい訳なんだ…これも理解できるかと思う。」
土流の反応を伺いながら、コンポストについて説明を重ねていく。見た目はちょっと太くてでっかいミミズが、うねうねしているだけだが最早慣れたものである。ちゃんと話は伝わってる。土流は正しくコンポスターという容器と、コンポストというシステムについて理解しているハズだ。そして、中身の状態についても。
「まぁ、要するに、完成した堆肥だけを取り出したいんだが魔法でなんとかなったりしないか?」
そう伝えた次の瞬間には、コンポストの中身がずずずと移動を始める。ミミズ達と分解途中の生ゴミが右側に、なんとなく堆肥っぽいのが左側に。堆肥っぽいのはまださほど量は多くないが、ちゃんと出来ているようだ。それからキラキラ光ってた結晶も、一塊になって整理されてそれなりの大きさの魔石の結晶となって分別されていた。できるもんだなぁ。
「魔石も分別してくれたのか!ありがとう!」
感謝を伝えると土流は、「どやぁ」と言わんばかりに喜んでいる。魔法でなんとかなるんだなと関心すると同時に、「もう全部土流に任せれば良いんじゃないかな。」という、人間不要論が持ち上がってくる。なにはともかく、これで堆肥が取り出しづらい問題は一応土流の魔法を使えばどうにでもなるということが判明した。…そういえば。
「これって、ミミズ達に伝えて普段から分別する事もできるのか?」
そう伝えた所、肯定の返事。つまり、今みたいにまとめてやらなくても普段からミミズ達に分別させる事もできるって。そうなるとすごく便利だ。わざわざコンポストの中身を複雑にしなくても、ミミズ達がなんとかやってくれる。結果としてコンポストの設計がシンプルになる。
つまり、完成した堆肥を勝手に下層に運んでくれるのであれば、大まかにいえば三層に分別するだけでよくなる。上段が生ゴミを投入してミミズたちが分解する『分解層』、中段がまだ分解途中のものと堆肥になったものが混在している『中間層』、下段が完成した堆肥を溜めて引き出しで取り出す『堆肥層』だ。メンテナンスができるように、各層を引き出しできるようにしておくけど、基本的には堆肥ができて溜まったら、堆肥層だけ取り出せば良い。
尚、この時点では気がついてないが、私が理解していなかっただけで、市販のミミズコンポストも大体このような作りになっている。つまり、私が正しく理解していなかっただけである。にわか知識でなんとか理解しようとしていたが、何もしなくてもミミズ達は賢かったのだ。
…さて、大方の設計は理解したところで、問題は保温機能である。屋外にあるミミズコンポストを、温めるには、どうしても科学の力では不都合がでる。魔法で温めればいいが、火魔法はちょっと怖い。そこで、探索者向けのアイテムカタログを見ていたのだが、その中に、保温や加熱用のアイテムなんかもいろいろあったので、いくつか候補を確認しているのだが、なかなか希望を満たすものが存在しない。
例えば、『保温石』『蒸気石』『保温テント』『ぬくもりワッペン』など意外といろんなアイテムがある。これらは、基本的には魔道具と考えてもらって良い。それぞれ、利用目的というか効果やランニングコストが異なるので、いろいろと確認しているのだが…。
●『保温石』
あくまで保温用。魔力消費は控えめ。最初に魔法等で加熱が必要。
●『蒸気石』
熱い蒸気を出す。魔力消費はそれなり。水が必要。水に魔力が含まれている場合は、その魔力を消費する。
●『保温テント』
テントの中身を保温する。一定の温度を保つ。魔力消費は控えめ。ただし、極度の寒冷地では使えない。
●『ぬくもりワッペン』
装備品。服などに取り付けると装着者の体温を一定で保つ。装着者の魔力を消費する。
まぁざっくり説明するとこんな風に、魔力消費だとか用途だとか当然ながら異なる訳だ。更に温度調節ができるとかできないとか、もっと細かい機能なんかもあるが、とりあえずは一例である。今はコレぐらいの認識でいい。
さて、結論としては今あげたアイテムは全部使え無さそうだ。例えば『ぬくもりワッペン』は装備品なので、明らかにコンポスターには使えない。当然駄目。また、『保温テント』の魔力消費では、裏庭では使えなさそうだし、設置場所に困るだろう。テントの中の通気性も気になるし、メンテナンスも面倒だろう。『蒸気石』は良さそうがだが、24時間稼働できるかと言われると微妙なのと、温度調節がめんどくさそうだ。それに、ずっと蒸気がでているということは、今度はコンポスター内の湿度が高くなりすぎる。『保温石』は一見良さそうだが、最初の加熱が曲者だ。最初の加熱具合によって効果時間が異なるようだし、結果的に魔力消費も高い。
まぁ、こんな風に、魔道具は便利なものが色々存在している。しかしながら、コンポスターの保温の為に使おうと思ったらなかなか条件が厳しい。…あぁ、そうか、ちゃんと条件を先に洗い出しておくべきだったか。確認しておくべきだろう。
「うーん。魔力消費は低ければ低いほどいいよな?機能としては、加熱じゃなくて保温程度で問題ない。一定の温度で保てればいいので、細かな温度調節も必要ない。メンテナンスが出来て、コンポストを丸ごと保温できれば良い。いや、ミミズ達のコロニー分も必要だけど、それはまた別の話だし。で、あれか24時間稼働。これが問題か…。」
つまり、私が面倒をみてなくても、自動で長時間動いてもらわないと困る。最低でも24時間で、可能なら冬の間ずっと。まぁ冬の間ずっとみたいな場合は、もはや産業用品だろう。せいぜい数日は保ってくれると助かる…って所が現実的だろう。浅はかながら、「魔法を使えばなんとかなる。」そんな事を考えていたのだが、魔法はそれほどなんとかしてくれる訳ではないらしい。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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