テスト期間
俺達は今俺の家で勉強会をしている。
勉強会をしている理由は丁度1週間後に高校生活初のテストが始まるからだ。
「……テストまでまだ1週間もあるんだよね?」
「やめろ、その思考になるな。その後に言う言葉はあれだろ? 息抜きにゲームしない? だろ。その言葉のおかげで中学の時のテスト期間は勉強なんて一切しなかったんだぞ」
雫は嫌な顔をしながら問題集を解く。
正直、俺もゲームしたい。
漫画読みたい、遊びに行きたい。
でも、高校の授業はちょっと難しいからな。
ある程度勉強しておかないと赤点取りまくって留年だ。
もし、俺だけが留年したらこの2人は俺に先輩呼びさせてくるだろう。
それだけは回避しなければならない。
「ここ、どうするの?」
「どれどれ」
俺は雫が質問してきた問題をじっくり見る。
「誠華、行け」
「分からなかったのかよ」
「数学は俺の得意分野じゃない」
俺の得意分野は国語とかの文系の問題なんだ。
ていうか、華蓮姉ちゃんに聞けば一瞬で教えてくれそう。
今はなんか研究に集中してるらしいしいいか。
「ここはな、a+bを適当な文字に置くんだ。仮に大文字のAとする、そしたら二次方程式みたいになるから因数分解して――」
「難しい言葉をあんまり並べないでよ」
「これ、中学生でもできる範囲だと思うぞ」
春休み遊びすぎて中学の時に習った事全部忘れた。
俺は何も聞いてないフリをして自分の勉強に集中する。
「これは?」
「これはまず、ABCの要素を含む個数を書き込んだ方がいいな」
「なるほど」
数学勉強しないとまずいな。
俺、ちゃんとは分からないんだよな。
「……一休みしない?」
「したら、一日中遊ぶ事になる」
「もう初めて3時間も経ったよ? それにお昼時だしお腹空いたでしょ?」
「まぁ確かに」
ご飯にするか。
お腹空いたしな。
腹が減っては戦ができぬと言うし。
うんうん。
俺は自分を納得させ、お昼休憩を取る事にした。
「課題の方は大丈夫か?」
「ちょっとヤバめかも。でも、まぁ大丈夫だろ」
「私はギリギリ行けそう」
どうせ、誠華はもう終わってるんだろうな。
答え写させてもらうか。
「ていうか、お昼ご飯食べるならどうする? どこに買いに行く?」
「ここはジャンケンをして負けたヤツのお好みで買いに行かせない?」
「お、いいじゃん。それで」
「「「ジャンケンポン」」」
俺と誠華はグーを出し、雫はチョキを出す。
雫の負けだな。
言い出しっぺの法則って本当にあるんだな。
「早く買ってこいよ」
雫は悔しがりながら外に出る。
そういえば、これって負けたヤツが選ぶんだよな。
なんか変なの選んできそうだ。
「何、選んでくるか。当てるゲームをしようぜ、誠華」
「いいぞ。お前には炭酸抜きコーラで私にはお子様ランチ、雫自身は近江牛のステーキと見た」
「落差やべぇな。じゃあ次は俺のターン。俺にはティッシュ、お前には板チョコ100枚、雫自身にはハンバーグセットだな」
「私のは致死量じゃないか。それに、お前のは食べ物ですらない」
流石に大袈裟にしたが雫の事だから俺達のより自分のを良くするはずだ。
そこは誠華と同じ認識のようだしな。
「ただいま」
もう帰ってきたのか。
雫は息を切らしながら玄関を開ける。
近くにコンビニってあったけ?
誠華も俺と同じように困惑してる。
いくらなんでも早すぎる。
そんなに時間経ってないぞ。
俺達が疑問に思ってるのを尻目にテーブルの上に持ってきた袋を置く。
「はい。竜のは焼肉のタレと白ご飯ね」
雫は袋から白ご飯が入った茶碗と焼肉のタレを取り出す。
……ありがとう、雫。
かなり当たりだ。
でも、なんでそのまま白ご飯を茶碗に入れて無事に袋から取り出せるのかを聞かせてくれないか?
「誠華のはうなぎのタレと白ご飯ね」
雫は袋から白ご飯とうなぎのタレを取り出す。
誠華も当たりじゃん。
なんだつまんね。
それより、なんでそのまま白ご飯を茶碗に入れて無事に――
「どうやって、白ご飯を食べろと?」
「「は?」」
こいつ、うなぎのタレと白ご飯の美味しさ知らねぇのかよ。
1から教えてやる。
俺が誠華の方に近づいていると雫はサッと手を出し俺を止める。
「ここは私がやる」
「誠華のやつを分からせてやれ」
雫はどうやって食べるのか悩んでいる誠華に近づく。
「物は試し、食べてみなよ」
「いや、だからどうやって――」
「これを!こうして!こうだよ!」
雫は誠華の白ご飯にうなぎのタレをぶっかけ、袋から取りだした箸でかき混ぜる。
「お上がりよ」
「い、いただきます」
誠華は1口食べる。
不味いという印象はなくそのままモグモグ食べる。
でも、別にこれといって美味しいとは思っていなさそうだ。
何が不満なんだ?
「……美味しいっちゃ、美味しいけど、なんか虚しくなる味だな」
うっ。
俺と雫は心に深いダメージを負った。
「ところで、雫のご飯は?」
「私はバイト先のまかないで貰った肉」
まぁ自分だけいい物っていうのは予想してたしなんの驚きもないな。
ていうか、まかない貰ったんだ。
俺はまだ貰ったことないんだよな。
週3は少ないのか?
「竜、台所使っていい?」
「雫は別にいいよ」
「私ならダメみたいな言い方だな」
「そらな。調理実習でフライパンを溶かした事がまだ頭から離れないんだ」
どうやったら、あんな事ができるんだろうな。
俺達がちょっと目を離したらなんかフライパンが溶けてたんだ。
それを見た俺達や周りのヤツら、おまけに先生までも唖然としてたからな。
お前に料理は絶対させないからな。
俺は椅子に座り焼肉のタレをご飯にかけて混ぜる。
雫が肉を焼いてるからか、すごくいい匂いがする。
この匂いを嗅ぎながらこれを食べるのはなんか虚しい。
誠華もこんな気持ちだったのかな。
誠華は食べ終わったのか、流しの方に使い終わった茶碗を持っていく。
「大丈夫? ちゃんとお皿洗える?」
「洗えるわ!流石に舐めすぎだろ」
フライパン溶かす人だからな。
皿とか割りそう。
「出来た」
雫は焼いた肉をお皿に盛り付け、袋から白ご飯の入った茶碗を取り出す。
「竜、その焼肉のタレちょうだい」
ここであげたら、こいつは美味しくその肉を食べるんだよな。
「……取引だ」
「はい、貰うね」
雫はサッと焼肉のタレを取るとお前にあげる肉は1つもないと言わんばかりの笑顔でこちらを見つめながら焼肉のタレを肉にかける。
「1枚ぐらい――」
「お前にあげるもんなんかねぇよ」
無慈悲だ。
ここに俺以外の天使はいないのか。
誠華は食器を洗い終わったのかテーブルに着くと再度勉強をし始める。
「よく、この状況で勉強できるな。なんとも思わないのか?」
「焼肉の匂いなら別にそこまで特別なものでも無いしいいかなって」
金持ち野郎が。
今日は姉ちゃん説得して焼肉に連れてって貰おう。
姉ちゃんの特許で得た収入は結構あるはず。
そういえば、姉ちゃんって何で特許取ったんだろ。
あんまり知らないんだよな。
帰ってきたら聞こ。
「今日の夜、ゲームしない?」
「テストはどうした」
「まだ、1週間あるからいける」
誠華は大きなため息をつく。
「竜からも言ってやれ」
「よし、やろう」
「やった」
「お前、さっきゲームはしないって言っただろ」
「1週間あるからいけるいける」
「どうなっても知らないからな」
誠華は呆れた様子で問題を解き続ける。
「どうせ、誠華もやるだろ」
「……まぁな」
「じゃあいつもの時間ね」
「「オッケー」」
ちなみに俺がゲームをする誘いにのったのはワザとだ。
雫を陥れるためにな。
目の前で焼肉を食べた罪はでかいぞ。




