出発
林間学校当日になり、智達を乗せたバスが目的地に向かう。その道中とあるアクシデントが彼女を襲う。
「おっはよー智ちゃん。早く行こうよ」
朝イチから激しくインターホンを押す音に目が覚めてドアを開けるとそこにはシノ達がいた。
「あ、今日は普通の格好なんだ」
「当たり前だろ。この前は疲れてただけだ。てか、シノ!うるさい!もう少し静かにできなかったのか」
「すみません。やめるように言ったんですがシノが聞かなくて」
「いいよ西山さん。先に行ってて。すぐに追い付くから」
「いや、ここで待つ」
「その為にここにいるんですから」
どう見ても二人ともその場から動きそうにもなかった。
「分かった。じゃあ、5分待ってて」
そうして、部屋に戻って変身し昨日まとめておいた荷物を持って部屋を出ようとして・・・
「おいこら。俺を忘れるな!」
クロが頭の上に乗ってきた。
「え?だって今回はフェイターになる必要もないし」
「だとしてもお前は常時変身しておく必要が」
「それは心配しないで。変身はコントロールできるようになったから。それじゃ、留守番よろしく」
クロを持ち上げて布団の上に置いて部屋を後にした。
「オレ、留守番かよ」
ショボーンと落ち込んでいた。そんな姿を見智は少し笑った。
「ウソウソ冗談。行くよクロ」
「お前!ほどほどにしろよな!」
ぱぁぁぁっと顔が明るくなったクロはキーホルダーになった。
「ごめん、お待たせー!」
「い、いえ大丈夫です」
「それじゃあ、揃ったし!林間学校かに向けてしゅぱーつ!!」
「あ、永瀬さん。西山さんおはようございます」
学校に到着するとちょうどバスに乗ろうとしていた雪がこちらに気づいて挨拶をしてきた。
「おはよう。雪さん」
「おはよう。横松さん」
「ええっと・・・。後ろにいる人は・・・」
「そういえば話すの初めてだったね。私は西山シノ。奈々の姉なんでよろしく」
「え?あのぉ・・・」
「コラ!横松さんを困らせない!」
戸惑っている雪を見てニコニコしているシノの頭を奈々は叩いた。
「いったぁ」
頭を叩かれたシノは頭をおさえてしゃがみこんだ。
「すみません。妹がご迷惑をおかけしました。先に失礼します」
そのままシノを引きずりバスに乗り込んでいった。
「あははは。ごめんね朝から騒がしくしちゃって」
「私は構いませんが、シノさん大丈夫でしょうか」
雪は心配そうに二人を目で追いかけていた。
「大丈夫だよ。二人ともいつもあんな感じだし」
「どうしたの雪?」
いきなり後ろから声を掛けられて振り向くとそこには浅山さんがいた。
「あ、おはよう。梨央ちゃん」
「おはよう、雪。それで、そっちにいるのは・・・永瀬さんだっけ?」
「はい、永瀬智です。おはようございます」
「そんなにかしこまらなくてもいいわよ」
ニコッと笑いながら言った。が、目は全く笑っておらず、何故か敵意を感じ冷や汗をかいた。
「わ、わかりました。あ、奈々ちゃん達が呼んでるようなんで先行きますね」
私はその場から逃げ出すようにバスに向かった。
「どうしたんだろう永瀬さん・・・」
心配そうに智を見る雪を見て大きくため息をついた。
「ほんと、あんたはお人好し過ぎるのよ」
「え?」
「貴女も耳にしたことがあるはずよ。彼女は長瀬友久と付き合ってるかもって」
「まぁ、はい。でも、それとどんな関係が」
「おおありよ!なんで恋敵なんかと仲良くなるのよ」
「え?いや、その・・・」
梨央の剣幕に少したじろいた。
「まだ、確定した訳じゃないし。私の気持ちが『好き』だったかどうか分かりません。それになぜか、彼女を見ると懐かしいような、胸が痛くなるんです」
そんな煮え切らない答えに梨央は呆れため息をついた。
「まあ、貴女が良いならそれでいいわ。それはそうとして。例の探し物は見つかった?」
「・・・いいえ、手がかりも思い出せないです」
「そう。なにか思い出したなら教えるのよ。探すの手伝ってあげるから」
「はい。ありがとうね梨央ちゃん」
「横松さん、浅山さん。バスが出発するので早く乗って下さい」
バスのなかで待っていた茜音先生に呼ばれ二人もバスに乗った。
バスで移動といっても大体一時間程度で特に問題が起こる事は無かった。ら良かった・・・
「それでは、この学校に彗星のごとく現れたマドンナ永瀬智さんへのインタビューを始めていきたいと思います。インタビュアーは柊剛高校の情報屋三井翔大です。今日はよろしくお願いしますね」
「えっと・・・よろしくお願いします?」
隣に座る翔大からマイクを向けられ困惑しながら答えた。
「って、え!?どうして、インタビュー?しかも私に?なんで?」
やっと頭の整理が追い付きマイクを押し返した。
「なんでと言われましても、いまだ校内で噂の多いのですから当然ですよ。それじゃあ、1つ目の質問からいきますね」
「待って、理由になって・・・」
「質問1、現在26回の告白を受けたそうですが現在、お付き合いをしている男性はいますか?」
そんな私に構うことなくインタビューが始まってしまった。
「って、どうして告白された回数を知ってるの!」
「そんなの、情報屋からしたら当たり前のことなんで。それで、付き合ってる人はいるんですか?」
「えっと・・・」
周囲を見渡すと何故か周りの男子達は祈るかのようにじっとみていた。
「そんな人いませんよ」
「「うぉーーーー!!!」」
私が答えた瞬間、男子どもの雄叫びがバス内に響いた。
「なるほど、ありがとうございます。続いての質問なんですが、女性好きという噂があるのですがそれはほんとうですか?」
「えっと・・・。特に女性が好きで男性は嫌いということは無いですよ」
「それでは、好きな人のタイプを教えてもらっていいですか?」
「それは、優しくてカッコいい人です」
特に誰だとは答えず無難な返答をしていき、このまま問題なく終わらせそうでホッとをした。
「ありがとうごさいます。それでは、最後の質問なんですが、長瀬友久さんとはどのようなご関係なんですか」
「!?!?!?!?」
予想もしてなかった質問にピタッと動きが止まった。
「貴女の情報は何故か同業者の誰一人持っていなかった。途方に暮れている時、あることを思い出したのです。貴女と一度あいつの玄関先で出会った事に!」
翔大の言葉でバス内がざわつきはじめた。
「そ、それはたまたま私が家を間違えてしまっただけで・・・」
「アパートとかならともかく一軒家で間違えるのは不自然です。なので、とある方達から証言をもらったのです」
といいながらバックの中を漁りスマホを取り出して画面を見せた。
「え?2人の関係について?」
そこにはインタビューを受けている1人女子が写っていた。誰か分からないようにモザイクと声も変えられていたが・・・
私は心当たりのある1人を睨んだ。彼女は目があった瞬間に目を反らした。
「言ってもいいけど私が誰か分からないようにしといてね・・・。実はここだけの秘密なんだけど二人は他人以上の関係なの!」
「「ぐわぁぁぁぁぁ」」
とんでもない爆弾発言に男子どもは泣き崩れた。確かに嘘はついてない。ついてないが!
さらに彼女を睨む目が険しくなる。彼女はというと目を反らして口笛を吹いていた。
「だって、2人は同じ屋根の下で暮らしていたんだし、男と女、同じ屋根の下、何も起きるはずが・・・」
「ち、違う!そんなことしてないから!」
これ以上の爆弾を投下される前に私は話をたちきった。
「そこまで慌てているということは・・・」
「やましいことなんてしていません!ただ少しの間だけ一緒に生活していただけなの!それに彼は親戚なだけで皆さんが想像しているような深い関係ではありません」
「本当にそうですか?」
「??」
そういって翔大はスマホをいじり別の動画を見せた。
「えぇ、彼女達は親戚ではないわ」
「なぁぁぁぁ!!?」
そこに写っていたのは会長だった。
「そ、そうなんですか。では、何故彼女はそのような嘘を・・・」
「そんなの恋人だってことを隠したいからだと思うわよ」
翔大の質問に会長はとんでもない爆弾発言をした。あまりにもとんでもない発言に私は空いた口が塞がらなかった。
「おい、大丈夫か!しっかりしろ!!」
周りの男どもはというと意識を失い倒れる者や血涙を流す者など地獄だった。
「それで、本当に恋人なんでしょうか!?」
「そ、それは・・・」
どう考えてもここで否定しても信じてもえそうもなく、恋人だと分かれば告白も減るとメリットを考えた結果。
「・・・はい」
私は首を縦に頷いた。
周りからは女子達の叫び声に男どもの嗚咽。そして、俺に対しての恨み節とカオスだった。
その後は俺のどこが好きになったかやどっちが先に告白したのかなどバスが到着するまで質問の嵐は収まらなかった。
到着後、一度荷物を部屋に置いて集まることになり各自それぞれ部屋に向かった。といっても部屋は三人部屋となっており天使の考慮かは分からないが西山姉妹と一緒の部屋になった。
「はぁーもう嫌。あんな恥ずかしい思いもうしたくない」
「そのー。大変でしたね」
バスの中で受けた心の傷で私は部屋につくなり倒れこみ、奈々は気をかけてくれていた。
「二人ともそんなにゆっくりしてていいの?野外炊飯の準備があるかあるでしょ」
そんな二人をよそに原因Aはジャージを取り出していた。
「そうだった。あんまり時間の余裕ないんだった」
「それじゃあ、着替えて行くよ」
そう言ってシノは制服の端を掴むと上着を脱ぎはじめた。
「うわぁ!ねぇ、ストップ」
「ん?どうしたの?」
下着が見えそうになって慌てて目を反らした。そんな私をシノは不思議そうに見ていた。
「どうしたの?じゃないよ。一応私は男なんだから・・・・そのぉ・・・」
「別に今は女の子でしょ。大丈夫だって。よいしょっと」
そんな心配も露知らずと脱ぎかけの制服に手をかけた。
「あわ、あわわ、あわわわわ」
「こら、永瀬さんが困ってるでしょ。私達は浴場の更衣室で着替えるよ」
困り果てた私を見て奈々は助け船を出してくれた。
「そしたら、私達は更衣室にいますので永瀬さんはここで着替えてて下さい。ほら、行くよ」
「はーーい」
二人は着替えを持って部屋を後にした。
「あいつ、次何かしたら許さないからな」
そうブツブツ言いながらジャージに着替え始めた。
「まあ、面白いものを見せてもらったけどなw」
「うるさい、やっぱり連れてくるんじゃなかった」
そんな苦労する私を見てクロはケラケラ笑っていた。
「まあ、こんな楽しい事が出来たのもあいつの配慮と会長が1人残ってくれたおかげだから感謝しないとな」
「まあ、そうだけど。会長1人で大丈夫かな」
「まあ、元々半年近くは1人で戦ってたから大丈夫やろうし、ほんとに危機的な状態になったらお前たちを連れて町に戻ると思うしな」
クロは外の光がよく当たる窓の縁に移動すると体を丸めた。
「それじゃ、俺は日向ぼっこしてるからお前も楽しんでこいよ」
「ほいほい。クロも旅館の人に見つかって部屋を追い出されるようなことは無いようにね」
そんな話をしていると廊下から誰かが走ってくる音がして、部屋の前でとまったかと同時にシノが部屋に戻ってきた。
「たっだいまー!智ちゃん着替えた?」
「もう着替えてるよ。時間も無いし行こうか」
「二人とも置いて行かないでくださいよ」
そういって三人は野外炊飯場に向かっていった。




