天災と天才
なぜもう一人の奈々は彼女を狙うのか。真実が今明かされる。
「わ、私。人を殺してしまったんですか」
明らかに奈々は動揺していた。
「そうよ。でも、もしあの時奈々ちゃんが居なかったら町に甚大な被害がでてお姉さんは救えなかった。自分を責める気持ちも分かるけどそのおかげで救われた命もあるってことは分かってほしいの」
「・・・はい」
「ねぇ、先生。今までの話を聞いたけど。どこに彼女が奈々を襲う理由があるの」
いくら考えても奈々を消すような理由があるとは思えず天使に尋ねた。
「・・・」
しかし、天使は答えずに黙って奈々の方を見つめていた。
「ど、どうしたんですか。私がどうかしたんですか」
「・・・ねぇ、本当に真実を知りたいの?できるなら知って今はまだ欲しくないんだけど」
「覚悟は決まってます。それに、おね・・・いや、彼女から教えられるぐらいなら先生から聞きたいです」
そう言いながらも先生の見えない所で智の手を強く握っていた。私は「大丈夫だよ」と握った手を強く握り返した。
奈々はハッとこっちを向いて、少し微笑んだ。
あの日、襲撃者達を撃退した奈々は暴走一歩手前の危険な状態だった。
「おい、みんな手伝え。あの子を止めるぞ!」
そういって大人達が必死に奈々を押さえ込む。しかし、
「もー、なにするの」
奈々を中心に暴風が吹き荒れ大人達を吹き飛ばした。
「な、なんなんだよ。バケモノかよ」
「そうそう、わたしはばけものなの」
「え?」
男が顔をあげると額に奈々の指が当たった。
「んじゃ、ばいばーい」
そう言ってゼロ距離攻撃をしようとした。が、
「もう、止めて奈々!!」
シノは叫んだ。
「・・・」
その声に反応するかのように奈々は攻撃をやめた。そして、その場に倒れた。
「い、今のうちだ!あの子を押さえろ」
「そして私は捕まった。そして、あまりの強大な魔力を持っていることから街は家族の無理を押しきって私を封印したの」
「その言い方だと何かあったのね」
「察しがいいね。あのグズ達は強大な魔力を我が物にしようと私を無理矢理取り込もうとしたのよ」
菜々は歯軋りをした。
「がはっ」
一人の男が目を覚ました。
「どうだった」
別の男が入ってくる。
「だめだ。あれは強すぎる」
首を振りながら男は部屋を後にした。
「はぁ、これで20人目か」
男は溜め息をついてある場所を見た。そこにいたのは眠り続ける菜々だった。
「あいつらは自分を強くしたいためだけに私を取り込もうとしたの。私を封印して祭壇で実体のない私と会って倒して奪おうとした。でも、ことごとく倒したけどね」
苦笑しながら菜々は言った。
「でしょうね。あんたを倒すのはほぼ不可能でしょうね」
「そう。だから奴らは今度は別の方法を使いはじめたの。お姉ちゃんに変身してやっていた時は腹が立ったって2度と目が覚めないようにしてあげたの。その結果、何もかも信じれなくなったわ」
その日もいつもの儀式が始められようとしていた。
「また、誰か来る」
そう思いながら攻撃の準備をした。
「ヤッホー、菜々迎えに来たよー」
転送が完了し現れたそいつはまるで姉のように振る舞っていた。
「あんた、誰?」
菜々は躊躇うことなく魔術で攻撃的した。
「うゎ、危な。ちょ!姉ちゃんに向かってなにやってんの」
間一髪で避けたそいつはそう怒りながら近づいてくる。
「姉ちゃん?そんなわけないでしょ。お姉ちゃんがここにいるはずがない」
そういいながら魔術で攻撃をする菜々。
「なに言ってんの。そのお姉ちゃんがここにいるって・・」
「そんなはずかない。お姉ちゃんがあんなグズ達と一緒のことをするはずがない!!」
「・・・・・」
「あいつらは私を力としか見てない。あいつらは私を攻撃して、私を騙して・・・平気で私を傷つける。そんなこと、お姉ちゃんは絶対にしない」
そういいながら菜々はがむしゃらに魔法で攻撃をする。
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえ・・・、え?」
攻撃を続ける菜々は違和感に気付いた。お姉ちゃんと名乗る者は何故か攻撃を避けることなく全て受けながら近寄ってきた。
「な、なんで、なんで、何もしてこないの」
奈々は驚きのあまり攻撃を止めた。
「な、なんでって・・・、当たり前じゃない。だって・・・・」
そう言いながら近づいてくる。彼女は菜々を抱き締めた。
「大切な妹を傷つける姉なんて姉失格じゃない」
「ほ、本当にお姉ちゃんなの?」
泣きながら菜々はシノに尋ねる。
「当たり前でしょ」
「お、お姉ちゃん。シノお姉ちゃん!!」
奈々はボロボロになったシノを力一杯抱き締めた。
「お待たせ。そして、ごめんね、遅くなって」
胸の中で泣き続ける奈々を優しく、しかし力強く抱き締めた。
それから少しして、シノは町の事を話してくれた。奈々のおかげで被害は最小限で済んだこと。奈々は町の人を誰も殺さなかったこと。・・・そして、お父さんが死んだ事を。
「そういえば、どうやってここに来れたの?」
奈々は不思議で堪らなかった。前に男が家族にはこの事を伝えていないと言っていたのだ。
「あー、最初奈々にお見舞いがしたくて会わせて欲しいって言ったら駄目だって言われて理由を聞いても教えてくれなくてね。怪しくて調べてるとなんか儀式をしてることが分かってたから、隙をみて儀式をとりおこなってる人を眠らせてここに来たの」
ニコッと笑いながシノは教えてくれた。
「あはは・・・。流石、お姉ちゃん・・・」
予想外の答えに笑いがこぼれた。
「だから遅くなったの。ごめんね」
シノは菜々の頭を撫でた。
「いいの。お姉ちゃんが来てくれただけて嬉しい」
優しく頭を撫でてもらい顔を緩ませた。
「それでね菜々、あんたがよければ私のところに来ない?」
「それもいいけど・・・私は元の体に戻りたいの」
「それは・・・残念だけど無理かもしれないの」
シノは少し顔を曇らせた。
「どうして?」
「この儀式を仕切っている男はこのままだったら菜々を殺すつもりなの」
「そんなぁ、じゃあ私は元の体に戻れないの?」
せっかくお姉ちゃんと再会できて希望が見ていたが一気に絶望へと叩きつけられた。
「だからなの」
シノは落ち込んでいる奈々の肩をポンポンと叩いた。
「え?」
顔をあげるとシノはニコッと笑っていた。
「大切な妹を守りたいし、誰にも任せられない。それに、わたしの中にいればいつか元の体に戻せるかもしれない」
「・・・本当に?」
「てまぁ、不可能に近いけどね」
「不可能を可能にするのが魔術の基本なんでしょ」
「正解。じゃあ、私の所にきてくれる」
シノは立ち上がると奈々に手をさしのべた。
「うん、分かった」
そう言うとシノの手を掴み立ち上がった。
「そうして私はお姉ちゃんの体に住むことになって、元の体には魔術に関する記憶をを全て抜いた私のコピーが入ったの。当然、この行動は町の人達からは認められる行為じゃなかった。だから、私達家族は町から逃げたの。っていっても、天災規模の魔術を使える少女を野放しにする訳もなく刺客に何度も襲われたけど」
「貴女達が死んだ理由はもしかして・・・」
「ええ、一瞬の隙をつかれてやられたのよ」
話が終わったのかもう一人の奈々は一度大きく深呼吸をした。
「これが全ての真実よ」
時を同じくして茜音先生の話も丁度終わっていた。
「ま、待って下さい。奈々本人はお姉ちゃんの体に行ったんですよね」
「ええ」
「そして、奈々の体にはコピーが入ったんですよね」
「ええ」
「今、奈々の体は私が持っているってことはつまり・・・」
「・・・」
天使は何も言わなかった。その無言で二人は察した。
ここにいる菜々は偽者だということを。
「ごめんなさい。まさか、ここまで重い話とは思いませんでした」
笑いながら菜々はそう言った。しかし、その目は現実から必死に目を反らしてるように思えた。
「大丈夫なのか、菜々」
「はい。大丈夫です。真実を聞けたんで」
菜々はクルッと後ろを向いた。
「智さん。どんな私でも。智さんの仲間ですよね」
「それはもちろん、当たり前だよ」
「よかったです。ちょっと用事があるんで先に失礼しますね」
そう言って菜々は家に帰った。
「シロもいるから大丈夫だと思うけど。奈々ちゃん、大丈夫かな・・・」
私は彼女が見えなくなるまでその背中を見つめていた。
彼女は一枚の紙をもっていた。
「さあ、全てを聞いて貴女はどうするの?」
もう一人の菜々は咲夜に尋ねた。
「まあ、話してくれたお礼もあるし貴女に味方してあげるわ。それで、何をするればいいの?」
「友久君を止めて」
「彼が来ると思うの?」
「きっと、彼はもう一人の私を助けにくる。彼がいちゃダメなの」
「分かった。足止めはするわ」
「ありがと」
菜々は時計をみた。
「もうすぐね」
貴女は分かってないわね。咲夜は思った。
彼は必ず奇跡をおこす。きっと、物語を悲劇ではおわらせない。
「智ちゃん!今、奈々ちゃんが!!」
夕方、天使から貰った機械から珍しく焦った声が聞こえた。
「ん?今は居ないけど。ても、さっきまで一緒にいたよ。そんなに焦ってどうしたの」
「今秘密基地に、行ったら奈々ちゃんからの手紙が置いてあって。『今までお世話になりました』って書かれていたの!」
「な!?」
「それで、奈々が、どこにいるか調べたら何処かに向かっていて、その先に咲夜ちゃんともう一人の知らない子の反応が」
「まさか!!会長がいる場所を教えて!」
「今、端末に場所を送ったわ」
「ありがとう」
(ふざせるな!ふざけるな!ふざけるな!あの問いの真意はこういうことかよ!)
私は慌てて家を飛び出しその場所に向かった。




