入学
桜咲く4月、俺は二度目の高校入学をした。そこには天使の姿があった。
「服装よし!鞄よし!ハンカチよし!」
今日俺は高校の入学式に出席しないといけないのでいつも以上に服装に気を付けていた。
「ともー。準備をしっかりするのもいいが時間も気にしろよー」
「やばっ、もうこんな時間かよ。初日から遅刻とか洒落にならねぇ」
俺はクロを付けた鞄を持って家を飛び出した。
息を切らしながら何とか間に合う事はでき最悪のシナリオは回避できた。しかし、初日から息を切らしながら教室に飛び込んできた&見知らぬ顔ということで注目は浴びる事になってしまった。
席についてひとまずあがった息を整えた。周りでは幾つかのグループができ、どんな人が担任になるかや、昨日のテレビについて話していた。元々この柊剛高校の生徒はほぼ同じ中学校ということもあり、なかなか外から来た生徒が馴染むのに時間が掛かってしまうのだ。
ふと、前の席から白い何かが動いた。
(なんだあれ?)
よく目を凝らしてみると、それは髪の毛の女子生徒だった。彼女も1人ぼっちなので彼女も外から来た生徒だと思った。俺は何故か彼女が気になったが話しかけることが出来なかった。
そんな中、教室のドアが開いて1人の男の先生が入ってきた。
「皆おはよう。もうすぐ入学式が始まるから移動するぞ」
「はーい」
教室にいた生徒達は移動を始めた。
「質問なんですが先生が担任なんですか?」
ふと、1人のせいとが先生に質問した。
「それは入学式が終わった後に担任とそれぞれの科目の担当教師の紹介があるからそれまでは言えないな」
「えー、教えてくださいよ」
「それなら、できるだけ早く入学式を終わらせるしかないから早く移動するぞ」
男子生徒の質問はお茶を濁された。
「新入生の皆さん、本日はご入学おめでとうございます」
入学式も半分か終わり、今は校長の長い話が始まろうとしていた。
ふと、この中に知っている人が居るか辺りを軽く見渡したが知っている人は1人もいなかった。
(この町が俺の故郷なのに、知っている人が1人も居ないのは不思議な感じだな・・・)
そんなことを考えている間に校長の話は終わっていた。
「ありがとうございました。次は生徒会長如月咲夜のお話です」
そう言うと1人の女子生徒がステージに上がった。
(な、なんだこの空気!?)
さっきとは空気が一変し、背筋に悪寒が走った。周囲でも何かを感じたのか固まっていた。
「先ほど紹介されました。私がここ、柊剛高校の生徒会長2年如月咲夜です。本日はご入学おめでとうございます・・・」
話す内容至って普通だった。しかし、声には抑揚が無く無機質だった。
(まるで機械みたいだな。いや、まるであの時の・・・)
俺はそれ以上考えるのをやめ頭を軽く振った。その動作が会長の目についたのか一瞬目があって、やばいと思い目をそらした。会長は何もなかったように目線を元に戻した。
その後は特に問題が無く無事に入学式は終了した。
式典が終わり重たい雰囲気とうって変わって担任の発表、叫び声や口笛、歓喜や落胆のこえがあがりは騒がしくなっていた。かという俺は知らない先生ばかりでどうでもよく、
「次は1-Aの担任を紹介です」
先に三年生の方から発表していた司会の先生が俺たちのクラスの担任を呼んだ。
「はい」
どこかで聞いたことあるような声がしたようなきがして紹介された先生を見て目を疑った。
「今日から1-Aの担任を務めさせてもらいます、山田紅音です。1-Aの皆さんこれからよろしくお願いします」
紅音先生はニコッと笑った。
彼女はただの先生じゃなかった。その顔はつい最近見たばっかりで探していた天使だった。
昼休み、俺は紅音先生もとい天使を人気の少ない所によんだ。
「やっと合流できましたね」
「やっとじゃないですよ。まさか先生をしてるなんて」
「これもあなた達を見守りつつこの世界で存在がばれないようにするには丁度良かったの」
「それはそうですけど・・・。何処に居るかぐらい教えて下さいよ」
「いやー、きっと明日になれば会えるからいいかなっと思ったから」
天使は笑いながら謝った。
「俺は別にいいけど・・・。クロがっだいぶご立腹だけど大丈夫?」
天使の笑いがピタッと止まると顔色が悪くなり汗がふきだしてきた。
「そ、そういやもう誰か別のフェイターに会ったの?」
この話をしたくないのか、天使は話の内容をすり替えた。
「西山さんだったけ。一応昨日会ったよ」
「じゃあ、今はあんまり時間無いから放課後に二人で私の所に来て。そこで二人にこれからの活動とあなたにはフェイターについて詳しく話をするから」
「丁度今日会う約束してたし、分かった」
そう言って二人は分かれた。と言っても教室でまた会うが・・・。
ホームルームも終わり、学校生活初日は無事に終わった。入学式前に何故か少し気になった白髪の彼女は横松雪という名前だった。
(なんか、聞いたことある名前なんだけどな・・・)
どこで聞いたか思い出そうとしたが白い靄がかかり思い出すことが出来なかった。
「・・い、とも!おい、とも!」
クロの声が聞こえ俺は現実世界に引き戻された。
「あ、すまん何かあったか?」
「どうした?さっきから呼んでも反応しなかったが」
「ちょっと考え事しててな」
「ならよかった」
「それにしても昨日の彼女なかなか来ないな」
友久は玄関を見回したが数人の学生が通っていくだけで昨日の彼女は居なかった。
「もしかして、約束を忘れているかもな」
「・・・かもしれないけど、もう少し待ってみよ」
一方、西山サイドでは・・・・
「本当に来てくれるんでしょうか・・・」
奈々は不安そうにシロに尋ねた。
「彼女達にとって秘密基地に行くことは重要なはずなのできっと来ますよ」
「それならいいんですけど、彼女達きっと私だって分からないはずなんで私達が見つけないと」
そういいながら奈々は玄関を見たが昨日の彼女は全く見当たらなかった。今ここに居るのは自分達と1人の男子生徒だった。
「そういえば彼女、自分を男だって言ってし、もしかしてあの人かも・・・・」
「フェイターに変身できるのは女性のみなのでそれはあり得ません」
「そ、そうでよね。もう少し待ってそれでも来ない時は一度天使の所に行ってみましょう」
そんな感じで近くに待ち人が居るのにそれに気づくことが出来なかった。
「なあクロ。あそこの学生ちょっとおかしくないか?」
俺は玄関を挟んだ反対側にいた学生に目をやった。
「ん?どこがおかしいんだ?どう見ても普通の女子生徒だが」
「なんか、しきりに何かと喋ってるんだよ。まるで俺とクロが喋るように」
「でも昨日の彼女とは雰囲気が全く違うぞ」
「そうだけど、俺だって変身したらお、女になるんだから変身すると何かしら変化があるかもしれないだろ」
「それもそうやな。一応きいてみるか」
意を決して俺は彼女の所に向かった。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」
俺は彼女に声をかけた。
「は、はい!?」
いきなり声をかけられた為か、肩をビクッと動かして恐る恐るこっちを見た。
「西山奈々さんっていう女子生徒知らない?」
すると彼女の顔色がみるみる悪くなり少し後ずさりをした。
「え、ええと・・・。どうして彼女を探してるんですか?」
「いやー。実は昨日彼女とここで会う約束してたんだけどなかなか来なくて」
そういいながら俺は指にはめている指輪を触った。
「も、もしかして、長瀬さん・・・・」
彼女はその指輪を見て目を見開いて、尋ねたのだった。
なんとか合流した2人は紅音先生がいる職員室に向かっていた。
「これで2人揃ったようね。ん?どうしたの二人ともなんか気まずい雰囲気が漂ってるようだけど・・・」
二人の雰囲気を何か感じたのか紅音は不思議そうに尋ねた。
「た、大した事はありません。ただ、お互い昨日と色々違っていて戸惑って喋りにくいだけです」
恐る恐る奈々はこっちを見ながら言った。俺は首を縦にふった。
それを聞いて何か良い事を思い付いたのか、紅音先生はクスッと笑った。
「それについては後で良い方法があるから大丈夫よ。それより二人とも行くわよ」
そう言って立ち上がると紅音は二人を連れて校内を歩いていった。
先生について行くとだんだん人気が少なくなり、いつの間にか自分達だけになっていた。
「秘密基地って言ってたけどどんな感じなんだ」
秘密基地という心踊るような場所がどんなところか我慢できずに俺は西山さんに尋ねた。
「きっと見たら驚くと思いますよ」
「そうなのか。楽しみだなぁ」
なんとかさっきの気まずい雰囲気は無くなり話していると・・・
「着いたわよ」
先生はとある普通のドアの前で立ち止まった。
「ここですか?」
「ただの普通のドアにしか見えないけど・・・」
俺達の不安をよそにニコッと笑うとその扉を開けた。
「うわぁ!!」
中を覗いた俺は思わず声を揃えてあげた。
目の前に広がっているのは学校にあるとは想像のつかない、幾つもパネルがある機械が広がるSFチックの部屋だった。
「二人とも入ってあそこの机で待ってて。飲み物持って来るから」
二人は言われるがまま机で待機していた。先生は奥にある別のドアに入っていった。
「が、学校にまさかこんな部屋があるとか想像できなかったよ」
なんとなく無言でいるのが気まずくなり辺りを見回しながら呟いた。
「そ、そうですね。私も最初は驚きました」
「そういや、西山さんはいつからここに?」
「ちょうど、長瀬さんと出会う一週間前ですよ。私の場合はすぐに先生と合流できたので良かったんですけど・・・。長瀬さんは大変でしたね」
「あはは。でも、ちょうど西山さんと会えたので良かったよ」
「そ、それは良かったです!」
奈々は声が裏返り顔を真っ赤にして俯いた。
「ふーん。青春してるね~」
いつからいたのか、二人の後ろで天使がニヤニヤしていた。
「な、どういう事だよ」
「別にお構いなく~。はい、持ってきたわよ」
まだ、ニヤニヤしている天使は飲み物を二人に渡すと反対の椅子に座り、一口飲んでコップを置いた。
「さて、じゃあフェイターのこれからの活動について話していくわよ」
一呼吸入れて真面目な顔をして噺を始めた。
「「はい」」
「まずはフェイターの仕事だけど、それはもう2人共実戦済みだから大丈夫よね」
「一応・・・。西山さんが居なかったらヤバかったけどな」
昨日のモンスターとの戦いを思い出して俺は身震いをした。
「そういえば、俺はあの時たまたま「歪みの穴」を見つけて吸い込まれたけど、そうすぐしない内に西山さんが助けに来てくれたけどそれってたまたまだったの?」
「いえ天使からこれを貰ってて、これを使えば「歪みの穴」の場所が分かるようになるんですよ」
そういうとバックからスマホのような機械を取り出した。
「スマホ?」
「ふっふっふっ・・・。ただのスマホじゃないわよ」
天使はガタッと立ち上がるとポケットから西山さんのスマホに似ているスマホを取り出した。
「さっき西山さんが言っていたようにこれを使えば「歪みの穴」が発生したら何処にあるか教えてくれるの。さらに普通のスマホのように使う事もできるし、仲間とのやり取りがスムーズにできるの!!」
「は、はぁ・・・」
「これを貴方にあげるわ。これを使えばすぐに歪みの穴を見つける事が出来るわ」
そう言って天使は俺にスマホ(?)を手渡しした。
「あ、ありがとうございます」
「それじゃあ2人共、何か質問ある?」
「1つ質問いいですか?」
西山さんが手を挙げて立ち上がった。
「今、フェイターって何人居るんですか?」
「今は貴女達を含めて3人居るわ」
「やっぱり、もう1人居たんですね。それって誰なんですか?」
「教えたいのはやまやまだけど実は本人から教えないでって言われてるの」
天使は残念そうに首を横に振った。
「一体どうしてなんですか?」
「それは私にも分からないわ。それに今彼女と会うのは少し厄介よ」
「厄介?」
西山さんは不思議そうに首を傾げた。
「まあ、きっと会うはずだから会えば分かるよ」
そう言うとちらっとこっちを見た。
「?」
「そうですか、ありがとうございます。あともうひとついいですか?」
西山さんは今度はこっちを見た。
「彼、本当にフェイターなんですか?」
「うん。そうだけど」
「でも、普通は女性にしか変身できないはずですよね」
そう言って俺をを指差した。まあ、その質問は当たり前だと思うが・・・。
「なら、これでどう?」
そういうと俺の左手の人差し指にはめてある指輪に手を伸ばした。
「ふぇ?」
次の瞬間、俺の体は光りに包まれて・・・
「な?なんで女になってんだぁ!!」
俺はまた女になっていた。
「これで大丈夫でしょ」
「これで大丈夫でしょ。じゃないだろ!どうしてくれるんだ。まだ上手く戻れないだから!」
「つまり、彼は元々女性だったんですか?」
「待って、俺は生まれた時から男だから」
変な誤解が生まれたそうで俺は必死に否定した。
「まあ、普通は女性にしかなれないのは確かだよ。でも、彼は特別な力を持ってたから変身できたの」
「特別な力?それってど・・・」
「ちょ!その説明なら変身させる意味ないでしょ!どうしておれを女にしたの!」
あまりその力について話したくない俺は話をすり替えた。
「だってまだ変身した姿見てなかったからついでにね?」
「ついでで女にするなよー」
涙目になりながら俺は呟いた。
「まあ。そんな感じだから。ちゃんとフェイターの仕事はできるから大丈夫だよ」
「そ、それなら大丈夫ですけど・・・」
そう言いながらちらっと俺の方を見た。
「本当に大丈夫なんですか彼?」
「大丈夫、大丈夫!すぐに慣れるはずだから」
「慣れたくないわ!!」
と、こんな感じで3人は秘密基地での今後の話をした。その後、俺と西山さんは秘密基地を出ていき天使1人になった。
「彼女・・・いえ、彼が3人目ね」
いつからいたのか、女子生徒が秘密基地内に居た。
「いやー。咲夜ちゃん気になるの彼が」
「別にどうでもいいわ。ただ彼から私と同じものを少し感じたの」
「まあ、多少は似てるよ。いまの咲夜ちゃんとかつての彼は」
「なるほどね・・・」
「もしかして、彼に一目惚れしちゃった?」
「そんなことあり得ないわ。
だって私には心なんて無いんだから」
そう言って咲夜は基地から出ていった。
「さて、最初のミッションよ友久君」
そう言って天使はクスッと笑った。