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恋は盲目

作者: 悠



 暑い、、、。

 8月某日の駅のホームでおれは電車を待っていた。


 額には玉のような水滴が滲んでいるがおれは忘れっぽくハンカチを忘れ拭うこともできない。

 普段から本当にいろんなものを忘れてしまうので注意していたんだが。

「あついねえ~。あ、前開けるね?」

 ああ、ありがとう。それにしても本当に暑い、、。生モノなんかを持っていたら腐ってしまいそうだ・・・

 一緒に駅のホームで待つ彼女も暑そうにしきりに汗をハンカチで拭っている。


 ああ、自分の彼女ながらかわいいな。おれが褒めた白いワンピースは最近のデートでの彼女の一張羅なのだが本当によく似合っている。

 眺めているだけでニヤケてしまいそうだ。眼福眼福。


 ふと少し離れた所に立つ親子づれの子供と目が合った。

 目が合った子供はおれの方を指さした後泣き出してしまった。

 はぁ。またか、、、。もともと生まれつき目つきが悪く怖がられがちなのに顔に大きな傷までできてしまい子供からすればさぞ怖かっただろうな。


 元々少しコミュ障気味なことも自覚しているのでああして目が合った時などどうしていいか分からなくなる。

 子供が苦手なわけじゃない。むしろ好きだ。けれど隣に座る彼女とは結婚も考えているが「結婚しても二人がいい!」と子供を持つことには反対らしくすっぱりと一刀両断されてしまった。


 

「電車来ないね~。うわ!今日35度超えるかもだって!ほんと地球温暖化進みすぎでしょ!」

 そこは怒ってもしょうがないでしょ、。家にいる時はクーラーの温度は28度にしようね。

 ケータイを見る彼女はぶつぶつと環境問題に文句を言ってはいるものの楽しそうだ。


 その様子を見て少しホッとする。

 彼女とは18の頃に付き合い始めちょうど今日で7年になる。自分の彼女に言うのもなんだがかわいいし社交的で気が利く。正直なんでおれなんかが付き合えたのか分からないレベルだ。

 これだけの高スペックなのに恋愛経験もおれを含めて二度しかないらしく、前の彼氏は女癖が悪かったらしく別れてしまい、噂でも流れて居づらくなったのかパッタリと姿を消してしまったらしい。

 

 唯一欠点を上げるとするならば少々感情の起伏が激しくたまに癇癪を起こすことがあるくらいだろうか?

 周りからは「お前の彼女ってメンヘラだよな(笑)」などと言われてしまうこともあるがそんなにヒドイものでもないし、それだけおれなんかを思っていてくれていて嬉しくさえ思っている。

 そんな彼女を記念日少し前にあんなに怒らせてしまうことになるとは・・・


 きっかけは本当に小さいことだった。ケータイに会社の後輩の女の子から連絡が入り仕事の話の為にお昼に二人でご飯を食べる約束をしている内容をたまたま彼女が見てしまったのだ。

 すぐにちゃんと話をすればよかったのだがおれも仕事終わりで疲れていたこともあり、ついきつく言い返してしまった。

 まあ、次の日の朝にはおれの手を取りながら泣いて謝ってくれたので自分も申し訳なくなり朝から二人で「ごめんなさい」の応酬になったわけだが。


 視線を上げると先ほどの家族が遅れている電車を待てなくなったのか、以前泣き続ける子供抱えて駅員にかなりの勢いで何かを話した後立ち去っていってしまった。

「ねえ見て見て、、。ネットニュースになってるんだけ私の通ってた高校の裏山でバラバラの白骨死体が見つかったって・・・」

 それは確かに怖い、、、!二人そろってその手の話はダメなんだからやめてくれよ!!

 彼女の高校は二駅ほどしか離れていないので他人事とは思えないじゃないか・・・


 それにしても電車が来ない。もともと田舎で本数も少なく、今は電車待ちをしているのもおれたちだけだが。と、噂をしていると女性が一人ホームへと入ってきた。

 白いワンピースの女性だ。遠めなのではっきりと確認できていないがスカートの裾の部分が少し赤く汚れている気がする。


 その女性は焦っているのかボウリング玉でも入っていそうな鞄を抱えて辺りをキョロキョロとしている。

 正直、見知らぬ人に失礼かもしれないが挙動不審だ。

「あの人荷物重そうだね?それにすっごい周りを気にしてる、、?」

 やっぱりそう思う?なんか言いすぎかもだけど怪しいっていうか、、。


 ま、見た目だけの怪しさならおれも負けてはいないか。なにせ人相が悪い(笑)大きな傷のおまけつきだものなぁ・・・ああ、早く治って欲しいものだ。


 そんなことを一人で思っているとケータイを見ていた彼女の顔が青ざめている。

「ねぇ・・・これって・・・」

 なになに?『S市市街地で殺人事件。犯人は以前逃走中。被害者は頭部が持ち去られており怨恨によるものと思われる。犯行は昨日未明。』?


 ネットニュースの要約した内容だが寒気がした。先ほどまであれだけ暑くうだっていたというのに・・・ 

 S市というのは今おれたちがいる駅のある市だ。 

 そしてあまりにもおあつらえ向きの怪しい人影。裾がなぜか赤く汚れており、ちょうどボウリング玉くらいの()()|が入りそうな鞄を抱えた人影。


 ポンポンっ。

「ひっ、、!」

 前方の人影に気を取られており後ろから来た駅員に気づかず、ふいに肩を叩かれた彼女が小さく悲鳴を上げた。

「お客様。ただいますぐ近くで殺人事件があったらしく犯人が逃走中です、、、。電車もしばらく動かせませんので本日はご自宅にお戻りいただいた方が・・・」

 小さな声で耳打ちをしてくる駅員。やはりこの人もあの女性を怪しいと思っているみたいだ。


「もしよろしければ、このまま外へご案内・・・ひぃっ!!」

 会話の途中でおれに視線を降ろした駅員は幽霊でも見たような悲鳴を上げた。

 そしてあろうことかおれたちを残して駅員は走り去って行く。


 おいおい!ちゃんと避難誘導してくれよ!!

 さらにはパニックになっていたのか怪しげな女性にぶつかり彼女の手からカバンが滑り落ちグシャっ!と鈍い音がした。

 落とした勢いで鞄の開いた口がこちらへ向けて倒れてくる。


 やめろ、こっちに向くな、、、!

 中身が完全に確認できた。中身は・・・ただのスイカだった。


「わ、私嫌な想像しちゃった・・・そうだよね。人の頭なんてあれくらいの高さから落としたって割れないもんね・・・」

 は、はは。情けないがおれも同じ想像をしてたよ、、、。 


 二人でほっと一息ついたのもつかの間。割れたスイカの入ったカバンから真っ赤に濡れた包丁を取り出し――

「ぎゃあああぁぁぁあ!」

 目の前で腰を抜かす駅員に深々と突き立てた。

 何度も、何度も。反応を楽しむように。悲鳴に浸るように。助けを求める声を噛み締めるように。


 悲鳴が止むまで何度も突き立てた。

「いや、、、、。」

 声も出せない。けれど、なんとかして彼女だけは守らなければ、、!


 先ほどまで断末魔を奏でていた異常者はこちらを見つめ新しいおもちゃでも見つけたかのようにとてもうれしそうに笑いこちらへ歩み寄る。

 視線が合った瞬間に彼女は腰を抜かしてしまい座り込んでしまう。

 気持ちはわかるけど立たないと!


「ダメ、、怖い、、、」

 泣きながら立てないと首を振る彼女。その間にも少しあった距離は詰まっていく。

 理解できない物や人に出会ってしまうとこんなにも思考が停止してしまうなんて・・・


 もうダメだ。逃げられない。そう思った瞬間――

「動くな!両手を上げろ!!」

 間一髪のタイミングで警察がホームへ駆け込み女は取り押さえられた。


 まるでドラマみたいな光景をただただぼんやりと眺める。

「犯人確保!通報をしたと思われる駅員男性の死亡を確認、、!生存者も一名保護しました!」

 抑え込まれた異常者は先ほど駅員が言っていた殺人事件の犯人に間違いないらしく、あの駅員はおれたちに声をかける前に念のため通報をしていたようだった。


「お怪我は無いですか!?」

「は、はい、、、。」

 声をかけられ震えながら、かろうじて返事をする彼女。


「あれ??あなた――」

 警察官は何かに気づいた後おれの方へと視線を降ろし

「!・・・暑までご同行願えますか?」


 こうして残念ながらおれの楽しみにしていたデートは()()()のせいで駅から出ることも無く終わってしまうのだった。

お分かりいただけましたでしょうか??

拙い文章ですいません・・・


 ほんの少しでも熱帯夜が涼しくなっていただけたらと思います!m(__)m

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