女装
「――ということから男子と女子が隣合う並び方は12組あるということになります」
先生が問題の解説をし終わると丁度よくチャイムが鳴る。
「丁度いい時間ですね。終わりします。起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
4時間目の数学が終わりやっと昼休みに入る。
「並ばせ方考えるのめんどくさいよ」
「雫はガッチガチの文系だからな」
「テスト、ギリギリ赤点回避って感じだったしな」
誠華が俺の隣の席から椅子を取って俺の席にお弁当を置く。
「そういえば、誠華。明日の3時くらいに駅前のスイーツ食べ放題行かない?」
「行こう」
誠華は食い気味に雫の提案にのる。
「誠華って意外と甘いもの好きだったんだな。チーズ牛丼が好きそうなのに」
「誰がチー牛だ。私は優雅にお茶する乙女なんだ」
「優雅にお茶する乙女なら銃撃戦ゲームで死体撃ちしながら煽ってねぇよ」
※死体撃ちとは死体に向かって銃を撃つこと。ゲームでは煽り行為になる。
「あれは敵が先に煽ってきたからやり返しただけだ。やられたらやり返す、倍返しだ」
「ていうか、俺も行きたい」
俺がそう言うと2人はしばらく間見つめ合う。
え? 俺もしかして2人になんかした?
「食べ放題の店、女子限定なんだよ。だから、竜は……」
「男女差別しやがって。心の性別が違うって嘘ついてやる」
「恥ずかしいから辞めてくれ」
最近俺、あんまり甘いもの食べなかったからすっごい食べたいんだよなぁ。
「……そうだ!女装しよう」
「男の矜恃とかないんか」
2人が呆れた顔で俺を見てくる。
「俺の天才的なアイディーアに驚いてる暇なんかねぇぜ」
「まぁ、竜がそれでいいならいいよ。でも、どうする?服とか持ってるの?」
「そこはお姉ちゃんに借りればいけるだろ」
「お前のお姉さん、平均で見れば身長高いしな。160cm代だろ」
「ちょっと連絡するわ。えぇっと、女装したいから服貸してっと」
「恥とかないんか?」
お姉ちゃんからすぐに返信がくる。
[分かったヨ。お姉ちゃんの服貸してあげるネ。竜ちゃんもお年頃ダナ]
おじさん構文にでもハマってるのか?
「帰りにウィッグ買えば完璧だ」
「そこまでして行きたいんやな」
「雫がお前の発言に驚きすぎて方言混じりじゃないと話せなくなったぞ」
「なんか、もう頭おかしなるわ。女装ってコスプレぐらいでしかする人いないだろって思ってたから」
「コスプレ以外でもする人は結構いるな。Yで検索かけてみろ、多分沢山出てくる」
「ままええわ。ここまできたら手伝ってやるか」
雫、驚いたらこんなになるんだ。
おもろ。
俺達は俺の家に行く。
「お邪魔しまーす」
「邪魔すんでー」
「邪魔すんなら帰ってーってここは関西じゃねぇぞ」
雫はまだ治ってないみたいだ。
「そういえば、手伝うって言ってたけど何か手伝うことあるか?」
「細かい所をチェックしようかなって」
「なるほど?」
いるか?
「ていうか、お姉ちゃんこんなに服持ってたんだ。いつも同じような服だから気づかなかった」
「竜にどれ着せる?」
「めちゃくちゃ露出派手なヤツにしよう」
「辞めてください」
肩とか、おへそとか、胸元とかが見えるようなやつはやめてください。
「とりあえず、ウィッグ被って」
「はいはい」
俺は雫に言われた通り、ウィッグを被る。
「竜はつけまとかは付けなくても大丈夫そうだね。ちょっとファンデーションとかつけた方がいいかもね。」
「お姉ちゃんの所からパクってくる」
雫が本気の目で見てきたので俺もやる気を出してお姉ちゃんの部屋に行く。
「ノックなしで入ってこないでよ。思春期なんですけど」
「いい歳した大人が何言ってんだ」
お姉ちゃんがいた。
いないと思ってたんだけどな。
「それより、女装は上手くいってるのかにゃ?」
「やってる途中だ。そうだ、化粧品貸して」
「本格的だね。いいよ、好きに使ってくれたまえ」
お姉ちゃんから大量に化粧品を貰いまた、俺の部屋に戻る。
「借して貰った」
「後は、ムダ毛を剃らないとだね。顔と腕をやって足は薄めのタイツで隠そう。胸パッド入れといた方がいいかもね」
「雫、貸して」
「持ってないよ。もしかして、私の胸の事をバカにしてるのかな?」
雫が拳をポキポキと鳴らしながら近付いて来る。
そこにお姉ちゃんが突然入ってくる。
「はい、これあげる。じゃね」
お姉ちゃんは胸パッドを渡すとすぐに部屋を出ていく。
盗み聞きしてたのか?
まぁいいや。
「服は希望ある?」
「スカート履いてみたい」
「おっけー。じゃあ、ロングスカートとTシャツにこのオーバーサイズシャツを羽織って。Tシャツはインしてね」
「分かった」
そういえば、さっきから誠華が静かだな。
俺は気になったので誠華の方を向くと俺のゲーム機でゲームしてやがった。
誠華はファッション興味なさそうだもんな。
「誠華さん」
「はいっ」
誠華は慌ててゲーム機の電源を落としこっちを向く。
「君には最重要任務を与える」
「なんなりと」
誠華はゲームしてたことバレてないと思ってそうだがめちゃくちゃバレてるからな。
別にいいけど。
俺ためにこき使ってやる。
「毛剃るの手伝って」
「それぐらいか。良かった」
ていうか、この雰囲気の中よくゲームできたな。
才能だろ。
「明日が楽しみだよ」
「お姉ちゃんに女の子になる薬でも作って貰った方が楽な気がしてきた」
明日のことを考えるとちょっとドキドキしてきたな。
完璧な女装をしてスイーツを食べまくるんだ。
俺は待ち合わせ場所に向かう。
「あ、雫、誠華。お待たせー」
「あ、竜。遅いぞこのやろ…う」
「おぉ」
2人はさぞかし驚いてるんだろうな、俺の可愛さに。
罪な男。
「思ってたより普通」
「大人っぽくしようかなって思ったけど竜の溢れ出る子供っぽさに服が負けたね」
「酷い」
頑張ってここまで来たのに。
結構周りの目線気にしちゃう中来たのに。
「男っぽい感じにした方が良かったね」
「でも、あの中にそんな感じのなかったししょうがないんじゃないか?」
「まぁ悪くはないんだろ。ならいいよ」
ていうか、なんか見られてる気がするな。
まぁ、いっか。
「そんな事より行こう」
「そだね」
「あ、竜は極力喋るなよ。声でバレるから」
「心得た」
俺達は目的の店に向かう。
目線を気にしすぎて歩いてるだけなのにすごく疲れる。
甘い物食べて回復しないと。
「着いたよ」
「女子しかいねぇ」
「当たり前だろ」
列に並ぶとあっという間に進み扉の前に着く。
やっと、食べれる。
「いらっしゃいませ。少々お手数ですが、免許証や学生証をお持ちでしょうか?」
嘘だろ。
俺は2人を見る。
2人も俺の方を見ている。
「あ、この子、忘れたみたいで」
「でしたら、入店は出来ないです。誠に申し訳ございません」
「理由とかってあります?」
「このお店は女性はどのようなスイーツが好きなのかを調査するための店なのです。そこに男性を絶対に入れないためですね。女装してたりされていましたら判断出来かねますから」
「なるほど」
「大変申し訳ございません」
俺達は列から離れ帰路に着く。
俺、女装までして来たのに。
ちょっとだけ名残惜しいけど女装とはおさらばか。
「コンビニスイーツで我慢しよっか」
「賛成」
「竜にはバツで女装で露出が多いやつを着させよう」
おさらば出来なかった。
我が弟の女装、普通すぎるな。
私は弟の女装姿を見るために後をつけている。
一応写真撮ってお母さんに見せたろ。
お父さんに見せたら
【「竜はトランスジェンダーなのか? なんで気づいてやれなかったんだ」
「いや、違うってただのじょそ――」
「父親失格だァァァ!」】
こうなりそうだし、やめとこう。
それにしても、男の子が女の子の格好をするのは背徳感があるね。
……そうだ!




