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短編(コメディー)

今宵は満月、月の下にて

作者: 御厨カイト


「いやー、天気予報じゃ雨って言っていたから心配だったけど晴れてくれて良かったね。」


「ホントだよ。せっかく作ったお団子が無駄になってしまうところだったから良かった。」


「それに月もまん丸、満月で良い月見日和!さぁ、さっそく食べよう。」


「うん、そうしよう。」


そうして、僕らは縁側に腰を下ろして、月を眺める。


「……今日も月が綺麗ですね。」


「死んでもいいぜ?」


俺がそう返すと、薫は「フフッ」と微笑んだ。

俺もそれにつられて「ハハッ」と笑う。


「それじゃあ、乾杯しよう?」


「あぁ」


『カンパーイ!」


俺はビール、薫はチューハイを互いに缶をぶつけた後にゴクゴクと飲んでいく。


「うーん!なんか秋の夜風に吹かれて飲むお酒は美味しいね!」


「確かに。いつもとは違う場所だからか美味しく感じる。」


「ねっ!そうだよね!」


薫は「ニシシ」と笑いながらそう言う。

俺はその顔を見て少し微笑みながら、お酒を一口クピリと飲む。


「あっ、そう言えばどうしていきなり月見しようって言ったの?」


「うん?」


「いや、潤がこういうことをやろうって言うのが珍しいなと思って。いつもこういうイベント物は私からやろうって言うからさ。」


「うーん……別に理由は無いんだけど、ただ単にやりたいなと思って。」


「なるほどね。でもやってみて良かったよ。綺麗な月も見れたし、君とゆっくりお酒を飲めるしね。」


ふっ、嬉しいことを言ってくれる。


「そう言ってもらえて嬉しいよ。」


俺がそう言うと「ニカッ」と嬉しそうに笑う。

俺はまた、そんな彼女の顔を見て、お酒をクピリと飲むのだった。





*********




そんな感じで缶の中身が半分ぐらいになってきた頃。

俺はちょっと気になっていたことを薫に聞く。


「ねぇ、いつもそのチューハイ飲んでるけど、それって美味しいの?ちょっと飲ませてよ。」


「え、あ、うん。いいけど……」


そう言って俺は薫が飲んでいたチューハイの缶を受け取る。


「……おっ、美味しい。最近のチューハイってすごいんだな。今度スーパー行ったら買ってみよう。………ん?どうしたのそんなに顔を赤くさせて?」


薫はなぜか顔を赤くさせて、こちらを見ている。


「い、いや、な、なんか間接キスだなと思って……。」


「えっ?あー、なるほどね。でもなんか今更感が。」


「そ、そうなんだけど。ちょっとなんか意識しちゃって……。」


薫は酒のせいではないであろう赤い顔で俯きながらそう言う。

そ、そんな表情されたらこっちも恥ずかしくなってしまう。


でもこれはちょっとチャンスなのでは。


「ねぇ、間接だけでいいの?」


「えっ?」


「だから、キスは間接だけでいいのって聞いてるの。」


「それって………」


俺の意図が分かったのか、薫は尚更俯いてしまう。


逃がすものか。

俺はズイッと薫の方に寄る。


「それでどうなの?しないの?」


「…………する。」


「よし、良い子だ。」




チュッ




「どう?」


「どうって………恥ずかしいけど気持ちが良い。なんか心がポワァとする。」


「して良かった?」


「………うん」


薫はまるでぷしゅぅぅぅと蒸気が出そうなほど真っ赤な顔をする。


多分自分も結構赤い顔をしていると思うけど、秋の涼しい夜風がそんな火照りを冷やしてくれる。


「あっ!そうだお団子食べるのを忘れてたね。ねぇ、食べよう!」


薫はまるで話を逸らすかのようにそう少し大きな声で言う。

そんな彼女の様子に少し苦笑しながら俺は団子を一つ口に放り込む。



こんなバカップルみたいなやり取りを俺らはこんな縁側でする。



そんな俺らの姿を覗いていたのは煌々と輝く月の明かりだけだった。












皆さんこんにちわ 御厨カイトです。

今回は「今宵は満月、月の下にて」を読んでいただきありがとうございます。


読んで「面白い」とか思っていただけたら、感想とか評価のほどよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作中の雰囲気やその描写が良かったです。 というか好みですね。 あと、オノマトペはこれで良いような気がしますね。 (他に書く事が…)
[良い点] 粋ですね。前書き無視して、漱石も要せず。こういうスタンス、嫌いじゃありません。寧ろ好き。白沢です。はい。 [一言] 焦れったさがいい具合。薫も潤も、いい感じ。
2021/10/26 19:46 退会済み
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