振られ人
今日、雫はバイト、誠華は生徒会か。
俺は課題をするのを忘れて教室に居残りだったし今日は1人で帰るとするかな。
俺はトントンと荷物を整理する。
「好きです! 付き合ってください!」
大きな声が外から響いてくる。
ここ4階だぞ。
そして、少しするとうわーんと大きく泣くが聞こえてくる。
振られたんだな。どんまい。
俺はリュックを背負い帰ろうとすると急に教室の扉がバーンと開く。
夕日が赤く照らす教室の中、涙目で目が赤く腫れた男が鼻をすすり悲しみに暮れながら自分の席に座り帰り支度を始める。
うちのクラスの人だったんだ。
ていうか、ここ4階。
来るの早すぎ。
そっと帰ろう。
さてと、今日は家でゆっくりラノベでも読むとするか。
今期から始まった「友達100人できるかな?」の最新刊だ。
俺は期待に胸を膨らませていると振られた人が立ち上がり急ぎ足で歩く。
俺はチラッと振られた人のカバンを見ると「友達100人できるかな?」のキャラである瞳知里 黒だ。
「あ、友100……」
俺がポロッと出た言葉に振られた人はスっと俺の方を振り向く。
そして、次第に顔はパァと明るくなりさっきまで泣いてたのが嘘みたいになる。
「お前も知ってるのか、友100」
「え? あぁまぁな」
やべぇ、何気に雫達以外のクラスメイトと初接触だ。
何話せばいいんだ?
※読まなくていいです
「やっぱ、友100っていいよねぇ。主人公のひたむきさが胸に来るって言うか。でも、この話を面白くしてるのってやっぱヒロインである黒ちゃんなんだよね。黒が幼なじみ以外で初めての友達になることでストリーが始まったというか、やっぱ黒ちゃんいての友100というか。まずそもそもの話キャラデザ最高だよな。ヘッドフォンを常に首にしてたりパーカー着てたりで見た目暗いし普通に人を睨むような子だけど根はまっすぐだから主人公の変な行動にツッコミをいれれる。しかも、原作6巻で若干主人公に惹かれてる節があるんだよね。でもさ、主人公って幼なじみを振り向かせるために友達作ってる訳だから敗北確定みたいな所あるんだよね。普通にクズだよね。俺が主人公なら絶対黒ちゃん選ぶ。だって、黒ちゃんって見た目可愛いのは前提としてまず中身はすごく優しいし猫とかいたらニャーニャーって言って行動まで可愛いとか普通に反則だよね。俺もニャーニャー鳴くからニャーニャー言い返して欲しいそれから……」
普通にヤバいやつだった。
こんなことなら急ぎ足で帰れば良かった。
キーンコーンカーンコーン
さっきまで赤く照らされていた廊下はいつの間にか電灯の白色に照らされている。
当たりが暗い。
「――で、原作3巻126ページ12行目の「ウォシュレットに綺麗されとけ」ってセリフはトイレを舐めるぐらい必死になってた主人公に言ったいいツッコミなんだよね。いつもはこういうセリフ後の地の文にゴミを見るような目で言うって書かれてるけど流石に心配さが度を超えて頭を撫でながら言うんだ。それがもうさいこ――」
「もう帰れお前ら、何時だと思ってんだ」
士郎先生が止めに入ってくる。
助かった。
「あ、もう強制下校の時間か。ごめんね、こんな話して」
「……ダイジョウブダヨ」
「だいじょばないやつだ」
俺は圧倒的情報量にまだ処理が追いついてなかった。
「ダイジョウブダヨ」
俺はまだまだ冷えてる水筒を頭に当てながら帰る。
「いやぁ、ごめんごめん。好きな物の話しなると熱中しちゃって」
「いや、それは別に大丈夫」
「そういえば、名前教えて。俺、修平」
「俺は竜」
「竜、よろしくな」
修平は手のひらを俺の方に向ける。
俺はそれにハイタッチをする。
「ていうかさ、俺今日振られた」
「あぁそういえば振られてたな」
「え!? 見てたん?!」
「いや、普通に聞こえてきた」
主にお前の好きです宣言と泣き声。
修平はハァとため息を吐きながらトボトボと歩き始める。
「俺、めちゃくちゃ好きやったのに。あ、どこが好きなのかって話をすると――」
「そーなんだ! それは可哀想だね!」
「どうした? そんな大きな声急に出して」
修平は不思議そうに俺を見つめる。
あぶねぇ、また死ぬところだった。
お姉ちゃんはまだ不老不死の薬開発してないんだぞ。
ていうか、誰かを好きになる……か。
俺にはそういうの全然ないから応援してぇな。
「……俺がコンサルタントしてやるよ」
「どゆこと?」
「恋愛コンサルタント、高野竜。君を今日からモテ男に」
「おぉ、マジか」
「今日からは無理だけど明後日の土曜日に学校前集合で。振ったあの子を振り向かせよう」
「いくぞ、俺は。おぉぉぉぉ!」
修平の熱意が声にあらわれあまりの大きさに俺の耳はしばらく何も聞こえなかった。
土曜日、約束してた通りの時間帯に修平はやってくる。
俺は雫と誠華の3人で一緒に待っている。
「おはよう、竜。……そちらの2人は?」
俺達はポケットからサングラスを取り出しカチャッとかける。
「「「恋愛コンサルタント……です」」」
ドヤ顔で修平を見る、
「変なやつらだな」
お前に言われたくない。
俺達はとりあえず必要なものを買い揃え近くにあるという修平の家へ行く。
「竜以外の男の子家とか初めて」
「陰キャだもんな」
「そこあんまり関係ないだろ」
俺達は修平に誘われるがまま洗面台にへ行く。
「学校じゃ基本制服だからね。まずは髪の毛を意識できるようになろう」
「具体的に何をするんですか雫先生」
恋愛コンサルタント高野竜の仕事は女子高生2名の斡旋である。
結局恋愛というのは相手の気持ちが大事だからな。
女子のことは女子に聞くのが1番。
童貞の俺じゃ女の子の気持ちなんて皆俺のこと好きなぐらいしか知らんな。
「ワックスを付けていこう。修平の髪の長さ的に取る量は枝豆3つ分ぐらいかな。これを手で擦ってから髪に馴染ませる」
雫は鏡を見ながら修平に指示を出す。
すると、みるみるうちに修平の髪の毛が綺麗に出来上がっていく。
ワックス1つでこんな雰囲気変わるもんなんだな。
「いいね。じゃあ次は誠華よろしく」
「任せろ」
誠華は雫と交代すると修平の爪を綺麗に整え顔の毛などの剃り方を教える。
やはり、清潔感は大事ということか。
俺もやっておこう。
全てを終えた修平は鏡を見る。
小綺麗になった自分を見てふふんと鼻息を鳴らす。
「よし、じゃあ後は会話練習だ。どんな性格か教えろ。私が演じる」
「あ、誠華やめといた方が――」
「まず、優しくて――(以下略)――」
昼休憩を挟まないとやってられないぐらい長かったな。
途中から俺と雫はゲームして遊んでたからな。
「よし、じゃあ行くよ。3、2、1」
「アクション」
「あそこのセーターマジいいよね。バイト代奮発しちゃおうかな」
星奏は隣に友達がいるていで独り言を話す。
修平はすごい手汗を流しズボンを擦る。
そして、覚悟を決めたように話しかける。
「あ、昨日はどうも。今日一緒にご飯食べない?」
「アーウト。急すぎだよ」
「もう少し徐々に詰めるようにしないと。最初は軽く会話をするだけそしてそこから楽しい会話を長引かせてお昼ご飯を一緒に食べて普通に連絡を取るような中になる。この段階を忘れてはいけないぞ」
「はい!」
修平は深呼吸をして出直す。
これは、長くなるぞ。
翌日、俺達は学校にへと着く。
覚悟の決まりきった顔をした修平は自分を落ち着かせるために自分の席でじっとしている。
「あいつ、いい目をしているな」
「覚悟の決まったいい目だ」
「こりゃ成功確実だね。お赤飯炊いとこっか」
俺達は修平の勝利を確信しお祝いの準備をする。
「でさー、あそこの店のリボンちょー可愛かったんだよね。他のデザインも欲しい」
ターゲット、友達と談笑しながら登校、そして着席。
修平、出動。
修平は席を立ちターゲットの近くに接近する。
「あぁ、修平の勝ちだ」
修平はおはようとターゲットに声をかけるとターゲットは気まずそうにおはようと返す。
「今日いい天気だね」
「え? あ、うん」
「それでさ、今日の小テストの範囲のプリント忘れたから写真撮らせて」
「いいけど」
いいぞ、会話は順調だ。
「あ、そ、それと昨日何した? 俺、マンガ読んでた」
「私は彼氏とデート」
……
俺達の空気が凍る。
彼氏の有無は聞いてねぇよ。
修平は固まったまま動かない。
「そ、そうなんだ。とりあえず、プリントありがとう」
修平は笑顔を取り繕ってすぐさま俺達の所に来る。
「……彼氏いた」
「そ、そうなんだぁ。残念だったな」
まぁ、そもそも振られた相手にもう1回行くなんてどんだけ肝座ってんだ。
「この飾り付けは?」
「え? あぁ、これは……」
やばい、お前のお祝いだなんて言えねぇ。
「今日竜の誕生日なんだよ」
「え? あ、そうなのか? すまん、なんも持ってきてない」
「いや、別にいいよ」
雫、こいつ嘘こきやがって。




