表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹ちゃん☆ねるダイヤル  作者: 塩鮭 亀肉
第一の世界
9/17

三話・日常 その1

 次に響香に会おうと約束した日は来週の月曜日。まだ一週間くらい空きがある。

 昨日は妹神が去った後、来週に備えてどうするか考えていた。しかし、特になにも思いつかなかったので妹神に言われたとおり、待ちの姿勢でいることにした。


 あの神様のことをどれだけ信用していいのか分からないけど、確かに僕が何をすればいいか分からないので、そうすること自体は間違っていない気がする。

 なので来週まで普段通りの日常を過ごすことにした。きっといつも通りではないんだろうけど、それはあっちの世界の存在を知ったり、影も形もない妹の存在を知った今だからいえる話だ。だから、今の僕にとっては何か足りないと感じていたこの日常こそが平常通りのもののはずだ。


 目標が見つかることは生きていくうえで活力を与えてくれるのか、月曜日同様に普段よりはしっかりした学校生活をおくれた気がする。

 その様子は割と他人の目から見ても分かるようで、幼馴染の(だい)は「なんかいい事あったのか? あ、もしかして彼女でも出来た?」なんて言ってきた。それに対してもう一人の幼馴染の(けい)ちゃんも「え、あいちゃん、彼女で来たの?」と食いついてきたので大変だった。


 彼女が出来たわけじゃないけど、そのまま話せるような内容でもないため誤魔化すのに昼休み丸々消費させられたので、午後は微妙に疲れていたがなんとか乗り越えて、ちょっとだけへとへとになりつつ帰宅する。


 一時的になのか、これから下がるのかは分からないけど今日は結構涼しい。家の中に熱気が籠っていることもなかったのでリビングには寄らずに、自室に戻るとベッドの上で妹神がぐーすか寝ていた。


 予想外のものに三秒ほど頭も体も固まってしまう。


 なんでここにいるのか、そしてなんで僕のベッドの上で勝手に寝転がっているのかなど色々言いたいことはあるが、まずは起こすかそっと立ち去るか二択から行動を選択しなければならない。動き出した頭はまずの二択の選択肢を考え付いた。

 前者を選択した場合、色々な疑問をぶつけられるけど、ちょっと疲れているのに、相手をしなければいけないというデメリットがある。

 後者を選択した場合、とりあえずは難を逃れることができるけど、後で部屋に戻った時彼女がまた部屋の中に残っていて起きていた場合、なにかと文句を言われる可能性がある。たとえば「なんで起こしてくれなかったのか」とか。僕の部屋で待っているなら、起きて待っていてほしいし、なんだったら急に現れないで欲しいくらいだから、本当に「そんなこと言われましても」という感じなんだけども。


 どうしようかなと悩んでいると、彼女欠伸をしながら身体を起こした。どうやら強制的に前者を選んだ状況になるらしい。


「うぅん、ふゎ~……おはよう、お兄ちゃん」

「季節柄もう夕方ももう夜に近い方なんだけど……」


 まだ日は出てるけど、世界のカラーリングはやや橙がかったものになっている。閉めた覚えのないカーテンのせいでこの部屋からだと分かりづらいけど。


「ああ、うん、そうだった、そうじゃなくて、おかえりだった」


 まぶたを擦りながらいつもより、抑え目の声で彼女はそんなことをいう。神様にも寝起きとかあるのだろうか。

 ぼーっとした様子でこちらをじーっと見つめていた彼女が首を傾げた。


「ああー、えっと、なんだっけ?」

「いや、こっちのセリフなんだけど……」


 こっちからしたら、色々聞きたいことがあるくらいなのだが、完全に寝ぼけているらしい。神様がそれでいいのだろうか。


「……ちょっと待ってね」

「それも多分こっちのセリフかな、とりあえず僕は下に行ってトイレとか済ませてくるからそのうちに体裁くらいは整えておいて」

「ふゎ~……任せておいて~……」


 大きな欠伸がセットで付いてくるセリフに信頼性はあまりないが、一応は神様らしいし、戻ってくるころにはしっかりとしていることを祈って部屋の外に出る。いや、戻っていても、いつもの付き合うのが疲れるキャラクターになるとしたら、もしかしたらこのままの方が……とも考えたけど、話も出来ないのは流石に困るので、やっぱりいつも通りになっている事を願おう。


 用を足して手を洗ったあと、もうちょっと時間を稼ごうと、コップ一杯の水を飲んでから部屋に戻ると妹神がベッドの上に立っていた。


「おかえりー、おにいちゃーん」


 両手を広げ、元気いっぱいの笑顔でそんなことを言う。いつもの通りに戻っている事を願いはしたけど、いざ目にするとこれから疲れそうだと、ちょっとだけ気を落とす。


「う、うん、ただいま」


 とりあえずは彼女につきあって返事を返すけど、このやり取りにはそこはかとなく茶番臭がする。


「さてと、茶番は置いておくとして、今日お兄ちゃんのもとへ来たのには理由があります」


 茶番の自覚はあったんだ。というより、この神様自覚を持ってなにかすること多いなー。


「おにいちゃん、次に会う日まで時間が空いてもやもやしてるんじゃないですか?」


 昨日考えていたことを言い当てられて、少しドキッとする。あんまり神様らしくはないけど、一応は神様。もしかしたら僕の心の中を読むことが出来るのかもしれない。


「別にもやもやはしてないけど、でも確かに何か出来ることはないかなと考えている節はあるかも」


 彼女に心を読まれているとしたら、ちょっと不敬なことを思い浮かべることが多いので不安にはなるが、今回の提案自体はありがたい。ここは乗っかっておこう。

 肯定するようなことを言うと彼女は「やっぱり」という表情をして、ベッドの上から飛び降りてこちらに寄ってくる。いや、これ別に心のなか読めているわけじゃないかも。


「ですよねー、じゃあ、そのために、約束までに間が空いた時に出来る事講座を死に来ましたー、いぇーい」

「なんでそんなハイテンションなのかは分からないけど、まぁ、助かりはするかも」

「でしょでしょ~。それでなんだけど……、よい、しょっと」


 妹神は胸元からB5サイズくらいのホワイトボードを取り出す。

 どうやってしまっていたんだろう。先ほどまで服にそれほどまで大きなものが入っていたとは思えないのだけれど。色々と考える前にそんなことを思ってしまった。


「それじゃあ説明していきまーす」


 同じようにして蓋にスポンジっぽいのが付いたマジックペンも取り出した。それも地味にどうやってしまっていたのか分からない。普通ならぽろっと下から落ちそうなものなんだけど。


「えっとね、こうして、こう」


 彼女は一生懸命ホワイトボードになにかを書き込むと、それをこちらへ向けた。


「じゃーん」

「う、うん、えっと、それで?」


 自信満々向けられたボードに対して、僕はそんな反応しか出来なかった。

 描かれていたのはゆるい感じの猫のイラストだ。それだけだった。ホワイトボードを一面全部使うような感じの大きさで描かれた猫ちゃん、それと左上に丸いひらがなで書かれた「にゃー」の文字。これをみて、どう反応するのが正解なのか僕には分からない。


「可愛く描けた」

「う、うん、良かったね、それでその絵には何の意味が?」

「いや、ないけど、ちゃんと書けるか試しただけ」


 彼女は「猫ちゃん可愛く描けたからこのままにしておこう」と言って机の上に置いてからベッドまで戻り腰を掛けた。

 なんでホワイトボード出したんだろう。それは言葉には出さないでおこう。


「さてと、じゃあ説明していくんだけど」

「う、うん」

「お兄ちゃんは今のところ、妹ちゃんとは二回会っただけだよね」

「そうだね。先週の土曜日と月曜日にあっただけだよ」

「そして聞いた話をまとめた限りだと、そのどっちも多分妹ちゃんから見える状態であったよね」

「そうだけど……」


 もしかして何か問題でもあるのだろうか。思ったよりちゃんとした相談会になりそうな雰囲気を感じ、少しだけ姿勢を正す。


「だからこそのアドヴァイスなんだよ、ブラザー。今日はそれをしにきたのさー!」


 こちらが真面目に聞く気になった途端にそんな砕けた事を言い始めたので、思わずため息を吐きそうになった。実際にはしなかったけど、ちょっとだけ、間が空いてしまった。


「……それで、アドバイスってなに」

「それはだねー、お兄ちゃんがどっかしらで一日使って、妹ちゃんの観察をするって事だよ」


 ドヤ顔でそんなことを言う。そのドヤ顔も気にはなったが、それよりもその言葉の方が気になった。


「観察?」


 思わず聞き返すと、妹神は頷いてその説明をし始めた。


「うん、その通り、非干渉モードを使ってね、妹ちゃんの日常を覗いてみるんだよ。そうしたら、なにかしらわかることもあるんじゃないかなってね」


 つまりは覗き見をしてみてってことだ。

 彼女のことは彼女自身の口で聞いたことしか知らないし、あの世界の知識もほとんど彼女由来のものだ。確かに自分自身で手に入れた情報はそう多くないし、素の彼女を見てみれば新たに得られる情報もあるかもしれない。


「お兄ちゃん、たぶんだけど彼女の救い方、まだ分かってないでしょ。それに彼女が他の人からどう接せられているかとか、学校で何しているかとかね」


 それはそうなんだけど、思春期の女の子の私生活を覗き見するのもなんだか悪い気がする。


「それらを知ればなんかわかることがあるかもだよ、それじゃあね、お兄ちゃん」


 こちらの言葉を待たず、彼女がすっと消えていく。少し気が引けるが、ここは彼女の言うとおりにしてみるとしよう。珍しく言っていることに説得力はあったし。

 やるとしたら月曜日の昼かな。早めに移動して、放課後までは非干渉の状態で響香の様子を見てみるとしよう。

 学校を休むのは少し悪いような気もするけど、何度か休んでいるから別に皆勤が途絶える訳でもないし、この際だから一日だけなら休んでも構わないだろう。

 ちょっとした覚悟を決めてから机の上に視線を向けて、そこにあるものをどうしようか悩み悩んだ末、とりあえずは下手にいじらず壁に立て掛けておくことにして、バッグから宿題をとりだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ