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第8話 知られた正体(前編)

 赤くなっていた顔が、じわじわと青く染まっていくのを感じた。


 ……このゲームのキャラクターに、転生者だと勘付かれてしまった。

 しかもよりにもよって、モブではなくメインキャラに。


 というか、何で転生なんて発想が出てくるの?

 学文路岐以外は現実世界と変わらないから、この世界にも転生モノの作品はあるにはあるようだ。だけど……


〝転生してきたのか?〟


 その言い方だとまるで、この世界が異世界だと分かっているような―――



「おーい、ミツル~……」


 踊り場の下からの呼び声がこだまする。

 最近やっと聞き慣れるようになってきた、彼の声だ。

 ……最悪だ。


 階段の下に目をやると、そこにはやはりお手洗いから帰ってきたらしい八重垣くんが居た。


 心臓が止まるかと思った。

 恐らく、草薙くんも、この光景を目撃してしまった八重垣くんもそうだっただろう。

 暫しの沈黙。それを破ったのは八重垣くんだった。


「お邪魔、だったかな…?」


 そう気まずそうに尋ねながら、へらっと笑う八重垣くん。


 その言葉の後、私たちは瞬時に距離を取った。


「ちちちち、違うの……! これは……!!」

「そ、そうそう。これは…ちょっと……事故というか!」


 二人してしどろもどろになりながら、物理的な上から目線で八重垣くんに弁明をする。

 ……いや、これじゃ余計に誤解させてしまう!!

 だが、パニックで言葉が上手く出てこない。


 いたたまれなくなり、私は草薙くんの隣から逃げ出した。


「あっ、待て!!」


 階段を下り、八重垣くんの横を何も言わずにダッシュで通り抜ける。


 どうしよう。どうしよう。

 転生者だってことに気付かれてしまったかもしれない―――ということではなく。


 ―――八重垣くんにヘンな誤解をされてしまったかもしれないことだ!!

 ぶっちゃけそっちの方が問題だ。

 どうしてくれよう、草薙ミツル……転生者だと勘付いた挙げ句に、私とデキてる風な誤解を八重垣くんにさせるなんて……!!


(……闇討ちしようかな、草薙くんのこと……)


 風に涙を散らしながら、私は今後の草薙くんへの対処を考えあぐねるのだった。



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