47話。追放された闘神の息子は、戦闘能力のない外れスキル【植物王】を極限まで進化させて闘神を超えます。その2
「……その目。まさか、まだ何か奥の手を隠し持っているのか? ハハハハッ、どこまでもこの俺を楽しませてくれるな! よし、決めたぞ!」
親父が【雷槌】を掲げた。
「次の一撃でコレット王女の命を奪うとしよう。阻止したければ、出し惜しみなく全力で来るのだな。今のお前のすべてを見せみろ!」
親父は俺が何か狙っているのは見抜いたようだが、自分の有利は疑っていないようだった。
この戦いを楽しむクソのような余裕がある。
「何でも自分の思い通りになると思うなよ親父!」
「ふんっ、その意気やよし!」
親父から鬼気迫る闘気が放たれる。
おそらく、最大奥義の【雷神の鉄槌】で来るつもりだ。ヤツも手加減無しの本気だ。
「コ、コレット王女、ヤバいわ。下がってちょだい……!」
魔法剣士レイナが怯えながらも、コレットを背後に庇おうとする。
「いえ、ご主人様が、わたくしのために戦おうとされているのです。なら、わたくしもご主人様の勝利を信じて、最後まで共に戦い抜きます!」
コレットは気丈にそれを断った。そして、俺とリルに再度バフ魔法をかけてくれる。
「おおっ、コレット、すごい……!」
神獣リルの身体が輝き、各種ステータスが増大したようだ。
俺も身体に力がたぎるのを感じる。
『リル、聞こえるか?』
俺はリルに心の中で呼び掛けた。
リルは俺の召喚に応じ、空間を超えて出現した。なら、リルと俺には精神的な繋がりができているハズだ。
俺は召喚師ではないが、召喚師と召喚獣は離れていても意思疎通ができると聞いたことがある。
リルは俺の召喚獣的な存在になっていると、推測していた。
『うん、あるじ様』
リルの声が頭の中に響いた。
やはり、声を出さずとも、リルと意思疎通ができるようになっていたようだ。
『闘神ガインを倒そうと思ったら、最大奥義を放った直後。大きく力を消耗した瞬間を狙うしかない。それで、こういう作戦でいこうと思う……』
『うんうん』
リルは俺の作戦に静かに聞き入った。
これは一か八かの危険な賭けだ。コレットと打ち合わせができないのは痛いが、彼女ならきっと、俺の期待通りに動いてくれるハズだ。
「フェンリルとの相談は終わったか? では、幕としよう!」
親父はわざわざ、俺たちに作戦会議をする時間を与えてくれていたようだ。
俺たちを舐めているのではなく、最大の力を引き出させた上で、撃ち破りたいと考えているのだろう。
闘争好きの親父の悪癖だった。
「レイナ、巻き添えを喰うぞ下がれ! リル、行くぞ!」
「うん! あるじ様、リルに乗って!」
俺はリルの背中に飛びった。さらに【世界樹の剣】を連射式クロスボウに変形させる。
リルが大地を蹴り、疾風となって親父の周囲を駆けた。
「なにかと思えば、手数で攻めるだけか!?」
親父が憤怒する。
俺は360度、全方位から親父にクロスボウの連射を浴びせた。リルが矢の一本一本に炎の魔法を付与し、攻撃力をアップさせる。
だが【雷槌】から放射された雷が矢を弾き、叩き落とす。まるで結界のように紫電が親父の周囲を覆う。
クロスボウの矢では、この雷撃の領域を突破できない。
だが問題ない。予想通りだ。
リルがどんどん加速し、亜音速に近づいていく。コレットのバフ魔法で、俺の身体能力が向上していなかったら、振り落とされてしまっていたかも知れない。
そうだ、俺ひとりでは闘神ガインには、かなわない。だが、俺たち3人の力を合わせれば、きっとヤツに届く!
「つまらん! 遊びは終わりだ!」
親父がコレットに向かって突撃し、【雷神の鉄槌】を放とうとする。
「光よ我が盾となれ、【聖盾】!」
コレットが防御魔法を発動させた。もし、恐怖のあまり棒立ちになっていたりしたら、ヤバかった。
気丈な性格のコレットは、闘神に抵抗することを選んだのだ。その選択こそ、俺が彼女に期待したものだ。
「コレット、やっぱりお前は頼りになる仲間だよ!」
俺は【世界樹の剣】を投槍に変形させて、投げ放った。リルの速度がプラスされた投槍は、音速を超える勢いで、親父ではなくコレットに向かう。
「【世界樹のタワーシールド】!」
「なにっ!?」
親父の【雷神の鉄槌】を大盾に変形した【世界樹の剣】が防ぐ。これは地面に固定するタイプの極めて防御力の高い盾だ。
「あぁああああ!?」
それでも衝撃と電撃を完全にシャットアウトすることはできず、コレットが悲鳴を上げた。
だが、コレット自身がかけた防御魔法が、威力が減衰した電撃を弾いて、その身を守る。
さら【世界樹のタワーシールド】の自動治癒効果が、彼女の傷を癒やす。コレットは倒れたが、かろうじて一命を取り留めた。
「武器を手放しただと!?」
「リル!」
俺は親父に突撃を仕掛けた。
【世界樹の剣】をすぐさま手元に召喚。究極形態【ユグドラシル弐式】に変形させて、至近距離より【天羽々斬】(あめのはばきり)を撃ち込んだ。
「ぐぅおおおおお!?」
親父は【雷槌】を振って、迎撃した。
だが、奥義を放って消耗した直後であったため、数段パワーが落ちていた。
【天羽々斬】(あめのはばきり)の威力によって、【雷槌】が大きく弾かれる。
親父のガードが一瞬だけ外れた。
ここが最大にして最後のチャンスだ。
スキル【植物王】発動!
「アコカンテラの破城槌!」
俺は総重量10トンの毒の大木を目前に召喚。同時にそれを植物武器化能力で、城門を破るための攻城兵器『破城槌』に変形せ、親父の額に叩き込んだ。
攻撃力 = 質量 × 速度の2乗
大質量を亜音速で叩き込めば、それは凄まじい破壊力となる。たとえ材質が木だとしてもだ。
そして、アコカンテラは触れただけでも、毒の樹液で人体に多大な損傷をもたらす。それが親父の頭に叩き込まれて爆散した。
「がぁっ!?」
親父は白目を剥いて、仰向けに倒れる。
【雷槌】が、力を失った手から離れた。気絶したのだ。
一瞬の静寂。
「ああっ! ご、ご主人様が、ご主人様が勝ちました!」
尻もちをついたコレットが大歓声を上げた。
万夫不当の闘神が、外れスキル【植物王】によって倒された瞬間だった。
ついに勝てました。作者も感慨深いです。(/・ω・)/
このあとの展開も練ってあるので、ご期待ください。
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