激突
1枚の手紙を残して姿を消した奈々は彼女と相対していた。本物のかけた戦いの火蓋が切って落とされる時、奇跡が起きる。
拝啓、お世話になった皆様へ
今までお世話になりました。先生と会ったあの日から私がどうして選ばれたのか不思議でした。でも、話を聞いて納得しました。求めているは偽者の私ではなく、本物の奈々だという事に。なので私は彼女に体を返そうと思います。ですが安心してください。
どんな私でも、私は皆さんの仲間ですから。 敬具
西山奈々
「あのバカ、なに考えてるのよ!」
私は天使から送られた場所に急いで向かっていた。
(どんな私でも、智さんの仲間ですよね。って当たり前だけど、だけど!)
「奈々ちゃんは奈々ちゃんだけなのよ!」
そんな怒りに満ちた心の声がこぼれた。
紙に書かれている場所に向かうとそこには本物の奈々がいた。
「はは、まさか、本当に来るとは思わなかったわ。この場所覚えていたのね」
彼女は嘲笑いながら奈々の方を見ていた。
「はい、忘れませんよ。ここは初めて彼・・・智さんと初めて出会った場所ですから」
「そんで、何しに来たの?まさか、話し合うためにここに来たとか言わない・・・」
「そんなことありません」
奈々は変身すると剣を構えた。
「・・・やるってんの?」
スッと笑いが消え、低く響く声とともに剣を抜く音がした。
「はい、私はどちらが本物の西山奈々なのか白黒ハッキリするためにここに来たのですから」
「ふんっ。勝手なことを真実を知らないくせに。丁度いいわ、ここで真実を」
「真実は聞きました。天使から」
「なっ!?」
彼女は目を見開いて驚いた。
「確かに私は偽者かもしれません。でも!」
目を伏せていた奈々は彼女をじっと見据えた。
「彼女達が求めている西山奈々は強くなくてはいけないんです。だから!」
「この戦いで決めるって事ね!」
キーンとお互いの剣がぶつかり合う音を合図にふたりの戦いが開戦した。
「天使が教えてくれた場所はこの丘を越えた先にあるはず・・・」
辺りを見回しながら一つの疑問が浮かんでいた。
(どうして、彼女が歪みの世界に居るんだ?ここに行くにはモンスターが作り出す歪みの穴に入るかそれとも)
「!!」
一瞬後ろから何かを感じ反射的に避けた。その直後に自分がさっきまでいた場所に鎌が飛んできた。
間一髪で避けることができ、突き刺さった鎌のほうを見ると土煙の中に人影が現れた。
「おかしいと思ったよ、どうして彼女がここにいるのか。貴女が手助けしてたなんてね。会長」
「ええ、そうよ」
咲夜の声が聞こえ、地面に刺さった鎌を抜きブンッと振ると土煙が晴れ中から咲夜が現れた。
「今から私と遊んでくれるかしら?」
「あはは、会長のご指名は嬉しいけど、今日は無理なんですよ。退いてくれます?」
そう言いながら一歩踏み出そうとしたが目の前に鎌を振り下ろされた。
「行かせないわよ」
「・・・会長は奈々ちゃんを見捨てるつもりなんですか」
「見捨てるもなにも、あの戦いは二人が選んだ事なのよ。それにもう一人の西山さんの方が本物だって聞いたわよ」
「はい、私も奈々ちゃんと一緒に天使から聞きました。確かに本物は彼女かもしれない。でも!私にとって奈々ちゃんは奈々ちゃんだけなの!だから」
私は右手に魔力を込めた。
「なら、私も全力で止めさせてもらうわよ」
咲夜も智に狙いを定めるかのように構えた。
「ほらほら!さっきまでの勢いはどうしたの」
彼女の息をつかせぬ連続攻撃が奈々に襲いかかっていた。
「っっ!!」
必死に攻撃をさばき続けるがそれでも避けきれず体勢を崩した。
「ここっ!!」
「きゃあー!!」
一瞬の隙を見逃すことはなく強烈な一撃をくわえ、奈々は大きく後ろに飛ばされた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁー。せっかくやる気出して戦ってるのに圧勝過ぎて面白くないんだけど」
息を切らしている奈々に対して彼女はつまらなそうに持っている剣で遊んでいた。
「まだ・・・まだ、これからです!」
「これからって言ってるけどもうボロボロじゃない。いい加減大人しく消えてくれる?」
「それは出来ません。まだ決着はついていませんから」
そう言いながらさっきとは違う剣の構えをした。
「そう。じゃあ、これで終わりにしてあげる」
彼女も剣を構えた。
ふと、さっきまでとは違う風が彼女の頬を撫でた。一瞬、何かと思い奈々から一瞬意識をそらした。その一瞬だった。
「今!」
そのチャンスを待っていたかのように突風が奈々の背中を押した。
「!!」
気付いた時には奈々は目の前にいた。
風に押された奈々は目にも止まらぬ速さで突撃していた。
「くっ!?」
反応は遅れたがなんとか剣でさばいたが、あまりの衝撃に体勢を崩した。
「あれは!!」
その攻撃はかつて彼女が会長を追い込む為に使った技だった。
(まさか、あの技を使えるようになっていたなんて)
その一方で奈々は風を使って方向転換しまた彼女を狙い攻撃した。
「この!」
2度目の攻撃もどうにか剣でさばけた。が・・・
「!!」
彼女の剣が折れてしまった。
「まさかあの時!」
二人が剣を交えていた時、奈々は一点のみに攻撃を当て続けていた。それにより、脆くなった部分がさっきの攻撃で完全に折れてしまった。
「これで、防ぐ手段はありません!」
さっきと同じように方向転換し彼女に狙いを定めた。
「これで最後です!」
奈々の渾身の一撃は彼女の胴をとらえ、その場で息絶えた。
はずだった。
「え?」
奈々は拍子抜けた声が漏れた。
確かにあの時、奈々は彼女の武器を破壊したはずだった。なのに、なのに・・・
「グハッ!」
予想外の展開に技が暴発して地面を転がり倒れこんだ。
「惜しい。なかなかだったよ」
膝をついて見上げると、目と鼻の先に剣を向けた彼女の姿があった。
「何で・・・さっき武器を破壊したはずなのに」
「ええ、確かに貴女は武器を破壊した。多分他の人になら効果的だったけど、私には無駄な事よ」
「どうして!」
「やっぱり聞いてないのね。私の使う魔法は『錬金術』。そこに無いものを生み出すのが得意なの」
彼女は剣を持ってない手で小さな剣を作った。
「ほらね」
「・・・」
「それじゃ、勝負も決まった事だし。んで言い残す事はある?」
「・・・」
うつむいたまま彼女は何も言わなかった。
「そっか。それじゃ」
そう言って大きく剣を振りって
「さようなら。偽者の私」
振り下ろした。
その瞬間、奈々は違う方向を見てなぜか笑っていた。
「クソ!そこを退いてよ会長!」
「嫌よ。時間稼ぎをしてって頼まれたのだから」
イライラする智に対して会長は冷静だった。
一瞬能力を使おうと思ったがすぐにその考えを捨てた。以前彼女に使ったときはほんの少ししか効果がなかった。
「ねぇ、どうして貴方は彼女を助けようとするの?」
「なんなの。急に」
「だって、知ってるんでしょ。彼女が偽者だって事。そしてこの戦いも彼女が選んだ事に。つまり、貴方は彼女の邪魔をしてるのよ。それを理解してるの?」
「それは、そうだけど・・・」
返事を濁した。そんなこと、天使からの知らせがきた時点で分かっていた。私がやっていることは無駄な事だし余計なお節介でしかなかった。
「貴方がやろうとしてるのは自分勝手な事で、エゴなのよ」
「エゴ・・・」
私はうつむき攻撃を止めた。それを見て会長も鎌を下ろした。
「確かにそうかもしれない。・・・でも!」
私の脳裏にはあの日、涙を流す奈々の姿が浮かんでいた。一瞬、彼女が誰か知らない女性に見えた・・・気がした。
「もう、友達に傷ついて欲しくない。誰かのバッドエンドなんて見たくない!そのために、そのために私は
ヒーローになるって決めたんだ!」
私は渾身の一撃の火球を彼女に向けて放った。
「やっぱり、貴女は変わらないのね。そんな火の粉は私には無意味なのよ!」
咲夜はその一撃を軽々と真っ二つにした。そのまま消滅すると思われていたが。
「!!」
切られた火球から煙が発生して辺りを白く染めた。
「これは、水蒸気!」
彼女が真っ二つにしたのははたからみれば火球だった。しかし、実際は周りを火で囲んだ水球だった。
「み、見えない!」
一瞬で周囲を水蒸気で埋め尽くされ智を見失った。それを見逃す事はなく、
「行かしてもらうね、会長!」
智は咲夜をかわして二人のいる所に向かった。
「本当に、ここ一番の時は予想外な事をしてくれるわね」
やれやれと変身を解いて智を見た。
「任せたわよ智。彼女達の運命を変えられるのは貴女だけよ」
「クソ!時間掛けすぎた。早くしないと・・・!!」
急いで丘を駆け上がった。しかし、そこには膝をつく奈々と剣を構えた彼女の姿があった。
「ダメ・・・」
私は全力で距離をつめる。でも、届かない。
その間に彼女は剣を振り上げ何かを言って振り下ろした。
剣が奈々の体を切り裂く直前、私は奈々と目があった。彼女は寂しそうに笑っていた。
「やめろ!!!」
私は一か八か力を使った。が・・・
「ありがと♪」
後ろから聞いたことのあるような声が聞こえ肩を叩かれた。
「え?」
後ろを向く誰もいなかったが、使おうとしていた力が強制的にキャンセルされた。というか、力を取られた。
「何が・・・」
あまりに予想外のことに戸惑いながらも前を向くと
「!!!」
そこには彼女の剣を受け止めるそっくりの彼女がいた。
彼女の一撃を止めることができるはずはなかった。なのに・・・
「はい、ストップー」
急に現れた何者かにいとも簡単に止められてしまった。
「誰なの、私の邪魔をするのは!」
「誰って忘れたの?お姉ちゃん悲しいよ」
「「え!?」」
彼女と奈々は目を見開いた。そこにいたのは・・・
「久しぶりね二人共。シノお姉ちゃんよ」
「シノおねぇ・・・」
「ちゃんなの・・・!?」
正真正銘、西山シノだった。
「そうよ。というか!貴女どうして私と同じ姿なの!?」
「え、どうしてって言われても私も分からない。気がついたらこの姿になってたの」
「なるほど、その口調はあっちの奈々ね。ということはこっちが今の奈々ね」
うんうんとうなずきながら何かを納得していた。
シノが現れさっきまでの殺伐とした雰囲気は粉々に砕かれた。
「あ、とりあえず剣しまってくれる」
「わ、分かった」
言われるがまま、持っていた剣を消した。と同時に
「何やってるのこの大バカ者がぁ」
シノの拳骨が彼女の頭にヒットした。
「いったぁぁーーーー」
鈍い音と叫び声が響きわたりその場で悶え始めた。
「妹を守る。そう約束したじゃない」
「え!?」
奈々は目を見開いてた。
「もちろん覚えてるよ。だからあんな危険な事を続けさせない為に私が代わりになるつもりだったの」
「だからって殺すなんて間違ってる気づかなかったの」
「そんなの分かってたよ。でも、これしか方法が思い付かなかったの」
彼女は涙ながらに本音を吐いた。
彼女が今までやろうとしていたことは全て奈々を守る為の行動だった。
そんな泣きじゃくる彼女をシノは優しく抱き締めた。
「ありがとうね。お姉ちゃんとの約束を果たそうとしてくれて」
「当たり前でしょ。だって・・・お姉ちゃんとの約束なんだから」
「ありがとう。奈々」
シノはより一層強く彼女を抱き締めた。
「できればこのまま抱き締めていたけいけど、まだやることが2つあるの。ちょっと待ってて」
そう言って彼女から離れたシノは理解が追い付かず呆然としている奈々の方を向いた。
「久しぶりね奈々」
「本当にお姉ちゃんなの?」
奈々はまだ目お姉ちゃんが目の前にいることが信じられなかった。
「ええ、シノお姉ちゃんよ。妹達に会いたくてここまでやって来たの」
ニコッと笑った。しかし、すぐに顔が曇った。
「彼から教えてもらったわ。・・・本当の事、教えてもらったのね」
「・・・うん」
「自分は偽者だから、消えようしたの?」
「・・・・・・うん」
「はぁーーーー」
シノは呆れて大きなな溜め息をついた。そして、
「大バカが」
奈々の額にデコピンをした。
「どうしてなの。私は偽者で、気弱で、弱いの。そんな私なんて必要とする人なんて」
「だから大バカ者って言ってるの。彼はあんたが必要だから。助けたいから、無茶をしてここまで来たのよ」
シノは一歩横にずれた。そこに現れたのは智だった。
「智さ・・・」
言い終わる前に智は奈々に抱きついた。
「良かった。本当に良かった。奈々ちゃんが生きてて」
「い、痛いです。それに恥ずかしいから離れて」
「嫌よ!絶対に離さない」
奈々は必死に離れようとするが、それでも智は離れず、奈々は離れるのを諦めた。それと同時にそんな智の気持ちに知り、嬉しさのあまり奈々は泣き出した。
「ああ!ご、ごめん。強く抱き締めて」
奈々が泣き出したことに気付き、抱き締める力を弱めた。
「ち、違います。ただ、嬉しかったんです。嬉しくて涙が止まらないんです」
奈々は大きく深呼吸して少し落ち着いた。
「本当に私が必要なんですか?」
「当たり前でしょ!」
智の返答は即答だった。
「奈々ちゃんは彼女達にとって、そしてこの世界からしてら偽者かもしれない。でも、私にとっては本物の西山奈々は貴女で、大切な仲間なの」
「そう・・・なんですね。私、勘違いしてて・・・。ごめんなさい、ごめんなさい!」
今度は奈々が智を強く抱き締めて、胸の中で泣いた。
「そう、貴女は偽者じゃない・・・本物なの。そして、私より強いのよ」
そんな光景を見てシノは微笑みながら呟いた。
「お世話になっています。私は2人の奈々の姉、西山シノです」
「こちらこそ。私は如月咲夜よ」
「私は・・・、今は永瀬智です」
軽く3人は挨拶を済ませた。
「そういえば、どうしてお姉ちゃんが今ここにいるの?確かお姉ちゃんも死んじゃってどこかの世界で生まれ変わってるはずじゃあ・・・」
「普通ならね。でも、魔法を使って今ここにいるの。不可能を可能にするのが魔法の基本だからね」
と笑いながら当然のように言った。
「は、はあ・・・。魔法の基本ね」
一応魔術使いの私からしたらぶっ飛びすぎて訳がわからなかった。
「といっても今回は彼の力を借りたんだけどね」
「・・・って、私?というか、彼!?」
「あなた、男性でしょ。それくらい分かるわ」
「ま、まじかよ・・・」
もう、化け物すぎて何も言えなかった。
その時、シノの体が光り始めた。
「時間がきたみたいね」
シノは寂しそうに言った。
「時間ってもしかして」
「そう。もう、私は戻らなければならないの」
「でも、まだお姉ちゃんと全然話してないのに」
「そうだよ。教えたもらってないことがまだ沢山あるんだから!」
2人はシノの袖を掴んで離れなかった。
「ワガママ言わない。会えただけでも奇跡なんだから」
そんな2人を慰めるように頭を撫でた。
「「でも」」
「でもじゃない」
撫でていた手を離し、拳を握った。
「「は、はい」」
菜々は黙った。
「そういえば忘れるところだった」
シノは彼女の頭に手を置くと体が光りはじめた。
「え?なんで、この体が・・・」
はたから見れば特に変わったようには見えないが、何故か彼女は驚いていた。
「さっきまでの体は魔力で作った仮初めの体だったからね。私の体を使いなさい」
「でも、いいの?この体はお姉ちゃんのじゃ・・・」
「気にしないで。もともと約束を守れなかったから、代わりに私の体で許して」
「本当にいいの?」
「当たり前よ。貴女は今日からシノとして生きなさい」
「うん・・・うん。ありがとう」
そうして、彼女は西山シノとなった。
「そして・・・菜々。今日から貴女がお姉ちゃんよ。この子、外の世界をまだあまり知らない。だから教えてあげなさい」
「うん。分かった・・・って私がお姉ちゃん!?」
「そう。よろしくね」
「でも、私は・・・」
「よ・ろ・し・く・ね」
「は、はい」
パキパキと指を鳴らすシノに怖じ気付いて首を縦に振った。
「それじゃ、元気に頑張るのよ」
そう言うと体が透け始め足元から消えはじめた。
最後まで元気に装っていたシノ。でも、
「ごめんね。貴女達を見てあげられなくて」
最後の最後、シノは泣いていた。
そして、数日が経った。
「えー皆さん。今日は新しいクラスメイトを紹介したいと思います。入ってきてくださーい」
「はい」
茜音先生に呼ばれ教室に1人女子生徒が入ってきた。
「今日からこの学校に転校してきました。西山菜々の双子の妹の西山シノです。よろしくお願いします」
そうして、シノは私達のクラスメイトかつ仲間になったのだった。




