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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
5章。ユースティルア攻防戦

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33話。敵の飛竜部隊を消し飛ばす

「リル、コレットと俺を背中に乗せてくれ!」


「うん!」


 俺はコレットを抱きかかえて、神獣フェンリルの背に飛び乗った。

 敵はエルフ王家の血を絶やすためコレットも狙ってきている。なら最も安全なのは、最強無敵の神獣フェンリルの背中だろう。


「逃がすと思いまてして? 一斉にかかなりなさい!」


 ディアドラが空を仰いで号令を発する。


 グォオオオオオン!


 雄叫びと共に、狂戦化(バーサーク)した飛竜どもが、俺たちに突っ込んできた。


「ちっ! こいつはチョイと厄介だね」


 リズが舌打ちしつつも、弓を構えた。サーシャはディアドラを牽制するだけで、手一杯のようだ。両者の間で、一撃必殺を狙うべく練り上げられた魔力が荒れ狂っている。


「飛竜どもをまとめて薙ぎ払う! リル、あわせてくれ!」


「うん! あるじ様!」


 俺は【神剣ユグドラシル】の力を全解放。斬撃を放ち、天を割る衝撃波を発生させる。リルも咆哮と同時に、空を焦がす灼熱の炎を放った。

 そのふたつは合わさって、飛竜の群れをことごとく消し飛ばす。


「……そんな、まさかっ。アルフヘイム最強の部隊が」


 ディアドラは衝撃に言葉を失った。


「【灼熱地獄インシニレイト】!」


 その隙に、サーシャはSランクの攻撃魔法を撃ち込んだ。ディアドラの立つ地面に巨大な赤い魔法陣が出現。範囲内を超高熱の炎で満たし、地面が赤熱して溶ける。


「アッシュ隊長! 今のうちに行ってくださぃ!」


 サーシャが切迫した声を上げる。今ので倒れきれなかったらしい。


「ああっ! リル、ミリアの居場所はわかるか? あの娘が危ないらしい。全速力で向かってくれ!」


「うん。わかった!」


 リルが大地を蹴って、この場から離脱する。


「す、すごすぎます! 今のは、まさしく神剣ユグドラシルの【天羽々あめのはばきり】……!」


 コレットが興奮した様子で俺に語りかけた。


「……【天羽々あめのはばきり】って、なんだ?」


「天上の神々すら斬ることのできるという神剣ユグドラシルの力です。世界樹は自己防衛能力として、神や邪竜を滅する力を持っています。特にドラゴンに対しては効果てきめんです!」


 伝説では確か、世界樹の根を齧っているヤバいドラゴンがいるんだっけ? 主にソイツから身を守るための力か。

 確かに今の一撃は、自分でも身震いするモノだったな。


 と思うと同時に全身から力が抜け、俺は言い知れぬ虚脱感に襲われた。コレットが慌てて俺を支える。


「ご主人様、大丈夫ですか!?」


「あるじ様、体力がゴッソリ無くなっているよ?」


「うん? ああっ……そうだな」


 頭を振って気を確かに持つ。いつの間にか、かなりの体力を消耗していた。


「人の身で神に匹敵する力を使えば、生命力を削ることになると、言い伝えにはあります。すみません、わたくしがもっと早くエリクサーを作っていたら、ご主人様を癒やして差し上げられたのに……」


 そういうことか。

 どうやら神剣ユグドラシルの力はノーリスクで使えるモノではないみたいだ。


 もしかすると、エルフ王家にエリクサーの製法が伝わっているのは、【天羽々あめのはばきり】を撃つためだとか?

 ふと、そんな考えが浮かんだ。


「こんなに連続で神剣の力を使ったのは、初めてだったから気づかなかったな。抑え気味でいかないと……」


「申し訳ありません! 【世界樹の剣】に選ばれた王など、ずっと現れていなかったので……わたくしもその本質に気づくのが遅れました」


 天地を割る衝撃波【天羽々あめのはばきり】を使えるのは、おそらくあと一発が限度だろう。

 俺はスキル【植物王ドルイドキング】で、【世界樹の剣】をただのロングソードに変化させ、神剣の力を封印した。


「ぅおおおおお──ッ! す、すごいぞ! 敵が一掃だ!」


「あ、あれはまさか神獣フェンリルでは!?」


 街のあちこちから歓声が上がった。その中には、神獣フェンリルの威容に恐怖する声も混じっている。


「フェンリルは俺たちの味方だ! 俺の仲間、獣人リルがフェンリルだったんだ。リルも一緒に戦ってくれるぞ!」


 バレてしまった以上、もうリルの正体を隠しておく意味はない。俺は兵たちを鼓舞し、人々を安心させるため大声で繰り返し叫んだ。


「えっへん! リルはあるじ様の配下だよ!」


 リルが誇らしげに言う。


「誠ですか!?」


「そんなまさか、アッシュ様は神獣を支配されているのか!?」 


 敵襲に右往左往していた兵士たちが、希望を浮かべた。


 グォオオオン!


 だが、飛竜の軍団はすぐに後続が押し寄せてくる。恐ろしいことに1000匹近い飛竜を投入しているらしい。中には敵兵を空から運ぶ空挺部隊もいた。


 その飛竜に向かって、100匹ほどのグリフォンが襲いかかっていった。

 グリフォンの背には、俺が牢から解放したエルフたちがまたがっている。


「アッシュ陛下! 我らグリフォン獣魔師団もユースティルアに加勢いたします!」


「申し訳ありません! すでに戦端が開かれ、我らの言葉に同胞たちは耳を貸してはくれませんでした!」


 彼らは音声拡大魔法で、街全体に響くような大声で告げた。

 思わぬ援軍に地響きのような歓声が上がる。


「エルフどもの一部が、俺たちに加勢してくれるだと!?」


「アッシュ様の説得がうまく行ったんだ!」


「よし! 頼んだぞ、グリフォン獣魔師団!」


「「御意であります、我が君!」」


 グリフォン獣魔師団から、返答が響く。

 飛行戦力のないユースティルアにとって、彼らの加勢はありがたかった。

 『我が君』とかいう呼び方は、ちょっとどうかと思うが……


「俺たち【銀翼の鷲】の冒険者も、忘れてもらっちゃ困るぜ!」


「みんなでこの街を守るのよ!」


 【銀翼の鷲】の冒険者たちも、飛竜に魔法や弓矢を射掛けていた。

 街に降り立った敵兵とも、激しい戦闘を繰り広げている。


「城壁の外にも敵が押し寄せているようだぞ! 急げ!」


「「おう!」」


 冒険者たちは各自の判断で、敵の迎撃に向かう。

 彼らもまた、生まれ育ったこの街を救おうと必死だった。


 リルが街を駆ける。

 景色が流星のように流れ、すぐに領主の屋敷が見えてきた。屋敷の手前にある中央広場に騎士やレイナたちに守られたミリアがいた。


「お兄様!?」


「うぉ!? な、なんだ、この化け物は!?」


 中央広場に飛び込んで来た俺たちを見て、ミリアたちが驚愕する。誰にも神獣形態のリルを見せていなかったので無理はない。


「むっ! 化け物、違う。リルだよ!」


 リルが可愛らしい少女の声で、ぶぜんと告げる。


「その声、リ、リルなの!?」


 ミリアはすぐに事態を飲み込めないようだったが、今はそれどころではない。


「ミリア、無事だったか!? ミリアが狙われているって情報を知って、慌てて飛んできたんだが……」


 俺は周囲の様子をうかがいながら告げる。


「ええっ!? ホントですか! お兄様が、私を守るためにわざわざ……! か、感激です!」


 命の危機にさらされているというのに、なぜかミリアは喜びを噛み締めている様子だった。


「ミリア様を狙ってきた敵の空挺部隊は、片付けたわ! あたしの魔法剣の敵じゃなかったわね。次は城門の守備に回った方が良いかしら?」


 レイナが得意げに報告する。彼女をミリアの救援に向かわせて正解だった。


「いや、ミリアを狙っているのは、どうやらギルバート……」


 俺は言葉を途中で止めた。

 異変が起きたのは次の瞬間だった。

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