竜の家
俺は家のドアを開ける。
「ただいまー」
「「お邪魔しまーす」」
俺がドアを開けると2人は一気に家に入ってくる。
「あ、おかえり。それと雫ちゃんと誠華ちゃんいらっしゃい」
リビングから華蓮姉ちゃんは顔を出す。
俺は足早に俺の部屋を目指す。
「ほら、竜。忘れてる事あるでしょ」
華蓮姉ちゃんが俺を呼び止める。
「2人がいる前では...」
「何言ってるの竜。ほら、おかえりのハグは?」
「いやだぁ! やめてくれ」
華蓮姉ちゃんは俺にハグをしてくる。
2人はニヤニヤしながら俺を見る。
「じゃあ私達は先に行っておくぞ」
「じゃあねぇ」
2人は先に俺の部屋に行く。
「お姉ちゃん離して!」
「だぁめ」
「もう社会人なんだから男の1人や2人捕まえてそいつにやれよ」
「私は博士課程に進んだのはいいんだけどやる事はもう終わっちゃったからねぇ」
それに関しては人間じゃないだろ。
どうやったらそうなるんだ。
「もう暇だからこうしてるぐらいしか楽しみがないの」
「もういいだろ。早く遊びたいんだ」
「しょうがないなー。ていうか早く彼女作りなさいよ」
姉ちゃんはそう言って俺から離れる。
「言われなくてもだよ。あ、そうだ。バイトしたいからバイト先探しといてよ」
「はいはい」
姉ちゃんはそう言ってリビングに戻る。
俺が部屋に行くと2人がもうマンガを読んでいる。
「あ、遅かったね」
「あのお姉さんすごいよなぁ。現役で東大理科二類に合格して今は博士課程だろ? それに博士課程ももうほとんど終わったって言ってたし」
「はいはい。俺は姉に比べてると落ちこぼれですよぉだ。そんな事はいいんだよ。早くお前をボコす」
アニメによく出てくるようなありきたりすぎる設定なお姉ちゃんはほっとけ。
「雫と2人で来ても私に勝てない癖に勝てると思ってるのか?」
「今日は秘策があるんだ。なぁ雫?」
「そうだよ。一昨日ぐらいの夜に考えた最高の秘策がね」
「楽しみにしといてやる」
俺達の秘策を思いしれ!
「...負けた?」
「あぁっれぇぇ?おっかしいいぞぉ?」
「...いや、雫が地上に残って竜が道連れで私を倒すという作戦は弱者なりによく考えたと思うが1回しか通用しないからな、それ。1回されればすぐに対策できるに決まってるだろ」
「俺達の」
「6時間が...」
「それだけ考えてそれかよ!」
誠華は俺のベットに倒れ制服のリボンを緩める。
「こうなったら仕方ない。最終奥義だ」
俺は自分のフィギュアケースからある1個のフィギュアを取り出す。
「なんだ?」
「お前の大好きな...ショタのフィギュアだ」
「はっ!」
「誠華、私達の言いたいこと分かるよね?」
「ひ、ひきょうだぞ!」
俺はフィギュアを誠華に近づける。
「わ、わかったから!手加減すればいいんだろ?」
「よし」
「勝ったね」
俺と雫は勝ち誇る。
「言っとくが手加減するだけだからな」
誠華は俺からフィギュアを取ると自分のカバンに入れる。
「そうこなくっちゃ」
俺はネクタイを取り本気を出している雰囲気を出す。
雫もリボンを取り本気を出している雰囲気を出す。
「レディーファイト!」
「いやぁ勝った勝った」
「やっと勝てたね」
「これは勝負に含まれないと思う」
誠華は手加減というかコントローラーをほとんど動かしてなかったな。
「いやぁこれでやっと165敗1勝だな」
「やっと勝てたね」
俺と雫はスッキリしてベットに倒れる。
「全く、次から買収作戦は通用しないからな」
「誠華って魔法少女マミルマギカの男の娘キャラ好きだったよな」
「...買収作戦はありとする」
「よし来た」
「虚しくならないのか?」
「財力も実力だよ」
「ちなみにお前らの今の所持金は?」
「もちろん」
「ゼロ」
フィギュアは意外と高いのだ。
俺のフィギュアケースに入ってるやつだって高かったんだぞ。
「じゃあ今日はこの辺で」
「ばいばーい」
「また明日」
雫と誠華は自分の家に帰って行った。
俺はリビングのソファに座る。
「あっ竜、いいとこ見つかったよ」
「え?どこどこ?」
「最近出来た焼肉店。まかないもいいだろうし行っちゃいな」
焼肉店のまかない...肉か。
「ありがとうお姉ちゃん」
「はいこれ、求人募集の張り紙。それと履歴書とか色々」
めっちゃ色々してくれんじゃん。
ありがてぇ。
「お父さんが帰ってきたら晩御飯にするね」
「はーい」
俺は部屋に戻る。
「雫に写真送っておくか」
俺はスマホで写真を撮り雫に送る。
[ここどう?]
[なになに?私と一緒にバイトしたいの?]
雫からの返事が来た。
絶対最近ラブコメ読んだだろこいつ。
[一緒にやった方が楽しそうだなぁって]
[えぇ?竜って私の事好きなのぉ?]
[それはない]
[酷くない?]
俺はロリコンなんかじゃねぇんだぞ。
この見た目小学生が。
[そんな事よりここでバイトするか?しないのか?]
[するに決まってんじゃん]
よし、これでバイト中で暇な時に話す相手ができた。
まだ受かってすらないから一緒にバイトできるか知らないがまぁなんとかなるだろ。
「竜、ご飯よぉ」
「はーい。今行くからまってて」
お姉ちゃんに返事をしリビングに向かう。
「今日のご飯は唐揚げだよ」
「わーい」
「トッピングでマヨネーズもあるよ」
それは親父用か。
「あれ?親父は?」
「もう帰ってくるよ」
「ギャインでも来たの?」
「いや、今までの経験上」
あっなるほど。
「ただいまー」
親父が帰ってきた様だ。
「おかえりー」
「おかえり」
俺は椅子に座る。
「いただきまーす」
「お?今日は唐揚げか」
「お父さん、早く手を洗ってね」
「はいはい」
親父は台所で手を洗いすぐに椅子に座る。
「そういえば竜、初めての高校どうだった?」
「普通かな」
俺は親父と目を合わせずに会話する。
「そうか。早く彼女作れよ。お母さんみたいな素敵な人」
「お父さん、今の時代は彼女作れよじゃなくて恋人作れよって言わないとフェミニストに怒られるよ」
「俺の性自認は男だから別にいいよ」
「ダメよ。どこで誰が見てるか分からないのよ?」
いちいち気にし過ぎだと思う。
「ていうか俺は親父みたいなロリコンじゃないから母さんみたいな人は選ばないよ」
「俺はロリコンじゃない。確かに母さんは小学生並みの身長で童顔だがな素敵な性格の人なんだ。バカにするなよ」
「へいへい」
俺は半分聞き流す。
「ていうか姉ちゃん、勝手に俺の部屋からマンガ持って行っただろ」
「別にいいじゃん。兄弟なんだからさ。今度私のマンガを貸してあげるから」
「俺、別にBL本は好きじゃないんだけど」
「百合もある」
「借りる」
「お前ら夕食中にどんな会話してるんだ」
夕食中だろうがなんだろうが別にいいだろ。
「ごちそうさま」
「流しに置いておいてね」
「はいよ」
俺は食器を流しに置くとすぐに部屋に戻る。
「今日はアイツらとバイグラする予定があるからな」
今の時刻は...7時か。
先に風呂に入るか。
俺は風呂から上がりゲーム機のスイッチを入れる。
「通話開始っと」
<来たよ>
<早かったな>
<誠華は...まだだよね?>
<そうっぽいな>
雫が通話にやってきたようだ。
<ていうか証明写真って撮るのにお金かかるんだよね?>
<そうだな。俺は姉ちゃんからもらったけど...>
<お母さんからは借りにくいしどうしよう。所持金なんてないよ>
<うーん、あっそうだ>
俺はお姉ちゃんの部屋に向かう。
「お姉ちゃん、ちょっと頼みがあるんだ」
「どした?我が弟よ」
「実は...そのぉ」
俺はわざと頬を赤らめモジモジする。
「今日クラスで気になる人ができてぇ。今度遊びに行く約束したんだけどお金がなくて」
「なるほど」
「お願い!お金貸して」
「いいとも!弟の恋路を応援するのが姉の勤めというもの。しっかり成功させてこいよ」
「もちろん!」
俺は終始心臓をバクバクさせながらもなんとかお姉ちゃんからお金をもらい部屋に戻る。
「普通に言えば良かったのに。我が弟ながらバカだなぁ」
<よし、もらってきた>
<竜かっこいい。キャーキャー>
雫はかなり棒読みで俺を褒める。
<給料日になんか奢ってくれよ>
<女の子にお金を払わせるの?>
<そゆこと>
<ドケチだなぁ>
恋人ならともかく友人だぞ。
見返りを求めて当然だ。
<すまんすまん、髪を乾かすのに時間がかかった>
<別にいいよ。早くやろうぜ>
俺達は夜中までゲームをし続け翌日寝不足になっていたのは言うまでもない。