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フェイター  作者: 知咲
14/20

天才と天災

今から語られるのは奈々の過去。とうして奈々は2人になったのか・・・

「やーい、やーい。弱虫」

 数人の男子が少女に石を投げていた。

「グスッ。よ、弱虫なんかじゃないもん」

 そう言いながらも少女は泣いていた。

「それじゃあどうして泣いてるんだよぉ」 

 男子は笑いながら石を投げてくる。

「やめて・・・。やめてよ。助けて・・・お姉ちゃん」

 ザザッ。と少女に石が当たる前に同じくらいの年の少女が立っていた。

 手を前に広げると石が不自然に空中で留まった。

「また、あんた達ね。私の妹をいじめてるのは」

「やべっ、もう来た。逃げろ」

 リーダー格の男子がそう言うとバラバラになって逃げ出した。

「逃がすかぁ!!」

 そう言うと石が飛んでいって1人1人の頭にぶつかった。

「「イタッ」」

 男子は頭にできたたんこぶをさすりながら泣きながらその場を後にした。

「ほんと、懲りないんだから。大丈夫?奈々」

 少女は奈々に手を差し出した。

「うん、ありがとう。シノお姉ちゃん」

 奈々は差し出された手を掴んで立ち上がった。

「もう夕方だから帰ろっか」

「うん♪」

 2人は手を繋いで家に帰った。


「「ただいまぁ」」

 家に帰るとお母さんは忙しそうに何かをしていた。

「あ、ちょうどいい時に帰ってきてくれた。シノ、今お母さん忙しいから夕食の準備してくれる」

「はーい。じゃあ、奈々は部屋で待っててね」

 ポンポンと頭を叩くと台所を向かった。

「えっとぉー。今日のメニューは・・・」

「あ、そうだった、そうだった。今日はこれを作るの」

 1枚の紙が飛んできた。そこには今日のメニューが書かれていた。

「了解!材料は・・・もう切れてるね。あとは炒めるだけ」

 シノは棚からフライパンを出していつのも位置に置いて、呪文を唱えはじめた。すると、手から火が現れてた。

「ほいっと」

 その火をフライパンの下に移して料理をはじめた。

 この町は魔術師が住んでいる、魔術の栄える町である。


「へぇー!今日も魔術のテスト一番だったの。凄いわね」

「へへーん。凄いでしょー」

「それじゃあ、ご褒美に頭を撫でてあげる」

 そう言うと母はシノの頭を撫でた。

「えへへ。ありがとう」

 少し顔を赤くして照れながらシノはお礼を言った。

「やっぱり、お姉ちゃんは凄いね」

 奈々は凄いと思うと共に少しだけ羨ましかった。

「それに対して私は・・・」

 奈々には全く魔術の才能が無かった。

「まあ、あんまり気にするな。魔術っていうのは突然上達する事もあるんだからな」

 そんな落ち込んでる奈々を励ますように父は頭を撫でてくれた。

「お父さんの手、ゴツゴツして痛いから嫌だ・・・」

「い、嫌なのか・・・」

 父はあまりのショックでその場に項垂れた。

「そ。その、嫌っていうのは言い過ぎで・・・。その、あの・・・」

「大丈夫よ。お父さんだって本当に嫌われてるとは思ってないから」

 そう言うと母は奈々の頭を撫でた。羽月

「あ!ずるーい。お母さんもう一回撫でて」

 シノは母の方に頭を傾けた。

「わ、私も!」

「はいはい、急がなくても撫でてたあげるから」 

 そんな風に家族団欒で楽しく日々を過ごしていた。


「ま、魔術師ぃ!?奈々さんは魔術師だったの!?」

「はい。って言いたいところですけど私、全く魔術師の素質無かったんですよ。代わりにお姉ちゃんは凄かったんですよ」

 奈々は嬉しいそうにお姉ちゃんの自慢をした。だかすぐに首をかしげた。

「でも、私が覚えているのは魔術とは関係ない生活なんですが・・」

「そうなの。じゃあ、どうして魔術の事を知ってるの?」

「実はお姉ちゃんが魔術の事を教えてくれたんです。皆には秘密にするっていう約束で」

「成る程ね。彼女も彼女なりにどうにかしようとしてたのね」

 茜音先生はウンウンと何か納得していた。

「そういや、ちゃんと質問に答えてなかったね。どうして今の話を思い出すことが出来ないって事よね」

「はい」

「答えは単純よ。その時にはまだ貴女は生まれていなかったのよ」

「え?」

 

「まさか、魔術なんてファンタジーな力が存在していたとはね」

 咲夜もこれには驚いていた。

「平行世界によって理も変わるからね。そして、私も魔術を使えるの」

 そう言うと手のひらから火の玉をいくつも出した。それをお手玉の

ように扱った。

「待ちなさい。さっき話の中では才能が無いって言っていたじゃない。本当に才能が無かったの?」

「ええ。私は才能がないと思っていた。そうして、お姉ちゃんに甘えていた。あの日まで・・・」

 そう言うともう一人の奈々は空を見上げた。そして、

「本当に無かったらどれだけ良かったことか・・・」

 ボソッと呟いた。


 そんな、楽しい暮らしはある日突然奪われた。

 奈々の父は町の外れで仕事をしていた。彼は町に入ってくる人達のチェックや怪しい輩が現れた時の対処、町に近づかないように村を隠すなどの仕事をしていた。

 その日もいつものように平和な1日になるばずだった。

「おい、聞いたか。ここ最近魔術師の町が襲われたって」

「ああ、聞いた。ただでさえ数少ない魔術師の町が減ったのは寂しいことだよ」

 と雑談をしていると魔力感知内に1人の反応があった。

「お?今日って誰か町に戻ってるとか言ってたか?」

「んー?いや、そんな記載は無いぞ」

 近くの本棚に置いてある町の人達の出入りが記録されている本を手に取って調べたが特に記載は無かった。

「そんじゃあ、遭難者か?」

「まあ、とりあえず確かめに行くか」

「りょーかい」

 2人は部屋を出て町の入口に向かった。


「あ!あの人だな」

 魔術を使って鷹の目を借りて辺りを捜索すると1人の男がいた。

「それじゃあ、俺が1人で事情聞いて麓の町まで案内するよ」

「1人で大丈夫なのか?」

 なぜが悪い予感がした奈々の父は尋ねた。

「大丈夫、大丈夫。いつもやってる事だし」

 そう言って男の方にかけよって行った。

「なんなんだ?この胸騒ぎは・・・」

 簡易的な魔力感知装置を見たが例の男とそれに駆け寄っていく仲間だけだった。

「やっぱり気のせいか」

 と持っていた装置を懐にしまおうとした時、

「!!」

 仲間の反応が消えていた。

「ど、どういうことだ!」

 慌てて仲間の方を見ると彼は地面に倒れて死んでいた。辺りには10人近くの姿がある。そいつらは町に駆け寄ってきた。

「さっきまで反応は1人だけだったはず」

 装置を見てもやっぱり1人だった。

「つまり、残りは幻影。あるいは装置に反応しないようになっているのか」

 そんな思考を巡らしている時にさっきの会話を思い出した。慌てて、他の仲間と連絡をとった。

「どうしたんだ。緊急回線で連絡なんて」

「今すぐ戦える奴を町の入口に、女子供は避難させろ!」

「何いってんだ。冗談が過ぎ・・・」

「冗談じゃない!襲撃だぁ!」

 そう叫ぶ彼の背後に例の男達がいた。


 奈々はいつものように近くの公園で遊んでいた。すると、鐘の音が町中で響いた。それと共に大人達は町の入口に子供達は町の奥に逃げていて、皆なぜか焦っていた。

「え?どうしたの皆」

 奈々は何が起きているのか理解できず困惑していると誰かが手を握った。

「おい、何ぼさっとしてるんだよ。逃げるぞ」 

 それはいつもいじめてくる男の子だった。

「え?逃げるってどうして・・・」

「ああ、もう!今町が襲われてるんだよ。だから逃げるぞ!」

 そう言って奈々を立ち上がらせると引っ張って駆け出した。

「え?襲われてるって誰からなの」

「知らない。とにかく逃げるぞ」

 そんなやり取りをしていると突然奈々がさっきまでいた公園に何が落ちてきてきた。

「うわぁ」「きゃあ」

 落ちてきた衝撃でできた突風に2人は吹き飛ばされた。

「イテテ・・・。もう少し調整しねぇとなぁ」

そこには1人男が立っていた。男は周りを見渡して2人を見つけた。

「あ?ガキかよ。ガキは必要ねぇんだけ」

 ピーーーーー。と男の胸元から音が鳴った。

「あ?故障か」

 胸元にある装置を取り出した。

「な!?」

 大きく目を見開き驚き、そして笑った。

「まさか、こんな魔力を持っている奴がいるなんてな」

 そう言って男が見ていたのは奈々だった。

「え?ええ!?」

「逃げろ奈々!」

 男子は奈々を庇うように男の前に立ちふさがった。

「で、でも・・・」

「いいから、さっさ逃げろ弱虫が!」

「う、うぅぅ」

 奈々は泣くのを泣くのを我慢してその場を後にした。

「お、かっこいいねぇ。もしかしてあの子に惚れてンのか」

「うるせぇ、一体何しにここに来た」

「そりゃあ、もちろん魔術の素材となる魔術師達をさらいに来たんだよ」

「なん・・・だと!」

「この前に沢山素材はてに入れたんだけどまだ足りなかったんだ」

「それで奈々を狙っているのか」

「ああ、あいつは規格外の魔力を持っている。捕まえて素材にすればきっと魔術の発展。それどころか魔法に手をかけることができる」

「そうはさせるかよ!」

 周りから土を集めて塊を作った。

「これでも食らえー」

 そう言うと塊を男に投げ飛ばした。

「なんだよ。石ころ遊びしてる暇はないんだよ」

 投げ飛ばされた塊を指1本で木っ端微塵にした。

「な?」

「本当の攻撃ってのはこうするんだぜ」

 男はさっきとは比べものにならない大きな岩を作り出して投げつけた。

「ぐっ」

 男子は目をつぶって最後の瞬間を待った。しかし、その時は来なかった。

「ごめんね。お待たせ」

 恐る恐る目を開けるとそこにはシノがいた。

「お、お前なんで・・・」

「奈々が私を呼んだのよ」

 シノは後ろを指差した。後ろを振り向くとそこには奈々がいた。

「お前、どうして・・・」

「貴方が私を助けてくれたから。でも、私じゃ何も出来ないからお姉ちゃんにお願いしたの」

「そういうこと、ここは私がなんとかするから逃げなさい」

「でも」

「いいから!早く!」

「わ、分かった。ありがとう」

 そう言って彼は町の奥に向かった。

「いやー、美しいねぇ。泣けてくるよ。おかげで狙いのガキは帰って来てくれて嬉しいよ」

 男は奈々のほうを見て笑った。

「やっぱり奈々を狙ってるのね。絶対に許さない」

 シノは手から火の球を出して男に投げつけた。

「んじゃあ、守ってみなよ。お姉さん!!」


 2人の戦いはお互い一歩も引かない激しい戦いだった。そんな中、シノが動いた。

「これなら、どうだぁぁぁ!!」

 シノが投げ飛ばした水の球は一直線に男に向かっていく。

「ふっ、同じことを何度やっても・・・」

 男は水の魔術攻撃を防ぐ魔法陣を展開した。が!

「な!?」

 魔法陣に攻撃が当たった瞬間、水の球は火の玉となり直撃した。

「ぐはぁ!!」

 羽織っていたマントが燃え上がり、慌てて投げ捨てた。

「やったぁー!当たった」

 奈々は後ろで喜んだ。

「火の球を水の球で隠しての攻撃よ!驚いたでしょ」

「ああ、まさかガキに一発食らうとはな。今日は驚きの連続だよ。

だから・・・」

 男は立ち上がって右手でシノをロックオンした。手の甲にはシノも見たことのない魔法陣が描かれていた。

「お返しだ」

 そう言うと男の指からエネルギー弾が飛んできた。

「そんなの。私の魔術でふ」 

 パリンっ。とシノの前に展開していた魔法陣が一瞬で砕けた。そして、男の攻撃はシノを貫いた。

「え??」

 何がおきたか分からず唖然とした顔のままシノは倒れた。

「お、お姉ちゃん!!」

 奈々はシノに駆け寄った。

「大丈夫お姉ちゃん!しっかしりて!!」

「まだ・・・大丈夫。それより、何をしたの!」

 パニックになりかけていた奈々をなだめると男の方を見た。

「驚いただろ。これはなぁ「魔術」を無効にする「魔法」なんだよ。だから、防ぐことができなかったんだぜ」

 男は右手を構えてこちらにやってくる。

「さあ、諦めてここで死ね」

「やめて!!」

 奈々はシノの前に立った。

「私が目的なんですよね。なら、言うことを聞くからお姉ちゃんを殺さないで」

「奈々、何いってるの!」

「おお、美しい姉妹愛だな。でもな、それは無理な話しだ」

「きゃぁ!!」

 男は立ちふさがった奈々を突き飛ばした。

「こいつは俺を怒らせたんだ。苦しんで死んでもらわないと困るんだよ」 

 そう言いながら男はシノに魔法を撃ち込む。

「ぐはぁっ!!」

 打ち込まれた所から血が滲み出し、苦痛で顔を歪ませた。

「お姉ちゃん!!」

「はははは!その顔入口を守っていた男もしていたぜ」

「入口・・・を守る?もしかして、おと・・・さん?」

「あ?知らねぇよ。でも、たしか死ぬ間際にシノとか奈々とか名前を言ってたぜ」

「え?嘘・・・だよね」

 今、男の口から父は死んだと聞こえた。

「そんなはずない。そんなはずない」

 認めたくなかった。奈々はパニックを起こし涙でまえが見えなくなっていた。

「この!よく・・・も、お・・・とう・・・さんを!」

 シノ怒りに身を任せ、動く右手で攻撃をした。が、避けられた。

「これでお父さんと一緒の所に連れてってやるよ。安心しな。少し遅れるが妹も送ってやるから」

「だめ、やめて・・・。おねがい・・・」 

 奈々は必死に手を伸ばすがその手は届かない。

「死ね」

「やめー!!」 

 シノが殺されそうになり、奈々が叫んだ。その瞬間、

「パリーン」

 奈々の中で何かが砕ける音がした。

 

「おい!どうだいい素材は見つかったか!?」

 襲撃してきた男達は通信を取り合っていた。

「それどころじゃねぇ!!こっちで今応戦し、ぐわぁぁぁ!」

 ブツンと通信が途切れた。

「クソッ!何やってんだよ」

 男達は通信が切れた場所に向かった。目の前には予想外の光景は広がっていた。

 そこには二人の姉妹と殺された仲間達がいた。

「クソ!ガキ1人に何やられてるんだよ」

 そう悪態をつきながら、仲間達と攻撃を打ち込む。

「あ!きたきた。うごくひとはっけーん」

 しかし、全く効いていなかった。

「ど、どうことだ!魔法が効か」

 言い終わる前に1人の男が撃ち抜かれその場に倒れた。

「いえーい。わんひっと」

「な、なんなんだよ。あのガキ!俺達の魔法を使ってやがる」

 ジリジリと男達は後ろに下がる。

「にげちゃだめだよー。みーんなうごかなくなるまであそんでよ。ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

 彼女は不敵な笑みを浮かべて一歩も、また一歩と近づく。

「クソ!この化物が!!」

 そうして、少女1人蹂躙が始まった。


 シノはトドメを刺されかけ目を強く瞑っていた。・・・しかし、いつまでたってもトドメをさされない。

 ドスッと何が倒れる音がした。恐る恐る目を開けると男が倒れていた。

「え?何?」

 全く何が起きたか分からない。

 よく周りを見るとさっきまでシノを殺そうとしていた男は倒れこみもがいていた。

「あ、まだうごいてる。ほらほらほらほらほら」

 彼女は男に近づくと攻撃を繰り返す。死にかけていた男はそのまま動かなくなった。

「なんなの。この状態」

「よかったぁ。おねぇちゃんがぶじで」

 さっきまで男にトドメを刺していた奈々は笑顔でこっちに向かってきた。

「おねぇちゃんはじっとしてて。わたしがやっちゃうから」

 明らかにそこに居たのはシノの知らない奈々だった。

「どうしたの?奈々。しっかりしてよ」

「しっかりって、なにいってるのおねぇちゃん。それより、わたしやっとまじゅつをつかえるようになったの。ほめてほめて」

 そう言いながら奈々は頭をこっちに向けた。

「いや、そんなことしてる場合じゃなくて!奈々しっか」

「クソ!ガキ1人に何やられてるんだよ」

シノが説得しようとしたがそれを遮るように男の仲間がやって来た。

「あ!きたきた。うごくひとはっけーん」

 奈々は撫でてもらおうとしていた頭をもとの位置に戻し男達をみてわらった。そして、男が使っていた魔法を使って男の一人を撃ち抜いた。

「いえーい。わんひっと」

 奈々はピョンピョンと跳ねて喜んだ。

「やめて、奈々。駄目よ。それ以上は」

 シノは必死になって奈々を止めようとした。しかし、魔力が切れるまで奈々は止まることがなかった。


「そうして、私は男達全員を殺したの。不幸中の幸いで町の人達を殺すことはなかったけどね」

「なるほど、それが貴女が奈々を狙う理由ってことかしら」

「そんな訳ないでしょ。ここからが地獄なんだから!」

 彼女の目には悲しみは無く、ただひたすらに怒りに満ちていた。

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