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フェイター  作者: 知咲
8/20

提案

会長が探していたのは女になった俺だった。俺は女として登校しないといけなくなり、その準備で奈々と買い物に行くことになった。

「ど、どういうことなんだよ!!」

 俺は見せられた人物像の紙を持って咲夜に見せた。そこに描かれていたのは・・・

「どう見てもこれ!俺じゃないか!?」

 男子の制服を着た俺(女)の姿だった。

「そうなの。はじめて知ったわ」

「そんなわけないだろ!?昨日その姿でお前と戦っただろ」

「そういやそうだったね」

「そういやそうだってぇ・・・」

 俺の身体は怒りでプルプル震えていた。

「まあまあ、落ち着いて下さい。それで、どうして長瀬さんを探しているのですか?」

 奈々は友久と咲夜の間に割って入り、話を変えた。

「今この学校、彼女を巡って厄介事が起きてるの」

「や、厄介事?」

「この学校に見知らぬ女子生徒がいる。しかも、彼女は男子の制服を着ている。さらに可愛いの3点セットで時の人なのよ」

「男子の制服って、まさか・・・」

 俺は少しだけ青ざめた。

「あなた昨日戦闘後、秘密基地に西山さんを連れて行ったでしょ。その時、貴女を見たって言う学生が居たのよ」

「そ、そうだったのか。それで・・・」

「そこで、この問題を解決するためにいい方法を思い付いたの。それで貴方に協力して貰いたいの」

「まあ、責任は俺にるから協力するけど」

「貴女にはこの学校に入学してもらう」

「「ふぇ?」」

 友久と奈々は変な声が出た。

「貴女にはこの学校に入学してもらう」

「・・・・・・はぁ!!!???」

 やっと理解できた俺はとんでもなく驚いた。

「いや、無理無理無理無理無理!だって、俺は男なんだよ!」

「それでも、このままじゃこの学校が混乱に陥るのよ」


「本当に大丈夫なんですか?」

 奈々は心配そうに俺に尋ねてきた。

「まあ、大丈夫かどうかなら・・・大丈夫じゃない」

 俺は大きな溜め息をついてうなだれた。

「なら断ればよかったじゃないですか」

「でも、一応あの姿で校内を駆け回った俺の責任だしな」

「それなら私の責任でもあるし、そもそも会長が元凶じゃないですか」

「まあ、そうだけど会長も色々忙しそうだし」

「それもそうですが・・・。それはそうと会長と何話してたんですか?」

「何って・・・、ただの世間話だよ」

 言えそうにない内容で少しだけはぐらかした。


「ちょっといい、長瀬君」

「どうしたんですか?会長」

 話が終わり部屋を出ようとした時咲夜に止められた。

「ん?どうしたんですか。長瀬さん」

「いや、会長が少し用事があるそうだから先に戻ってて」

「分かりました。一応不安なので部屋の外で待ってます」

 そう言って奈々だけ部屋を出た。

「それで、何の用ですか?」

「もう、私の噂聞いたでしょ?」

「まあ、一応は聞きました」

「彼から聞いたのでしょ。この情報も彼からだったし」

「あー、あいつかぁ。厄介なことしやがって」

 そういえば今日前回以上に心配していたのはこれも理由かと自分で納得した。

「それで貴方に聞きたいの」

「何ですか?」

「今の私のやり方はどう思う?」

 何を言ってるのかは察しがついていた。

「なんで俺に聞くんですか?そんなの西山さんにも聞けばいいのでは?」

「簡単よ。貴方は私と似ているからよ」

「・・・何で知ってるんだ?」

「もう1人の情報屋に聞いたの」

「はぁ、今度は天使かぁ」

 あんまり話して欲しくない事だから後で釘を刺しておこうと決めた。

「それでどう思うの」

「ハッキリ言わせてもらうと。馬鹿なことは止めろ。結局最後の最後で全て破滅するだけだ」

 俺は咲夜と目をそらさずに言った。

「あら、そこまで否定すてくるとは思わなかったわ」

「何で心を捨てたんだ。それは一番捨てていけないんだよ。俺はここに来て最初に気づいた。だから会長も・・・」

「何言ってるの」

「え?」

 俺の渾身の説得は途中で止められた。

「捨てるも何も、私には幼い時からもう心は無かったの」

 咲夜は当然のように答えた。

「な!?」

「喜び?悲しみ?怒り?愛情?それが何か私には分からない」

「そんなの有り得ない。どうして・・・」

「私はこの世界に来る前は生け贄として生きていたの」

 あまりの衝撃的な発言に今度は何も言えなかった。

「生前の私は・・・」

 とかつての自分の話をしようとしたときドアを叩く音がした。そして、

「大丈夫ですか?長瀬さん」

 奈々の声がした。

「今日はここまでね。答えも聞けたし。戻ってていいわよ」

 さっきなにかを話そうとしたがその話を止めた。

「・・・そうさせてもらう」

「また、遊びましょ」 

 咲夜は少しだけ微笑んでいた。


「まあ、あの様子でしたら絶対に永瀬さんを入学させますよ」

「そうなんだよなぁ。覚悟は決めてるんだけどいざ言われると・・・はぁ~」

 また、大きな溜め息をついた。

「ねぇ、西山さん。ひとつお願い事をしたいんだけどいい?」

「はい、力になれるなら大丈夫ですよ」

「実は・・・、今度の土曜日に女性用の服を買うの手伝ってほしいの」

「え?えええええぇぇぇぇ!!!」

 想定外すぎる友久のお願い事に奈々は驚愕した。


 その週の土曜日の朝、私は待ち合わせに決めていた広場で待っていた。

 少しすると奈々が手を振りながらこっちにやって来た。

「すみません。待たせてしまいましたか?」

「全然、集合時間前だし。それに男が女子を待たせるのはよくないしね」

「でも、今は永瀬さんも女子じゃないですか」

「えへへ、まあね」

 私はペロッと舌を出した。

「・・・なんか今すごく女子っぽいですね。服装も可愛いですし」

「うん。服は天使に頼んで見繕ってもらったんだけど・・・」

 私はスカートの裾を握りながら顔を赤くした。

「下がスースーするし、それにどうしてか周りの人から見られてるんだけど本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。むしろ似合いすぎて見られてるんですよ」

「そうならいいけど・・・やっぱりよくない!恥ずかしいよぉ」

 私は顔を真っ赤にしてブンブン首を振った。

「まあまあ、これからそんな格好することが増えるんですから馴れないと大変ですよ」

「・・・分かったよ。じゃあ行こっか」

 と二人は横に並んで歩き始めた。

「ごめんね。今日付き合って貰えて」

「全然大丈夫ですよ。今日は予定もありませんでしたし」

「さすがにたった一人で服というか・・・下着を買う勇気が無くて」

「ふふふっ。永瀬さんってとっても純粋なんですね」

 奈々はあまりに友久が可愛い事を言っていてつい笑ってしまった。

「う、うるさい。バカにするなよ」

 友久は頬を少し膨らませて奈々を睨んだ。

「それにしても、よく永瀬さんにピッタリな服を茜音先生は用意できましたね」

「・・・うん、天使には感謝してるよ。元々この姿に変身した時用の動きやすい服を頼んでいたの。そしたら、楽しそうにサイズ測るからって色々調べられたりセクハラまがいのこともされて・・・。だから、服は自分で選ぶって決めたの」 

 友久は天使にされたことを思い出して身震いをした。

「あはは、気持ちは分か・・・。いや、大変でしたね」

「ねぇ、今の発言なんかおかしくない?」

「べ、別におかしくないですよ。ただ・・・」

 奈々はチラッと友久のある部分を見た。

「あんなに大きかったら触りたくもなりますよ・・・」

 友久に聞こえないようにボソッと呟いた。

「何か言った?」

「いいえ、何も言ってませんよ」

「??ならいいけど」 

 確かに何か言われた気がしたが勘違いなのか首を傾けた。


 2人でなんやかんや話している内に目的の店の前に着いた。

「ついに・・・」

 私はゴクッと唾を飲み込んだ。そして、店のドアをくぐった。


「やっぱりスカートよりズボンがいいと思うの。だってあれスースーするし動きづらいしね・・・」

「何言ってるんですか!?女子の服といえばスカートが定番なんですから諦めて下さい」

「そうだけど・・・」

「大丈夫です。似合いますから!」

 ジリジリと奈々が近寄ってくる。私は後退りして逃げようとするが何かに足がぶつかって尻餅をついた。

「こ、ここって」

 姿見とカーテンがある小部屋に入っていた。

「更衣室に入るなんてやっぱり少しは気に入ってるんじゃないですか」

 そう言うと奈々は持っていた服を私に渡してカーテンを閉めた。

「着替えるまで前で待っているので、逃げないで下さいね」

「あ、はい」

 あまりの奈々の圧に私は首を縦に振ることしかできなかった。

「ほらほら~、逃げても無駄なんだから諦めろよ」

 いつの間にか猫の姿に戻ったクロがカバンの中からニヤニヤしながら茶化してきた。

「うるさいクロ。分かってるよ」

 私は諦めて奈々が選んでくれた服に着替えた。

 それからは、まるで着せ替え人形のように次々と奈々が選んだ服に着替えさせられた。


「結局西山さんも私をオモチャにして・・・」

「永瀬さんが何着ても似合うから仕方がないんですから」

「それは嬉しいけど・・・」

「そ、それより!服を選んだので次は下着ですよね」

「そ、それはそうだけど・・・。下着なら一人で選べるから今日はもういいかなぁってね」

「そんなこと言って、選べるんですか?」

「・・・」

 ヤバいと思い私は店を出ようとしたが。

「逃げないでくださいね?」

 服を掴まれ逃げ出す事ができなかった。


「あ、あのぉ・・・。西山さんどうして怒ってるの?」

「別に怒ってませんよ」

 そう言いつつも声は不機嫌でしかも顔を合わせてくれない。

「絶対怒ってるのよねあれ?」

 ボソッとカバンにいるクロに相談した。

「ああ、あれは怒ってる。120%な」

「じゃあ、どうして怒ってるのか分かる?」

「・・・・・・。はぁー、やっぱりまずは乙女心を学ぶ必要があるな」

 クロは呆れて溜め息をついた。

「おいその反応、理由も分かるんでしょ。教えてよ」

「言ったところでどうにもできないし諦めろ」

 そう言ってクロはチラッと友久の胸を見た。そして、奈々の胸も見た。

「圧倒的な差で挙げ句の果てに男に負けるのは大変だなぁ。プッ」

「何か言いましたかクロ?」

 いつの間にか奈々は二人の話を聞いており更に機嫌を悪くしていた。

 クロはニコッと笑うとカバンの奥に逃げた。

「あ、逃げた」

「べ、別に胸の事で怒ってるのか訳じゃないんですからね!」

 何故か奈々は顔を真っ赤にして胸の話をし始めた。

「別に胸がどうしたんだ?胸なんて大きい方が重くて大変だから小さい方がいいよ」

「「あーあ」」

 カバンから顔を出していたクロとシロはさっき以上に呆れていた。

「んーーーー!!!」 

 さっきまで顔を真っ赤にしていた奈々は今度は涙目になりながら怒っていた。

「え?あの?西山さん?」

「もう永瀬さんなんて知りません!」

 と何故か更に怒らせてしまった。

(乙女心って分からない・・・)

 この日から私は乙女心が分かるように少しずつ学ぶようになった。結果は察しの通りだと思うが・・・

 奈々の怒りが収まるまで私は話しかけることができなかった。


「今日はありがとうね。色々と勉強になったよ。それに楽しかったし」

「はい、私も楽しかったですよ。最後以外は・・・」

 何か最後にボソッと言ったが聞こえなかった。

「今日選んでもらった服があれは当分の間は大丈夫だよ」

「それは良かったです」

「それでね、今日楽しかったからまた・・・」 

 その時、スマホから電話がきた。相手は天使からだった。

「ごめんね、急に電話しちゃって。モンスターが現れたから急いでそっちに向かってもらえる?」

「分かった。それで場所は?」

「今情報を送ったから。ついでに奈々ちゃんにも言っておいて」

「了解」

 そう言うと電話が切れた。

「天使から?もしかしてモンスター?」

 奈々の方を見るともう変身を済ませていた。

「そう。場所も教えてもらったから行くよ」

 私達は天使が教えてくれた場所に向かった。


「あれ?どうしたのその格好」

 歪みの世界につくなり不思議そうに私の姿を見た。

「ああ、買い物前に言っていたでしょ。動きやすい服装を準備してくれるって。それがこの服なの」 

 私は高校の女子生徒用の制服を身に纏っていた。

「へぇー。天使も結構気が利くんだね」

「ああ、これで動きやくなったよ」

 その時、近くで地響きがした。

「近くにモンスターがいる。行くぞ」

 と今までよりも動きやすくなった姿でモンスターの所に向かった。

 しかし、そこで待っていたのは・・・

「あら、遅かったね」

 倒されたモンスターと会長の姿があった。

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