備えておきたいし、備えておくべきだ。だが、備えられない時はどうする?
何をやっても手応えがない。投資とリターンってのはあるが、今のところ投資ばっかりでリターンを一つも得られていない。プラベートダンジョンもそうだが、葦附の方も今回の探索は散々歩き回って疲れただけだ。コンポストは堆肥が得られるまでまだまだかかるし、ハーブはレモンバームがわさっと増えているけど、ローズマリーとタイムは大量に使えるってほど余裕があるわけじゃない。
やることはそれなりにあるし、一定のゴールは設定されているのに、それに向かっての進捗が思ったよりよろしくない。あれをするにもこれをするにも、結局はお金と努力が足りない。そしてそれらは、すぐになんとかなるものではない。水流と土流との日課を消化して、神埼とダンジョンに出かけて、そして、売れない魔石ばかりが瓶に貯められて行く。焦ってはないけど、なんというか何をしてもうまく行かない時の虚無感を感じる。
実際、人生なんてそんなものだ。地道な努力こそが近道。理解ってはいるけど、それでもお金は出ていく一方だ。健康保険料に、スマホの基本料金、毎月返済する奨学金。一方で収入は不安定。水流が暴れた一件で、まとまった金額の収入は得たけど、そんな収入があるのは稀だし、それに頼る気は無い。おかげで一時的な余裕はでたけど、基本的に私物の処分で、ごまかしごまかししながら生きている状態だ。
お金になりそうな事とか、手を付けたい事とかもあったが、どれもうまく行かなかった。…なら、なんらかのバイトなりなんなりができればいいのだが、もう社会人としてやっていける気がしないため難しい。10年なんとか仕事して出た結論が、「私は社会人に向いてない。」だ。いや、そもそも人間に向いてないんだろうな。
…この苦しみから抜け出したいけど、すぐに抜け出すことは不可能だ。今はただ、目の前の事を頑張るしか無い。報われるかどうか、分からないけれど。
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第二階層の探索から数日が経過して、いよいよ第三階層に進む事になった。当然、今度の探索は神埼だけじゃなくて砂塚も一緒だ。というか形式的には、砂塚の引率に私と神埼がついて行く形になる。Cランクの協会職員の案内のもと、ルーキーの特訓という形だ。本来はこんなダンジョンじゃなくて、もっと大手のダンジョンでやるらしいが…。そうそう、砂塚の他にもう一人サポート要員の探索者の人が一緒に来てくれるらしいが、名前を忘れた。相変わらず、人の名前を覚えるのが苦手だ。
そういう訳なので、次の探索に、なにか追加で持ち込める道具が無いかを検討している。砂塚と神埼は、普段の装備と道具で大丈夫だと言っているけど、初めて挑む第三階層にはかなり不安がある。なにか使えるものがあれば、やはり持ち込みたい。
そもそも可能ならば、事前に階層やモンスターの情報を把握して、ケースバイケースに合わせた装備や道具を準備するべきだと考えている。普段からあらゆるパターンを想定してあれもこれもと装備や道具を無駄に持ち歩くのは、機動性の面でよろしくない。確かに究極を言えば…これは前にも言った気がするが「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に」というのが、一番望ましい。だが、それが出来れば苦労はしない。
それが出来ないのならば、必要な分を事前に必要なだけ準備して、その範疇でなんとかする方がまだなんとかなる。だから事前情報が欲しいし、事前に備えをしておきたい。だが、砂塚は「今回は知らないまま第三階層に挑みましょう」ということで情報を教えてくれない。確かにその経験を積むための探索なので、それが正解なんだろう。
だが、あまりちゃんとした探索を経験していないからこそ、漠然とした不安だけが膨らんでいる。結局の所、「探索者として一回ちゃんと探索を経験しよう」という話なのだが、「そのちゃんとした探索をするのが怖い」…という説明で伝わるだろうか?つまりは「探索者としての熟練度をあげるために、事前情報無しでちょっと深い探索に行くけど、とても不安があるのでなにか準備できる物があるなら準備しておきたい。」訳だ。
漠然とした不安を少しでも和らげるために、「準備できる物があるなら準備して安心を得たい」という、なんとなくの心理。無駄だと分かりつつ「準備しておいて良かったね。」で、なんとなくの安心を買いたい。
で、そんな事を考えながら床でごろごろしていたら、視界の端でこっそりと水流と土流が私の棍棒とケイビングスーツに、なにやらイタズラをしているのが見えてしまった。…いや、この二匹はイタズラはしないな。一体何をしているのかと、気がついていないふりをしてそっと視界の端で観察を続ける。よくよく見ると、魔石の瓶から魔石を拝借してそれを土流が砕き、水流がそれを練り上げて棍棒とスーツになんからの文字を刻みつけている。見たことがない文字だ。いや、図形か?やがてなんらかの図形が完成したかと思うと、その図形は棍棒とスーツにすっと溶けて消えていく。
私の知らないところで、なんらかの事態が進行しているのを確信した私は、さすがにこのまま放置する訳にはいかず、水流と土流に声をかける。
「水流?土流?なにしてる?」
そう声をかけると、イタズラが見つかった子猫のように「僕達何もしてませんよ?」という感じで、そろそろと逃げていく。水流はクーラーボックスに、土流は虫かごの土の中に。…うーん。一体何をしてたんだ、お前たち。
別作あり〼
愛用のクッションがどうもなにか変
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青空設置しました。
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