フェイター
友久達は町を見てまわろう家を飛び出した。自分が平行世界に来たと実感しているなか目の前に不思議な穴が現れる。
俺達は家を出てとある場所に向かっていた。確かにクロが言ったようにこの町には被害がでていなかった。
「それにしても、お前そんな姿になれるんだなクロ」
カバンに付いている黒猫のキーホルダーを見ながら俺は言った。
「あんまりジロジロ見るなよ。変なやつと思われるぞ」
「そ、そうだな。気を付ける・・・」
そう言って黒猫のキーホルダーを元の場所になおした。今クロはこのキーホルダーに変身している。なぜなら、移動が面倒くさいだかららしい。
(猫なんだから少しは歩けよ・・・)
その提案に俺は呆れていたが、一応もしもの為に連れて行くことにした。
俺は学校が何処にあるのかを知ると共にこの町を見て回ろうとおもっていた。まずはじめに高校に向かっていた。
「それにしてもこの町、似てるけど似てないな・・・」
確かにこの町の風景はかつての町の風景と似ていた。でも、所々何かが足りなかったり新しいものがあった。そんな町を見てると改めて平行世界に来たんだと実感した。
そんな物思いにふけているといつのまにか高校の前にいた。
「まさか、またここに来るとは思わなかったな・・・」
校門には『柊剛高等学校』と書かれていた。この名前はかつての学校と同じ名前だった。
今は4月6日に行われる入学式の準備の為に色々と準備が起きないんされていて、校門の裏には『入学式』の看板が立て掛けられていた。
「そういや、お前何歳だったか聞いてなかったな」
「まだ言ってなかったな。一応18才だけど」
「18才か・・・。じゃあ、お前にとっては二度目の高校生活か・・」
「うん、そうだな」
俺はクロから目をそらしながら返事をした。
そんな様子を見てかクロはそれ以上その話はしなかった。
「ほら学校も見たし、この町を見てまわるんだろ。ゆっくりし過ぎると見れなくなるぞ」
「そうだな、んじゃ次は商店街に行くか」
俺は向きを変えて今度は商店街に向かっていった。
「なあクロ、そういや聞きたいことがあるんやけど」
商店街に向かう途中、ふとあることを思い出した。
「今度はなんだ?」
「いや、俺達は歪みの世界に入ってそこにいるモンスターを倒さなくちゃいけないんだよな」
「おう、そうだけどそれがどうした?」
「なら、歪みの世界に入るにはどうすればいいのかなって」
「それなら簡単だぜ。『歪みの穴』ってのが現れるからそこから入ればいいだけだ」
するとクロは猫の姿に戻り肩の上に乗り周りを見渡した。
「ほら、あんな感じの黒い空間が現れるんだ」
確かにクロが指差した先に何か真っ黒な空間があった。
「なるほど・・・。あれが歪みの穴なのか」
「そう、あれを見つければいいんだ」
「ついでに一ついいか?」
「ん?」
俺は新たに浮かんだ質問をクロにした。
「あれ、こっち来てるよな」
「・・・そうだな」
穴はだんだんこっちに向かって近づいていた。
「いきなり過ぎるだろー」
そう言いながら俺は歪みの穴に吸い込まれたのだった。
「イテテ・・・」
軽くぶつけた痛みが全身にあった。
「ここ、何処だよ・・・」
目の前に広がっているのは電気は通ってなく明かりはなく家などの建造物は壊れいる光景だった。そして太陽は赤く染まり辺りを照らしていた。まさに地獄にいるようだった。
「ここが歪みの世界だぞ」
いつの間にか側にクロが座っていた。
「名前でどんな場所が想像してたが思った以上にとんでもない世界だな・・・」
おれは苦笑いをこぼした。
すると何処からか地響きがし始めた。それはだんだんこっちに近付いていた。
「な、なんだ?」
「『モンスター』が近付いてきてるんだ」
「ま、まじか・・・。まさか初戦が初日で、しかも1人なんてな」
「まあ、覚悟を決めて戦うしかないな。それに俺もいるから2人だぜ」
そんな事言ってる間にも地響きは近付いていた。
「天使から貰った指輪にある宝石に触れば変身できる。戦い方は後で教えるから今は変身しろ」
「分かった」
俺は右手の中指に嵌めてある指輪に触れた。次の瞬間、俺の体は光りはじめて眩しくて俺も目をつぶった。
少し時間が経って俺は少しだけ目を開けた。光は消えて周りが見えるようになっていた。
「これが『フェイター』なのか・・・」
確かにさっきまでとは違い、力が湧いてきていた・・・
(ん?)
俺はとてつもない違和感を感じた。自分の声がいつもより高くなっていた。それに胸の辺りがなぜか重い・・・。不思議に思い胸の辺りに手で探った。すると、柔らかい何かが手に当たった。
「なっ、なんだ?」
慌てて下を見て俺は驚いた。
「な、なんで!俺女になったんだぁぁ!!」
俺はこの日を境に女に変身してしまうようになった。
「え?な!ど、どういう事なんだ?」
あまりに想定外過ぎて俺はパニックを起こしていた。
「おい、クロ!これはどういう事や」
説明を聞こうとクロの方を見たがクロも唖然としていた。
「俺だって分からねぇよ。だってフェイターは女しかなれないから、お前が来た時点で不自然だと思ってたんだよ」
クロもお手上げ状態だった。
すると、後ろからとてつもない雄叫びが聞こえた。振り返るとそこにはモンスターが姿を見せていた。
「とも、今はあっちが優先だ!」
「あーもー、分かったよ。後で色々聞くからな」
こうして俺のモンスターとの初戦が始まった。と言っても・・・
「これ、どうやって戦うんだよ!」
俺はモンスターの攻撃を避けるので精一杯で攻撃ができていなかった。
「なにか武器は持ってないのか」
「も、持ってない。てか、武器が出てくるの」
「無いなら、お前の武器は『魔法』だ」
「ま、魔法」
「そうだ、魔法だ。一旦距離を離せ」
「分かった」
俺はモンスターが攻撃した瞬間に後ろに大きく飛んだ。思った以上に遠くに飛び少し驚いた。
「で、距離を離したけどどうすればいいんだ?」
「手のひらをあいつに向けるんだ」
「こ、こうか」
クロに言われた通りモンスターに手のひらを向けた。
「「・・・」」
しかし、俺の手のひらからは何も起きなかった。モンスターも距離を詰めようとこっちに走ってきている。
「ク、クロ。どうすればいいんだよ」
「右手に力を入れろ。そしたら何か出るはずだ」
「あーもー!どにでもなれー!」
ありったけの力を右手に集中させた。すると・・・
「な、なんか出てきた」
右手から火の玉が現れてそれが段々大きくなり手より大きくなったところで膨張が止まりモンスターに向かって飛んでいった。
「痛っ」
飛んでいく反動で俺は転けてしまったがモンスターがいる方向から爆発する音と耳に残るような叫び声が聞こえ煙がたちこめていた。
「や、やったか」
「おい、それを言うな」
クロが注意した瞬間、煙からモンスターのパンチが飛んできた。
「やべっ」
気を抜いていた俺は避けることができずガードした。とてつもない衝撃がガードした腕から伝わって吹っ飛ばされた。
「ぐはっ」
折れててもおかしくない衝撃的だったか折れてはいなかった。でも、痛みでうでが動かなかった。そんな自分の体を心配していると。
「とも!避けろ」
「え?」
まえを見ると目の前にモンスターがいて大きく振りかぶっていた。
(ダメだ。俺死んだ)
俺はぎゅっと強く目を閉じて覚悟を決めた。しかし、いつになっても衝撃はこなかった。何かが倒れる音がして、恐る恐る目を開いた。
「いやー、ギリギリ間に合った」
目の前には剣を持っている少女と二つに切れたモンスターがいた。
「た、助かったのか?」
「まあ、いつも助けられてるしお相子様だよ」
そう言ってニコッと笑い彼女は右手を出した。俺はその手を掴み引っ張られるように立ち上がった。
「あ、ありがとう」
「私は西山奈々よ。貴女の名前は?」
「あ、長瀬友久です」
「ふーん、友久ね。まさか貴女みたいな可愛い子が私と同じフェイターなんてね」
「か、可愛い?!ち、違う俺は男なんだ」
今まで可愛いなんて言われれた事がなかった俺はつい顔を赤く染めた。
「そんな事言われてもそんな姿で納得できないなー」
奈々はニヤニヤしながら俺を見た。
「や、やめてよぉ。てか、同じって事は」
「そう、私達は仲間なのよ」
「よ、良かったぁー」
俺は胸を撫で下ろした。初日で仲間に出会えるとは思っていなかった。
「そういえば、貴女なのいつも私が来る前にモンスターを倒してくれてたの?」
「ち、違う。俺は今日この世界に来たんだ」
「そうだったんだ。じゃあ、もう1人も何処かにいるのかー」
彼女はブツブツと何か言い始めた。
「ま、それは後でいいや。それで初めてなら私達の本基地が何処にあるか知らないでしょ」
「そうだ、本基地。何処にあるんだ」
「じゃあ、今からあんな・・・」
やっと本基地、天使と交流できると思い、ほっとしたが
「奈々さん。もう時間が無いです」
「え、本当だ!急がないとセールに間に合わない」
急に白猫が現れたと思ったら彼女を急がせた。
「それじゃー、明日学校終わりに校門に集合ってことで」
そう言うも慌てて穴に向かって行った。
「ちょ、待って・・・」
俺の制止も聞こえず彼女は姿を消した。
「なんだったんだ彼女は・・・」
「それよりも俺達も急ぐぞ。時間が来る」
「わ、分かった」
俺達も彼女の後を追うように穴から出ていった。
こっちの世界にでるとさっきまでボロボロだった服が元通りになっていた。
「初戦は何とか勝てたな、とも」
「そ、そうだな。彼女が居なかったらやられていたかもしれないけどね。なあ、1つ質問いいか」
「ん?なんだ」
「俺、どうやって元に戻ればいいんだ?」
「・・・宝石にもう一度触ったか?」
「うん」
「・・・まあ、もしかしたら戻れないかもしれないな」
「はぁ?!ふざけるなよ、俺は男なんだぞ」
「知るかよ。本来フェイターは女しかなれないのに男のお前が変身できた時点でイレギュラーなんだよ。対策なんて知るか」
「そんなぁぁぁぁ」
この後、俺は商店街に行く予定を変更して家に真っ直ぐ帰った。結局男に戻れたのは夜で、それまでの間色々と苦労したのだった。そう色々と・・・
奈々はいつもとは違いニコニコしながら家に帰っていた。
「上機嫌ですね奈々さん」
白猫のキーホルダーが奈々に話かけた。
「え!?なんで分かったんですかシロ」
「なんでって、顔に出てますよ」
「ほ、本当ですか!?」
奈々は恥ずかしくなり顔を赤らめた。
「もしかして、彼女が関係するんですか」
「は、はい。やっと仲間に会えたので、嬉しくてつい・・・」
「まあ、仲間と合流できたことは良いことなんで今日は良い収穫がありましたね」
「そうですね。本当は今日が本基地を紹介した方が良かったんですが用事があったので」
奈々はチラッと持っていたエコバックを見た。そこには特売と書かれた食品が入っていた。
「彼女も高校に来ると天使が言っていたので放課後の校門に集合と言いましたが、彼女変身前の奈々さんを見て分かりますかね?」
「あ・・・」
彼女の顔が白くなって変な汗がではじめた。
「ちゃんと私達が見つけてあげないといけないですね」
「そ、そうですね」
そうして2人は家に帰っていった。