発覚
林間学校2日目私はひょんな事で翔太と2人きりになる。そんな時、ある質問を投げかけられるのだった。
「シノちゃんおはよー、ってどうしたのその顔!?」
朝になり次々と食堂に集まってクラスメイトが変わり果てたシノの姿に驚いていた。
「その、気にしなくても大丈夫ですよ。身から出た錆というか自業自得なんで」
そう言いながらも奈々の脳内では智が昨晩行った説教もとい〇教の一部がよぎった。
「でも、どうみても体調が悪い気が・・・」
「そうそう、奈々ちゃんの言ってるし気にしなくて大丈夫だよ。ね?」
そんな話に割って入ってきた智は笑みと共に無言の圧をかけていた。
「そ、そうなんだ。私の気にしすぎかも。あははは(汗)」
彼女は智から逃げるようにそそくさと自分の席に戻っていった。
そんな姿を横目に智は大きくため息をついていた。
「で、いつまでそれ続けるの?ちゃんと加減してあげたでしょ」
「ありゃりゃ、バレちゃってた」
さっきまでの姿は演技だったのか、起き上がったシノは舌を出して悪びれていなかった。
「思っていた以上に元気そう」
「当たり前でしょ、加減したんだから。そうでなきゃ今頃私の前に居ないよ」
それを聞いて奈々の頭によぎったのは例の3人だった。あの日から私に近づくことは無くなった。そして、シノから聞いた話によると永瀬さんの視線に入らないように怯えながら学校生活を送っているらしい。それを考えると彼女が言った事は本当らしい。
「てか、ちょっと悪戯しただけであの仕打ちは酷いと思うんだけど」
「ちょっとですって!?どれだけ大変な目にあったと思ってるの!」
「別にいいでしょ減るのもじゃないし、それに男の子にとっては最高の展か・・・」
言い終わる間に智から出ている全身の鳥肌が立つようなオーラに体が強張った。
「なるほど、もう少しお灸をすえる必要がありそうね」
ニコニコと笑いながら指を鳴らしてゆっくり近づいてくる智に怯えてシノは奈々の背中に隠れた。
「ちょ、こっちこないで。私に飛び火するでしょ」
「だって、あの姿怖すぎでしょ。まるで魔王だよ」
「誰が魔王だってぇ?」
「ほらほら2人共。朝から喧嘩しないの」
そんな2人を心配し紅音先生が仲裁に入ってくれた。
「だって先生・・・」
それでも納得しきれず不満げな態度をとる智だったが、何か耳元で囁かれると急に顔を赤らめ黙りこくってしまった。
「あれ?どうしたの急に顔真っ赤にして?紅音先生何言ったの?」
「え、大したことじゃないよ。ただ・・・」
「あー!もうすぐ次の活動が始まる時間ね。準備するよシノ」
「え?まだ時間がってどこに引っ張ってくの!」
何か聞かれたかまずいのか智は紅音先生の答えを遮り、その場から逃げ出すようにシノを連れて食堂を後にした。
「そうそう、やっぱり仲間同士仲良くしないとね」
「紅音先生何を言ったんですか?」
「フフッ、秘密」
奈々の質問に人差し指を口にあてイタズラっぽく笑い紅音先生は元の席に戻っていた。
朝食の時間も終わり、クラスの皆は外の広場に集まっていた。次の活動だが、実行委員が密かに準備していて何をするかは教えてもらえておらず、どんなことをするか予想する声が聞こえていた。
「シノ、次の活動は何するの?あなた実行委員でしょ」
「それはお姉ちゃんでも秘密!もうすぐ分かるよ。ほら、来た来た」
シノに促されステージに目を向けると実行委員長の翔太が立っていた。
「それでは今から実行委員会主催のイベントを初めていきます!が、その前にこの町に言い伝えを一つ話。
この町はかつて魔王によって滅びかけていました。そこに1人の勇者が現れ聖剣の一振で魔王を倒してくれました。」
こう言うと1枚の紙を出した。
「皆には二人組で協力してこの地図に示されている『聖剣の記憶』を探してもらいます。全部見つけると聖剣がある場所が分かるのでそこがゴールとなります。注意事項としては・・・」
色々な注意事項を話している中、菜々がシノの肩をポンポンと叩いた。
「どうしたのお姉ちゃん」
「勇者が魔王を倒すために使った聖剣を探すってどうやって思い付いたの?まるで今の私達みたいでしょ」
「ほら、最近あるゲームの新作が出たでしょ。勇者が魔王を倒すために冒険するゲーム。それとこの町に元々言い伝えられていた聖剣の伝承ミックスしただけだよ」
「え!?聖剣についての伝承はあったの」
「あったけど多分それって退魔の剣とかビームが出る剣とかじゃなくて草薙の剣とかの事だと思うよ」
「?なんの事か分からないけどそれなら納得かも」
「ほら、説明終わったし組み決めのくじを引きにいこうよ」
菜々の質問が終わる頃に翔太の注意事項の説明が終わりくじ引きが始まっていた。
「あれ?そういえば永瀬さんは?」
「ああ、智逹は実行部隊だから先にポイントに行ってヒントを設置してるよ」
「だから数人いないんだね」
「三井さん設置全部終わったよ」
「ありがとう永瀬さん。こっちも全員出発したところ」
実行部隊の智が広場に戻って来る頃には全員出発した後だった。
「いやー、みんな楽しんでくれてたらいいんだけどな」
「ふふ、しっかり計画してたんだから大丈夫だよ」
「だといいがな」
顔は笑っていたが目の奥には不安の色が見えた。
「そんなに心配ならバレない程度の距離をとってついていくのはどう?進行なら私逹がやるからさ」
「まあ、お言葉に甘えたいところだけど1人でか・・・。そうだ!」
何か思い付いたのかこっちを向いた。
「1人ってのも面白くないし、永瀬さんも一緒に行こう!」
「はぁ!?」
実行委員のみんなに提案してみたところ、翔太がこのイベントのことを成功させたいという思い一番強いことは分かっていたので行くことについてはすぐにOKが出た。しかし・・・
「おま!彼女と一緒に行くだぁ!?誰も抜け駆けしないってことで昨晩俺達で紳士協定結んだってのに早速破くつもりかぁ」
「そうだ、そうだ!ふざけるなぁ」
私が同伴するのは反対されていた。昨日バスの中で彼氏がいるという驚愕の事実を知った男子逹は傷心の中、病気で休学中の彼氏に変わって彼女を他の男から守り、手を出さないということで紳士協定ができたらしい。しかし、
「協定が終わるのはあいつが帰ってきた時、あんまり面識がなかったとはいえ俺逹に彼女がいることを黙ってた罪で一発殴ってからだろ!」
「そのぉ・・・できればやめてほしいかなぁって」
そんなお願いも虚しく、怒りに震え拳を握る彼らの姿に恐怖を感じたのだった。
「いやー、今のところなにも問題なく進んでて良かった良かった」
「まあ、三井さんがしっかり計画してたからだよ」
「いやー、美女に誉められるなんてうれしいなぁ」
私達は最後尾から見つからない程度に時間を開けてルートを歩いていたが今の所は全く問題はなかった。しかし、問題は突然発生した。
歩き始めてルートを半分過ぎた辺りで問題が発生した。
人影の少ない森の中で急に翔太がその場に立ち止まった。
「どうしたの、何かあった?」
「・・・ねぇ、丁度聞きたいことがあるんだけどいい?」
「え?別に私に答えられる事ならいいけど?」
「そうか、じゃあ」
そう言うとくるっと私の方を振り返った。
「永瀬さんは・・・いや、お前は友久なのか」
「ふぇ?」
あまりにも予想外過ぎる質問に面食らい思考が一瞬停止した。
「ちょっと待っててね」
1度大きく深呼吸をして、止まった思考を巡らして、1つの回答を導き出した。それは・・・
「そ、そ、そんなことありえないよ!」
緊急事態だった。
「だって彼は男で私は女なんだから!それとも、彼は女だっていうの?」
「いや、それはありえない。俺の目が男と女を間違える事は有り得ない!」
キラッと眼鏡を光らせる翔太。
「なら!」
「でも、気がかりな点がいくつもあった」
「気がかりな点?」
「まず、あいつとあなたが一緒にいる姿を誰1人見たことがないんだ」
「それは・・・そう!彼が恥ずかしがって一緒に外出してくれなかったの」
しかし、翔太は首を横に振った。
「いや、そういう意味じゃない。同じ時間に2人が存在する記録がひとつもなかった。まるで、1人が2役やってるように」
「・・・」
「それに、あなたがいつどこからどうやってこの町に来たか、何より過去の情報が一切存在しない。まるで急に湧いて出来きた存在だった。それらを考慮してお前が友久だって導き出した。さ、反論ある」
「・・・・・・はぁ、どうやってそこまで調べたんだ?」
「そりゃあ、俺は情報屋だからな、企業秘密に決まってるだろ」
「将来警察なんかが向いてるよお前は」
私は観念し変身を解いた。
「そうだ、俺は友久だ。心配させたのは悪かったな」
「ま、その点は怒ってるが今回はちゃんと明かしてくれたから許してやるよ」
「というか、バレてたなんてな。思い出すだけで恥ずかしいんだが」
今まで仕方なかったとはいえ女として振舞っていた事が脳内でフラッシュバックし恥ずかしくなった。
「ま、このことは他の奴には黙っといてやるから。俺たちは友達だからな」
「しょ、翔太!そうだな友達だもんな」
友達という懐かしい言葉を噛み締め少し微笑んだ。
「それで友達としてお願いしたいことがあるんだ!」
「ん?なんだ」
「触らしてくれないか」
「嫌に決まってるだろ!」
「いいだろ!友達なんだからさぁ」
「友達でも限度があるだろうがぁ!」
この後のことの顛末は帰ってきた私が涙目になりながらシノを助けを求めたことにより翔太のセクハラが発覚し男達にボコボコにされたのだった。
林間学校での活動は全て終わり帰りのバスに揺られていた。
(どうすればいいんだよ。この状況)
そう困惑する私の両肩にはすうすうと寝息をたてながら眠る菜々とシノの頭が乗っていた。おかげで全然寝ることが出来なかった。
そんな事を考えているうちに見慣れた町の景色が見えてきた。特にモンスターが暴た後はなくホッと一息着いた。
そうして私達の林間学校は無事に終わったのだった。




