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悪夢

悪夢


「人生で最も楽しいことは何か?」と聞かれたら、私は迷わずに眠ることと答えている。


眠ることは全く楽しい。


私はほぼ毎晩夢を見る。夢というのは人によって見えかたが違うらしく、モノクロだったり、音がなかったりするらしい。その点私の夢はフルカラーで音も聞こえる何なら、料理を口に入れると薄味だが味もする。


一日の面倒事が終わり━━驚いたことに私のような者にも日常の雑事という物がある━━、床に入り親族にも見放され、友人のいない私はいわゆるイマジナリーフレンドたちと一人楽しい会話をしながら眠りにつく。

ちなみに私のイマジナリーフレンドは幼児が共に過ごす物とは違い実在感はなく、あくまで私の頭の中だけで創りあげたものだ。


私は夢を見るのが好きだ。夢の中では様々な楽しい出来事が起きる。明晰夢では自分の好きな夢を見られるらしい。素人が耳をかじった程度だが話を聞くとどうやらそれでは眠りが浅くなってしまうらしい。冗談ではない。私は夢を見るのが好きで眠りついているのに、それでは私が厭う日常生活を営むための体力を回復させるためだけの作業ができないではないか。


日中におけるいかなる作業及び言動は出不精の私にとっては忌むべき物であり、床に横たわり眠りにつき、夢の中で過ごすことこそ私の最も楽しい時間なのだ。


その為、夢を見ずに目を覚ますと何だか損をした気になる。またもや知ったかぶりだが人間は眠ると必ず夢を見ているらしく、目が覚める直前にその夢の記憶が消去されるらしい。


ちなみに、酒で飲みつぶれて意識を失うのは通常の眠りと違って夢を見ない。


しかし、私にはそれでは意味がないのだ。楽しい夢を見て目を覚まし、今まで見ていた夢の内容を牛が食物を何度も口内で吐き出し咀嚼しつつ、胃袋に落とし込むかのように、床の中で何度も思いだしながら消化していくのが好きなのである。


現実世界ではでき得るはずのない、友人や心躍る物語など記憶に留めておきたいとは思うが、枕元にペンとノートを用意して目が覚めた時に、今まで見ていた夢の内容を書き留めたいとも思うが、これはいわゆる“夢日記”というやつで続けると現実と夢の区別がつかなくなるという危険な行動らしいので、実際に行動に移したことはない。

大体が、不精者の私が寝起きにそんなことができるはずもない。



精神障害者手帳3級の私でもこれ以上、等級をあげたくない。


私は一応精神障害者のはしくれなので、精神系の薬を処方されている。


そのお陰かどうか、私はここ数年悪夢を見た事がない。ところが、入眠前に飲む薬を飲み忘れたのか原因か、私は久しぶりに悪夢を見た。

内容はよくある逃げ場のないディストピア物だったと思う。何しろ夢というのは目が覚めた直後からそのストーリーを忘れていくものなのだから、しかし記憶になくなってもその強い不快感は私の胸に残り続け、数日間眠ることを躊躇させるものだった。



幼い頃の私はよく寝小便をする子供だった。幼い頃の私も悪夢に苦しめられ、夜を恐れ、震えて眠る子供たちの一人だったのだろうか。


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