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フェイター  作者: 知咲
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強者と弱者

 ついに友久達の目の前に三人目が現れる。しかし、彼女の様子は少しおかしかった。

「どうして皆にいつも厳しくしているの?」

 二人しか居ない学校の屋上で自分と誰かがご飯を食べながら話をしていた。

「別に、できない事を責めること必要ない人材は切るのは当たり前の事だろ」

「そんな事言って、全部の責任を一人で抱え込んでいるだげでしょ。ほんと、優しいのやら厳しいのやら・・・」

 大きく溜め息をつきながら誰かは呆れていた。

「う、うるさい」

「もしかして照れてるんですか?」

「そんな事ない。だって自分には感情なんて・・・」

 自分が言い終わる前に誰かは手を握った。

「これでも?」

「・・・」

 いきなりの事で頭が真っ白になった俺は状況を理解すると顔を真っ赤にした。

「ほら、照れてるでしょ」

 誰かはニコッと笑った。


 目が覚めるとそこはいつもの自分の部屋だった。

「なんであんな夢を・・・?」

 それはかつての自分の見た光景だった。何故か鮮明な夢だった。しかし、たった1つ話していた相手が誰かが全くわからなかった。それが少しだけ気になってもう一度夢を見ようと布団に入り目覚ましをセットしようと手を伸ばして時刻をみて驚いた。

「やべぇ!!もうこんな時間じゃねぇか!」

 慌てて着替えて俺は家をとびたした。

「ふわぁぁぁ、よく寝た」 

 ベットの上に丸くなって寝ていたクロは目を覚ますと背伸びをして顔をこすった。

「あれ?とも?」

 友久に置いていかれた状況を理解できずポカーンとした顔をしていた。


「あっっっぶねぇぇぇぇ」

 ホームルームが始まるギリギリで教室に飛び込んだ俺は荒くなった息を整えながら机に突っ伏していた。

「皆さんおはようございます。では、朝のホームルームを始めます」

 と俺の息が整うのを待ってくれずホームルームは始まった。


「なあ、1つ聞いていいか?」

「ん?なんだ」

 今日は珍しく男二人で弁当を食べていると翔大からあることを聞かれた。

「お前、好きな女子っているのか?」

「いないけどどうかした?」

「なんだ居ないのか。面白くねぇなぁ」

「悪かったな面白くない人間で」 

 俺は拗ねて弁当のおかずを口の中に入れモグモグした。

「じゃあどうしていつも女子とお弁当食べてるの」

「うっ!?ぐぐぐぐぐ」

 突然の翔大のとんでも発言に食べていた弁当を喉に詰まらせて、慌てて水を飲んだ」

「ぷはー。どどどどうして知ってるんだ」

「俺を舐めてもらっちゃぁ困る!なんてったって俺は情報屋をしてるからな」

 キリッと翔大はキメ顔した。

「それで、彼女とはどんな関係なんだ?」

「どんなって言われても・・・。そんな特別な関係じゃないよ」

 さすがにフェイターについて翔大に説明するわけにはいかずどう説明しようか迷っていた。

 その時、ある意味助けて船がやって来た。

「長瀬君、ちょっといい?」

 教室の後ろのドアが開く音と共に茜音先生に呼ばれた。

「はい、なんですか?」

「さっき生徒会長があなたを呼んでいたの。すぐに生徒会室に行ってくれない?」

「分かった、すぐに行くよ。そういうことだ。ちょっと生徒会室に行ってくるわ」

 俺は翔大から逃げるように席を立ち上がった。この時、翔大は面白い話を途中で止められたからつまらなそうな顔をしてると思った。しかし、翔大の顔からは心配の表情が浮かんでいた。

「お前、なんかしたのか?」

「いや、特には何もしてないはずだぞ」

「そうか、でも一応気を付けろよ」

「わ、分かった。気を付けるよ」

 と俺は翔大に心配されながら教室をでた。


「あれ?西山さん」

「あ、長瀬さん」

 生徒会室に行く途中何故か西山さんと会った。

「どうしたの?わざわざ3階に来て」

 普段1年生の俺達は主に1階を利用している。なので西山さんが3階に居るのは少し不自然だった。

「長瀬さんこそどうしてここに・・・」

「俺はただ生徒会長に呼ばれて」

「?私もですけど・・・」

 呼ばれたのは俺と西山さんの2人だった。


 2人は意を決して生徒会室に入った。生徒会室はさっきまでいた廊下とは全く雰囲気が違い肌がピリピリするぐらいの緊張感があった。 

「よく来てくれたわ。長瀬君、西山さん」

 部屋の真ん中にある生徒会長と書かれた札か置かれた机とイスに座っている1人の女子生徒が無機質な声で喋った。

「私は生徒会長の如月咲夜。名前なら入学式の時に聞いたと思うけど」

 それを聞いて俺は入学式の時を思い出した。あの時、何故か目があったのだ。 

「それで、生徒会長さんが俺達に何の用ですか?」

「用って訳ではないわ。少し話がしたかったの」

「話がしたいですか?」

 西山さんは不思議そうにたずねた。

 ふと、会長は右の髪をかきあげた。

「「え!?」」

 かきあげられて現れた右耳に付いてるピアスを見て驚いた。

「会長、もしかして貴女もフェイターだったんですか!?」

 そこには俺達が持っているような石がはめられていた。

「そうよ。私が貴女達より早くこの世界に来たフェイターよ」

「そ、そうだったんですね!!まさか、今まで助けてくれたのは会長だったんですね。本当にありがとうございました」

 奈々は頭を下げてお礼をした。奈々にとっては今まで助けてくれた命の恩人みたいな存在なのかもしれない。

「別に気にしなくていいわ」 

「それで、俺達を呼んだのはフェイターの事についてですか?」

 と、話がそれつつあったので話を元に戻した。

「そうだったわ。貴女達に伝えたい事があったの」

 そう言うとイスから立ち上がりこっちに近づいてきた。そして左手を出した。

「これからもよろしくお願いします。会長さん」

 その手取るように奈々は一歩前にでて握手をしようとした。

 その瞬間、さっきまでとは比にならない緊張感が肌を差した。

(いや、違う!緊張感じゃない!これは殺気!)

 嫌な予感がした俺はごめんと心の中で謝りながら奈々の制服の首の後ろを掴んで後ろに引いた。

「ふぇっ?」

 あまりに突然の事で奈々は変な声を出した。

「ヒュン」

 さっきまで奈々がいたところを何か鋭い物が通る音がした。それは・・・

「あら、惜しかったわね」

 咲夜は右手にもって地面スレスレで止めた大鎌を肩に乗せた。

「おい、何をするつもりだ」

 私はとっさに変身し戦闘モードに入っていた。

「何って、貴女達を消そうとしたんだけど」

「はぁ!?」

「貴女は変に勘が鋭いからまず西山さんを消して人数減らすつもりだったたけど、貴女の勘を甘く見すぎたようね」

 と何を考えているか分からない目で私を見ていた。

「え?え?え?ど、どういう状況なんですか?」

 何がなんだか状況が理解出来ない奈々は目を?マークにして混乱していた。

「いいから、西山さんも変身して!」

「は、はい!!」

 奈々も友久に言われるがまま変身した。

「それで、なんで私達を消すつもりだったの会長さん」

 なんか少し奈々は怒っていた。まぁ、当たり前だと思うが・・・

「なんでって、貴女達が邪魔だからよ」

 当たり前のように答えた。

「じゃあ貴女達も変身したし、私も・・・」

 と咲夜は右手で宝石に触れた。すると咲夜の姿が変わった。

「私もこの姿で遊んであげる。フフフフッ」

 さっきまでの殺気もやばかったが変身して一段とやばくなった。

「ねぇ、やばそうじゃない。とてつもない狂気を感じるんだけど」

 奈々も咲夜のやばい雰囲気にジリジリと後ろに下がった。

「でも、いいのか?ここで戦ったらこの部屋が大変なことになるのよ」

 できるだけ戦闘は避けたい私はそう言った。これは的を得ている発言だ。

(これで戦闘は無くなる・・・)

はずだった。想定外が起きるまでは・・・

「そこは安心して」

 咲夜はポケットから卵のような何かを取り出した。

「何それ?」

 見たことのない物に二人の注意がいった。

 咲夜はそれをポイッと投げた。それが地面に当たった瞬間、とてつもない光が3人を襲った。

「クッ!」

 あまりの眩しさに目を瞑った。


「な、どうして!?」

 私が目をつむっている中、奈々の驚愕の声がした。視力が戻ってきて辺りの光景を見て驚いた。

 目の前に広がっているのは確かに生徒会室だった。しかし、窓から差し込む光は赤黒く全体的に暗かった。

「ここ、歪みの世界じゃ」

「だいたい正解。でも違うわよ」

 私と奈々が動揺しているのとはうって代わり咲夜は平然としていた。

「ここはね、現実世界と歪みの世界の間にある世界なの。天使が歪みの穴を通らずに歪みの世界に行く方法を開発しててね。その副産物でできたの。ここなら、物が壊れても大丈夫。まあ、時間軸は現実世界と変わらないけどね」

 と説明すると、とてつもない笑みをこぼした。

「じゃあ、始めよっか」

 そして、大鎌を持った咲夜が二人に襲いかかった。


「ど、どうすればいいんだよぉ」

「私も分からないよ。うわっ」

 私達は会長から逃げる為、校内を逃げまわっていた。会長はというと・・・

「ほらほらほら、逃げないで戦いましょうよ。アハハハハ」 

 私達を最短距離で追いかけるため壁や物を壊しながら追いかけてきている。

「やっぱり逃げてばっかりじゃ、埒が明かないよ。迎えうとう!」

 逃げていた奈々は足を止めて会長の方を向き直った。

「だ、駄目だよ西山さん!彼女はモンスターと違って強すぎる!私達がやられちゃうよ」

 私は無謀な事をやめさせようと説得をした。だが、

「どっちにしても逃げてばかりじゃいつか逃げ場が無くなって追い付かれるのが関の山だよ。それなら、私は戦って倒す」

 しかし、奈々の覚悟を変えることができなかった。私は溜め息をついた。

「なら、一緒に戦いましょ」

「友久君・・・」

「それに、ここで、逃げたら男じゃねぇ」

「まあ、今は女の子だけど」

「うるせぇ」

 二人はニヤッと笑った。それと同時に壁を壊して会長がやって来た。

「やっと私に消される覚悟ができたんだ」

 そう言いながらも会長は大鎌を振り回しながら近づいてきた。

「そんなわけないでしょ」

 そう言いながら奈々は剣を構えた。

「私達はここで貴女を倒すのよ」

 私も右手に力を込めた。

 そして、私達と咲夜の戦いが始まった。


 私達は2人、会長は1人。多少はいけると思っていた自分がいた。だが・・・

「なんなんだよあれ!?強すぎだろぉ」

「強いとは思っていたけどまさかこれ程とわねぇ」

 苦笑まじりに奈々は愚痴をこぼした。

「あれあれ~?もう終わり?私まだ遊び足りないんだけどぉ。クフッ」

 もうボロボロな二人とは正反対に会長からは全く疲れを感じられなかった。

「さあ、もっと遊ぼうよぉ~。早くぅ」

 ジリジリと会長は距離をつめてくる。

「どうする。全くこっちの攻撃が通じないけど」

「どうするもこうするも攻撃するし・・・」

 2人の視線が会長から離れた一瞬を咲夜は見逃す事なく大鎌で奈々を吹き飛ばした。

「西山さん!!」

 壁に激突した奈々は友久の声に反応する事なく地面に倒れたまま動かなくなった。

「てめぇ!よくも西山さんを・・・」

 怒りに身を任せて攻撃しようとしたところ、咲夜の大鎌が私の首のすぐ横にかまえられていた。

「ほんと、残念ね」

「何がなの?」

「貴女からは私と同じものを感じたの」

「!?」

 それが何か分からない私ではなかった。

「貴女はきっと私と相性がいいはずよ。だから、西山さんを消して私と一緒に戦いましょ。そうすればきっと・・・」

「嫌だ」

 私の答えは即答だった。

「私はもうあの時の私じゃない。それに・・・」

 私はフッと笑った。

「友達だけは大切にするって決めてるんだよ」

「そう、残念ね」

 さっきまで爆発していた咲夜の感情が一気に冷めて、見下した目で見ていた。そして、大鎌を振りかぶると私の首を切っ・・・

 その瞬間、金属と金属がぶつかる音がした。咲夜は目を見開いて驚いた。その一瞬を逃さず仕返しのように蹴り飛ばした。

「貴女、誰?」 

 はじめてダメージが入った咲夜は彼女にそう言った。


「グハッ!」

 大鎌で吹き飛ばされた奈々は背中を思い切り壁にぶつかりうめき声をあげ地面に倒れた。地面に倒れこむまでの刹那、奈々の目には友久の首元に咲夜の大鎌が構えられている光景を見た。

「た、助けないと・・・」

 か細い声を出しながら体に力を入れようとする。しかし、体は全く動かない。

「なんで動かないの。動いて」

 その瞬間気づいた、自分の腕が震えていることに。恐怖で動けない事に・・・。そんな奈々の様子を気にする事なく友久と咲夜のやり取りが進んでいく。

「友達だけは大切にするって決めてんだよ」

 決して大きな声じゃなかった。それでも、奈々にはハッキリ聞こえた。

「そう、残念ね」

 そう言うと大鎌を大きく振りかぶり友久の首めがけて振り下ろした。

「嫌、やめて」

<このままだと、彼死んじゃうよ>

 どこからともなく声が聞こえる。

「やだ。そんなの嫌」

<じゃあ、どうするの?>

「倒さなくちゃ」

 何かが奈々を染めていく。しかし、それを彼女は止めることができなかった。

<誰を>

「彼女を」

<倒せるの?>

「倒す」 

 染まると共に自分の意識が沈んでいく。

 沈む意識の中、別の誰かが浮かんできていた。そして・・・

「私が倒してあげる」

 奈々ではない誰かが目を覚ました。


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