早く言いたい
「何でもいい」
この言葉を言いたい。
言いたければ言えばいいとは、思うけれど、何時でも言いたい訳ではない。
恋人に言いたいのだ、欲を言えば、夫婦になってから言いたいのだ。
もっと本音を言うならば言われたい。
ちょっとジト目な感じで、ため息混じりで、その言葉が似合う女の人に言われたい。
高望みだとわかっているから、僕は言いたい。
「何でもいい」
今日の夕飯は何が食べたいと言われて、僕は
この言葉を言いたい。
幸せな 何でもない日々が
続いていくような象徴かのようなこの言葉を。
テレビでもみながら。
あるいはお風呂に入るまえに。
仕事で疲れたような声を出しながら。
「何でもいい」
この言葉を言いたい。
日常的に言いたい。
貴方はいつもそうと呆れられるほど言いたい。
わかってもらえなくても言いたい。
困るのよなんて可愛い反応してもらいたい。
なげやりにお茶茶漬けをだされたとしても。
それが何故かたまにイラっとくる言葉だとわかっていても言いたい。
パートナーとしての気遣いが足りてないと罵られても言いたい。
可愛げなくて癇癪をおこされても、険悪な雰囲気になったとしても言いたい。
言えた状況は幸せなことだと噛み締めれる。
最悪、それで幸せな時間が壊れたとしても言いたい。
別れることになるような些細な切っ掛けになろうとも。
「何でもいい」
本当に何でもいい。
さほど好きでもないスーパーの半額シールの煮付けや、冷えたご飯に生卵をかけたものや、コンビニで買った菓子パン、食べ飽きた安い袋麺。
とっ散らかった狭い部屋で一人。
スマホ片手に食べていると思う。
「何でもいい」
この言葉を恋人に一度だけでも言えるような人生は彩りに満ちているのだろうと。
変に拗らせている