触手 in ウエストポーチ(仮)
地上に帰還して、一通り検査されたが「問題なし!」と判断された。内臓も無事だとよ。ポーションのがぶ飲みのおかげもあるだろうが、やはり腹に巻き付いていた触手がなければ、間違いなく穴が空いていただろうから、少し良くわからない。その後、砂塚と橘さんに首根っこを掴まれながら、葦附ダンジョン地上施設の小部屋に連れて行かれると、探索者協会の偉い人っぽい人が来て、あれこれ喋らされた。
猿のこと、隠し通路の事、触手の塊の事、それがどろどろに溶けた事、シマシマの事、大きな魔石の事…あれこれを一通りしゃべった後、解放された。湖や隠し通路は、後日なんとかして早急に調べるそうだ。あと、シマシマのやつは砂塚が死体をきっちりと持ち帰ってくれたようで、いろいろと調べるらしい。一時的に協会が預かることになるが、シマシマにもあるだろう魔石などの販売金額は、これも後日きっちり算定して払ってくれるだと。パーティーで討伐したけど、決定打が私だったので、全額私のものになるってさ。砂塚と神埼がそれでいいって言ってたし、ありがたく貰っておこう。
ただ、武器や防具の清掃まではやってくれなかった。まぁ私物だし仕方がないか。結局、ケイビングスーツも棍棒も緑の液体でべっとりだし、他の装備も触手のヌルヌルでベトベトだ。徹底して洗濯・清掃しなければ使え無さそうだ。あと、シマシマに突き刺したフラッシュライトは無事壊れた。あの目ん玉に「くれてやる!」とは言ったが、本当にくれてやる事になるとは…。これは後日、西田の店で買い直しだろう。
まぁあれこれ代金は後日貰えることになったが、トータルで見たら黒字になった気がするんだけど、今日の現金収入はゼロだ。ネズミの魔石はあったけど、あのあとダンジョンは買い取りどころじゃなかったし、もろもろ全部後日にされた。つまり、キャッシュフローで見れば大赤字になってしまった。財布の中身では、自販機のジュースすら買えやしない。
まぁ、つまり、一言でいうと辛い。
言えたじゃねぇか。
…はぁ。
流石にベットベトの状態で帰宅は出来ないので、葦附のシャワーだけは貸してもらえた。スーツも棍棒も全身も流して見た目は取れたが、なんかやっぱ気になる。まぁ、とりあえず帰れればいいし、疲れているので、ベタベタになってなければいい。どうせ私服はロッカーの中で着替えるし、帰りは神埼の車だし。新聞やタオルを引いて、車内が汚れなければ問題ないだろう。細かい清掃は帰ってからでいい。
ので、適当に清掃してよしとした。正直早く帰りたい。あ、ちなみに緑の液体は、一部協会によって回収された事だけは言っておく。触手の方は全部溶けてなくなってしまったので、持ち帰れなかったが、シマシマに関係するあれこれはのこっているので、まぁ、なんか調べるんだろう。見たことないヤツだったし。
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「ぐぇ。」
帰って早々に、水流に飛びつかれた。自室の扉を閉めたら、それはもうすごい勢いで。帰りが遅くなったし、心配してくれたんだろう。土流も虫かごから出てきて、待っていたようだ。ごめんて。…流石に死にかけた事は言えんか。無理だな。
探索者としての道具や装備を床に適当に置いて、PC前で横になる。正直ぐったりだ。神埼の車で送ってもらえなかったら、今頃どこかの道端で大の字になってるだろうな。
そういうもろもろを含めて、神埼と砂塚とも話が必要だろうが、しばらくはダンジョン探索は休みだ。まぁ探索者協会には何回か呼び出される事になるだろうが…事情聴取と現場確認ぐらいは付き合わざるを得ないか?できれば断りたいが、非協力的として目をつけられるのは困る。
「痛い痛い痛い。」
水流にしては、いつも以上にスキンシップが過激である。それほど心配させたか、あるいは他の触手の匂いがするからか。もしくはあの緑の体液のせいか。感覚としては、飼い猫がじゃれついてきているようなものだ。猫で例えるなら、「お前、外で他の猫の匂いつけて帰ってきんじゃねーよ!」ってところか。こっちだって、男の触手プレイには需要は無いんだ。
ポーチ、特にポーチの中身についてはこの後ひっくり返して念入りに洗浄した方がいいだろう。ポンプでダンジョンから水をくんで、裏庭でベタベタを洗い流す方向でいこう。ちょっと流石に風呂場ではやりたくない。緑の液体が流れた風呂場なんかを使いたくないからな。裏庭が汚れるぐらいのほうがマシだ。
そうやって、水流にじゃれつかれるままに任せていると、急にぱっと水流が離れる。満足したというよりかは、本当に何かに気がついたかのように。
「…ん?どうした?」
土流も同じく何かに気がついたようで、二人共々、私が床に投げ置いた探索者セットを注意深く見つめている。水流が探索者セットを漁りだし、土流がその後方でスタンバイする。…あ、これ、前衛と後衛だ。…とか、そんな呑気なことを考えていると、水流が、私が腰に着けていたポーチを転がす。中はまだちょっと粘液が残ってるからこぼすなよ…。
と思ってたら、水流が中身をぶちまける。水筒やらハンマーやら入っているので、本当はやめてほしい。フラッシュライトとかも入ってたが、その分隙間が空いていて、がっつり粘液が侵入しているから裏庭でひっくりかえそうと——
「あっ!?」
出た。
出てきた。
出てきてしまった。
水流に転がされたポーチから、様々な道具に紛れて出てきたのは、小さな茶褐色のぶよぶよ。手のひらでコロコロと転がる程度の大きさしか無いが、この色は見覚えがある。大部分がぐじゅぐじゅに溶けて消えてしまった、あのシマシマの寄生虫によって操られていた触手の塊と、同じ色をしている。
水流と土流に睨まれたそれは、絶体絶命とばかりである。小さな身体をふるふると震わせて、その場から動けなくなった。
一方で私も震えだす。やってしまった。よく確認しなかった為に、ダンジョンから生体を持ち出してしまった。やばいな。今からでも…いや、それ言ったら、家も捜索されるかもしれん。終わった。言えんわ。…っていうか、こいつ、操られていた触手の本体!?更には元はこの大きさってこと!?
駄目だ。面倒事が増えた上に、うちで面倒見るしかなさそうだ。なんでテイマーのスキルを持ってないのに、同居の触手が増えるんだ。…はぁ。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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